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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
103/624

103 地球へ…

{ はい、おしまい。 }

 その声はその場にいるすべての者の頭に直接響き渡った。

 小さな球に縮こまったクロノスは、まるで巨大な口でパクリと食べられてしまったかの様に空間にのみ込まれてしまった。

 ポセイドン、ハーデス、デメテルが何の抵抗もできず塵となり消滅した。


 メーティスが叫んだ。

「全員退避!」


 しかし、アテナとミネルヴァは歪んだ空間に囲まれてしまい身動きがとれなくなってしまっていた。

 メーティスは全速力で二人に近づくと、そのわずか前方に人影が現れた。

 プロメテウスだ。


 プロメテウスは二人を歪曲わいきょくした空間から引きずり出すと、そのまま飲み込まれ消え去ってしまった。

 アテナとミネルヴァ、そしてメーティスはニーケとヘーラーの協力によってゼウスの元に転送された。


 三人は絶対防御の要塞システム『ゼウス』の執務室に投げ込まれた。

 アテナが起き上がるとそこには心配そうな顔をしたニーケの姿があった。


 アテナは青ざめた顔で尋ねた。

「一体何があったの?」


 ニーケは困惑した顔で答えた。

「わかりません。何が起こったのか……。」


 その時ニーケの頭の中に直接語り掛ける声があった。

「あ、ちょっとお待ちください。」


 声の主はゼウスだった。

 ゼウスは絶対的な防御魔法を操る大英雄であり、この組織のおさでもあったが敵の攻撃が激しくなるに連れて一点防御の限界を感じた。


 そこでメーティスの力を借りて自らの防御能力をアテナ等数人の幹部に分け与え自身は絶対防御の要塞と化したのであった。

 そのせいもあって現在ゼウスの言葉を聞くことができるのはニーケだけであった。


 ゼウスの話しでは現在外の世界は混沌こんとんでありこの中だけが存在可能な場となっているとのことだった。

 ゼウスは誰かが究極スキル『転生』を用いて逃避先を探るしかないと伝えた。


 アテナは尋ねた。

「転生……そんなことができるものなのか?」


 ニーケはゼウスの言葉を伝えた。

「はい、伝承にもある様に我々は元々この世界を創造した神の一柱だったとのこと。そして何らかの理由でこの世界に転生して来た。ゼウスはそれが真実だと言っています。」


 ミネルヴァも困惑した表情で尋ねた。

「転生とは如何いかなるものか。」


 ニーケはゼウスからの情報をコンパイル(翻訳)した。

「どうやら創造主は自らの『元』になるものを発見し、それを受け入れる基礎地を人工的に合成することに成功した様です。その疑似ぎじ基礎地は余剰よじょう次元に展開された不可識ふかしき空間を経て様々な場所に配置できるとのことです。」


 アテナは尋ねた。

「不可識空間……?」


 ニーケは返答した。

「我々は直感的には4次元時空までしか認識できませんが実際には余剰次元……つまりそれ以上の次元が存在すると仮定します。不可識空間とはその直接的に認識不可能な空間のことを言っており、その人間の『元』なるものもそういった空間の存在とのことらしいです……。」


 アテナはニーケの方を見ながらさらに質問した。

「となると基礎地ってゆうのはそことの窓口みたいなもの?」


 ニーケはゆっくりとアテナに説明した。

「私のコンパイルが何処どこまで正確かはわかりませんが、その窓口自体は二次元の情報伝達素子であり、それが本来人体に備わっている基礎地に発生し付着するとのことです。」


 メーティスも質問した。

「実際に見えないものをどうやって認識したんだろう。」


 ニーケはそれについて答えた。

「実際にあるかどうか肉眼で見たり認識することはできません。ただ存在すると仮定した方が計算や理論の構築がしやすいのです。現に実験には成功しています。その……転生の……。」


