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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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102 ただ一度の命駆けた

 デメテルのスキルでも強制移動することができなかった巨人族ギガースは十三体。

 ポリュボーテース、パラース、エンケラドス、アグリオス、トオーン、エウリュトス、ポルピュリオーン、エウリュメドーン、エピアルテース、他。

 いずれも名だたる巨人族ギガンテスの大幹部である。


 ポセイドンはポリュボーテースを打ち取るとニーケに状況を尋ねた。

「お嬢、戦況はどうだい。」

 ニーケは要塞『ゼウス』の執務室で全体の指揮をっていた。


 ニーケはポセイドンの質問に答えた。

「はい。アテナはパラースを倒し現在エンケラドスと交戦中。三女神はアグリオス、トオーンの二体と交戦中、間もなく討伐を完了するとの報告が入っています。」


 ポセイドンはニヤリとしながら返事をした。

「おお、なかなかどうして。他には?」


 ニーケは更に報告を続けた。

「アテナの眷属けんぞくプロメテウスとヘラクレスはエウリュトスを討伐し、現在ポルピュリオーンの元へ向かっています。ハーディスはエウリュメドーンとエピアルテースの連携攻撃に苦戦中。デメテルが加勢して何とか持ち直した様ですが……。」


 ポセイドンはニーケと連絡をとりながら凄まじい速さで移動した。

「うむ、わかった。じゃあ俺もハーディスの元へ向かおう。ところでお前さんの師匠たちは何してんだ。」


 ニーケは微笑みながらモニターを見た。

「ああ、あのお二方ふたかたなら心配いりません。」

「ま、だろうな。じゃあ俺は急ぐぜ!」


『お二方ふたかた』とはマルスとミネルヴァのことだ。

 ニーケにとってマルスは剣術の師匠、ミネルヴァは魔術の師匠だった。

 二人は既に四体の巨人族ギガースを打ち倒し、新たに出現した総統クロノス率いる大軍団と交戦中であった。


 この世界は四階層に分かれており、上に行くほど敵も強大になっていった。

 そして、アテナたちは正にこの第四階層で戦闘を繰り広げていた。


 第一階層から第三階層での勝敗も、この第四階層の戦闘にわずかながら影響を与えていた。

 従って、第四階層に上る力のない者は下位の階層に残り、少しでも上位の階層が有利になる様奮闘していた。


 アテナが率いる殲滅せんめつ魔法部隊やメーティスが棟梁とうりょうを務める隠密魔剣士隊のほとんども、この第四階層まで上がることができず下の階層で戦っていた。

 彼女たちが孤軍奮闘しているのにはそう言った理由わけがあったのだ。


 それ故に、多数がこの階層に上がって来たニュクスの部隊が壊滅したのは大きな痛手であった。

 第四階層に上がって来た者の9割は既に敵の手によって倒されていた。


 しかし、皆が奮闘してくれたお陰で敵方の将たる総統クロノスを出陣させるまでに追い詰めることができたのだ。


 マルスとミネルヴァの戦闘にアテナとメーティスが合流した。

 広大な空間を一瞬で埋め尽くしてくる多数の剛敵から一挙に打ち出された超常攻撃群がアテナを容赦ようしゃなく襲って来た。


 アテナはその全攻撃をゼウスより授かりし絶対防御の盾防具アイギスでいとも容易たやすく弾き返すと、サーベルを真上にかかげて叫んだ。

雷霆万鈞らいていばんきん!」

 すると、高密度の雷光が走り指数関数的に増殖していたすべての敵を瞬時に消し去った。


 そこへプロメテウス、ヘラクレス、そしてニュクスの三姉妹が駆け付けた。

 マルスは周囲の敵を吹き飛ばしながら叫んだ。

「アテナ、メーティス、ミーネ! 大将はお前らに任せる!」


「わかりました。ここは頼みましたよ!」

 三人は即座に総統クロノスの元へと向かった。


 クロノス周辺の空間はあまりにも不気味にじ曲がり禍々(まがまが)しくもすさまじい勢いで変動し続けていた。

 三人は直感的に悟った。

 少しでもこの悪しき空間に触れれば即座に取り込まれるであろうことを。


 空間の捻じれは徐々に広がりつつあった。

 ニーケは遠隔魔法『空間修正』で対抗しながら敵の弱点を探った。

「三人は注意しながら攻撃を試みてください。クロノスのデータがまだ足りません。」


 メーティスは眷属けんぞくのヘスティアとヘーラーを呼び出した。

 ヘスティアはメーティスに指示を仰いだ。

「何をすればよろしいでしょう。」


 メーティスはヘスティアにお願いした。

「後方でニーケのお手伝いをお願いします。空間の正常化を。」

「わかりました。」


 ヘーラーは文句たらたらでメーティスを非難した。

「ちょっとあんたね、こんな最終局面で私を出さないでよ!」


 メーティスはじれた空間をかわしながら笑顔で謝罪した。

「申し訳ありません。あなただけが頼りなんです。ヘーラー。」


 ヘーラーは満更まんざらでもない顔をした。

「ふん。で、私は何をすればいいの?」


 メーティスは強烈な電磁砲弾をクロノスに向かって放つとヘーラーに指示を出した。

「アルゴスたちを使役しえきして攻撃を加えていただけませんか。あなた自身は後方で回復支援をお願いします。」


 ヘーラーは早速下部さっそくしもべたちを使役した。

「アルゴス、スフィンクス、ヒュドラ、ピュトーン、ラドン、カルキノス、大サソリ! 敵将クロノスを攻撃しろ!」


 彼らは途轍とてつもない攻撃力を秘めたモンスターであり、ヘーラーの忠実な下部しもべだ。

「まったく人使いが荒い!」

 そう言いながらヘーラーは後方に下がると腕を組みプイと横を向いた。


 アテナとミネルヴァは異常空間を器用にすり抜けてクロノスと直接やり合っていた。

 ガン! ガギーン! ガガガン! キン! ガッガガッガガッ!

 凄まじい連打の応酬が『場』を歪曲わいきょくはじけさせていた。


 ヘーラーの下部しもべたちも周囲から援護射撃をしながら徐々に間合いを詰めていた。

 ニーケとヘスティアの空間正常化が進行しクロノスの邪空間も大分だいぶおさえられて来た。

 そこに敵を片付けたポセイドン、ハーデス、デメテルも合流し周囲の敵を蹴散らし始めた。


 アテナとミネルヴァの激攻連打でしものクロノスもひるみはじめた。

 そして遂に巨人族ギガンテスとの戦いが終焉しゅうえんに向かったかと思われたその時、空間が大きく揺らいだ。


 無敵を誇るヘーラーの下部しもべたちが一瞬にして跡形もなく消え去ったかと思うと、総統クロノスがバキバキと音を立てて球状に変形していった。

 皆、状況を把握しようと努力したが、一体何が起こっているのか皆目かいもく見当がつかなかった。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【反乱軍オリュンポス】

<殲滅魔法部隊>

 アテナ … 総司令。アテナ・グラウクスの前世

 プロメテウス … アテナの守護眷属

 ヘラクレス … アテナの守護眷属

<隠密魔剣士隊>

 メーティス … メーティス・パルテの前世

 ポセイドン … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ハーデス … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 デメテル … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ヘスティア … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ヘーラー … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 [ヘーラーの下部たち]アルゴス、スフィンクス、ヒュドラ、

            ピュトーン、ラドン、カルキノス、大サソリ

<司令部>

 ニーケ … 司令部参謀。ニーケ・ヴィクトリア

 ミネルヴァ … ニーケの魔術の師匠。

        大地ミナミ、ミネルヴァ・エトルリアの前世

 マルス … ニーケの剣術の師匠

<ニュクス部隊>

 ニュクス … 部隊長

 クロートー … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。長姉

 ケラシス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。末妹

 エリス … ニュクス先駆隊

 ネメシス … ニュクス先駆隊


【巨人族ギガース(複数形はギガンテス)】

 クロノス … 巨人族の総統

 エンケラドス … アテナに倒される

 パラース … アテナに倒される

 アグリオス … 運命の三姉妹に倒される

 トオーン … 運命の三姉妹に倒される

 ポリュボーテース … ポセイドンに倒される

 エウリュトス … プロメテウスとヘラクレスに倒される

 ポルピュリオーン … プロメテウスとヘラクレスに倒される

 エウリュメドーン … ハーディス、デメテル、ポセイドンに倒される

 エピアルテース … ハーディス、デメテル、ポセイドンに倒される

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