「成程ね……。」

 メーティスはそう言ってうなずいてからニーケに尋ねた。

「つまり誰かがそれを使ってあちこちに転生する。で、撤退先に良さげな所を見つけるってこと?」


 ニーケはメーティスの目を見つめた。

「はい。但し時間的猶予がないので生物に転生している暇はありません。」

「どうすれば?」

「疑似基礎地が作成されやすく生物でもない何か……探索スキルを使用して最適な場所を探して行きます。」


 ミネルヴァが身を乗り出して申し出た。

「ならば私がその役を引き受けよう。」


 アテナはその申し出をさえぎり自分が行くと言い出した。

「いえ、それなら私が代わりに引き受けます。何があるか分からないし。」


 ミネルヴァはアテナを優しくさとした。

「三人とも眷属けんぞくのみんなや友だちをたくさん失い過ぎた。今はゆっくり休んで欲しい。それにこうゆうことは年長者の仕事だ。任せてもらえないか。」


 ニーケは一筋の涙を流しながらつぶやいた。

「師匠……。」


 メーティスも悲しげな表情でミネルヴァを引き留めようとした。

「本当にいいんですか? ここにいてみんなで対策を考えても……。」


 ミネルヴァはメーティスの話しをさえぎった。

「これは我らがおさゼウスの考えでもある。それに今の現状を打開する策が無いことはあなたが一番わかっているでしょう。メーティス。」


 ニーケは心の中で叫んだ。

『ああ師匠。私は心配でなりません。師匠、師匠!』



 ニーケはハッと目が覚めた。

 目の前には少女の姿をしたミネルヴァが大きな瞳をパチクリさせてこちらを見ていた。

「あ、ニーケ。大丈夫?」

「はい、私は……大丈夫です。」


 ミネルヴァは大きな声でアテナ達を呼びに行った。

「ニーケが起きたよ!」


 ニーケはミネルヴァのその姿を見ながら一人思った。

『師匠……可愛くなっちゃって。クス。』


 ニーケは多くの事を思い出した様だ。

 但し、緑と赤についてはまだ記憶がつながらなかった。


 これは仕組まれた事なのか。

 それとも暗示もしくは運命的なもの……。


 しばらくするとアテナとメーティスが現れた。

 アテナは安堵の溜息をいた。

「ああ、よかった。なかなか起きなかったから心配しちゃた……。」


 メーティスも微笑みながらニーケに尋ねた。

「ニーケ。大丈夫? 疲れてない?」


 アテナはラフな部屋着で肩からイヤホンをぶら下げていた。

 メーティスは料理中だったのだろう。エプロン姿が似合っていた。


 ニーケは兵士姿の二人とのギャップに思わず吹き出してしまった。

「あなたたち何て格好してるの! アッハハハハ!」


 三人はキョトンとしながら顔を見合わせた。

「ま、何か元気そうでよかったね……。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【反乱軍オリュンポス】

<殲滅魔法部隊>

 アテナ … 総司令。アテナ・グラウクスの前世

 プロメテウス … アテナの守護眷属

 ヘラクレス … アテナの守護眷属

<隠密魔剣士隊>

 メーティス … メーティス・パルテの前世

 ポセイドン … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ハーデス … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 デメテル … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ヘスティア … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ヘーラー … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 [ヘーラーの下部たち]アルゴス、スフィンクス、ヒュドラ、

            ピュトーン、ラドン、カルキノス、大サソリ

<司令部>

 ニーケ … 司令部参謀。ニーケ・ヴィクトリア

 ミネルヴァ … ニーケの魔術の師匠。

        大地ミナミ、ミネルヴァ・エトルリアの前世

 マルス … ニーケの剣術の師匠

<ニュクス部隊>

 ニュクス … 部隊長

 クロートー … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。長姉

 ケラシス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。末妹

 エリス … ニュクス先駆隊

 ネメシス … ニュクス先駆隊


【巨人族ギガース(複数形はギガンテス)】

 クロノス … 巨人族の総統

 エンケラドス … アテナに倒される

 パラース … アテナに倒される

 アグリオス … 運命の三姉妹に倒される

 トオーン … 運命の三姉妹に倒される

 ポリュボーテース … ポセイドンに倒される

 エウリュトス … プロメテウスとヘラクレスに倒される

 ポルピュリオーン … プロメテウスとヘラクレスに倒される

 エウリュメドーン … ハーディス、デメテル、ポセイドンに倒される

 エピアルテース … ハーディス、デメテル、ポセイドンに倒される

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