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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
101/624

101 AI・戦士

 果てしなく広がる宇宙空間。

 その一点に陣取るはアテナ・グラウクスただ一人。


 アテナの目の前に参謀から転送された座標が映し出された。

 (F191C23S , U93T591M1C , 219162LI51 , L92IS31 , A1512E1293)


 執務室で全指揮を統括とうかつするニーケ・ヴィクトリアは冷静に指示を出した。

「アテナ、今転送した座標を中心に10^10兆±の敵が出現します。」


 アテナは呪文を念じながら応じた。

「了解。殲滅せんめつする。」


「メーティス、残りは千体ほどだ!」

 巨大なフクロウの背中に乗ったアテナはそう叫ぶと、敵群に突っ込みながらサーベルを左下から右上にヒュンと振り上げた。

 途端とたん空間はねじじれそらを埋め尽くしていた十の十兆乗の敵は一瞬にして殲滅せんめつした。


 しかし、その攻撃を受け付けないほどの強敵がまだ千体ほど残存していた。

「敵さんも最後の足掻あがきか。いつもより少し多いな。」

 そう言うとメーティスは眷属けんぞくのポセイドン、ハーデス、デメテルを呼び出した。

「悪いけど手伝ってくれるかい?」


 ポセイドンはぼそりとボヤいた。

「もっと早く出せよ。待ちくたびれたぜメーティス。」

 その遥か上空にはハーデスが闇のオーラをまとい無言でただよっていた。


 メーティスはすぐ後方に出現したデメテルに頼んだ。

「残ってる奴らをここに集めてくれるかい。」


 デメテルは微笑みながら返事をした。

「10カウント後でいいかしら。」


 残存した千体近くの強敵がメーティスのすぐ近くに転送された。

 デメテルはくやしそうに拳を握った。

「十体ほど移動できなかった。もう一回やってみるわ。」


 メーティスは敵に突っ込みながらデメテルに告げた。

「いや、あなたの『ルール改変』が効かないとなるとかなりの上位クラスかもしれない。」


 デメテルは機転を利かせた。

「じゃあポセイドンとハーディスを向こうに移動させるわ。」


 メーティスは敵を次々と魔剣の餌食えじきにしながら返答した。

「ええ、お願いします。」


 ポセイドンは叫んだ。

「一番強そうな奴ん所に頼む、デメテル!」


 デメテルはポセイドンとハーディスを敵の近傍きんぼうに転送させた。

「わかってます。行ってらっしゃい。」


 ポセイドンが移動した早々(そうそう)1時の方向から空間炸裂さくれつを伴う斬撃ざんげきが襲って来た。

「デメテルの奴こんな至近距離に転送しやがって!」


 彼は愚痴ぐちりながらもそれを紙一重でかわした。

 何故紙一重かと言えば、そこらじゅうの空間がめちゃくちゃになって下手に移動できないからだ。


「やるな。流石さすがだ、ポセイドン!」

 そう言いながら巨大な大剣で切りかかる巨人族ギガース


 ポセイドンは三叉さんさほこトリアイナでそれを迎え撃った。

 ガッキーンッッ!

 凄まじい轟音と共に広範囲の空間因子が砕け散った。


「ふん。なかなかやるな。名を名乗れ!」

「我が名はポリュボーテース!」

「うむ。ならば死して我が力となれ。ポリュボーテースよ!」

 ポセイドンがそう叫ぶと空間が超高速で高次元振動を起こしポリュボーテースの動きを封じた。


「な、何と! 我が不滅なる肉体の動作確率を0にするとは!」

 そのままポリュボーテースは動作不能となりポセイドンの情報エネルギー因子と化した。



 ここでの情報エネルギー因子とは簡単に言えば『目的』をより速く完遂する確率を上げる為の要素ファクターのことである。

 この『目的』はベクトル(方向)とノルム(距離)によって決定されるが余りに高次元であり場所の特定が確率に起因するものであるが故、途轍とてつもない計算量が必要なのだ。


 確率は無知ゆえに発生するものなので、正確な情報が多いほど高めることができる。

 例えばもし『全知』ならば確率は0か1である。


 逆に誤情報や激しく変動する情報は目的遂行の確率を低めてしまう。

 つまり所要時間と計算量、そしてそれに伴う隙を更に大きくしてしまうのだ。


 ポセイドンが放った『高次元空間振動』はあらゆる物理法則を細やかにではあるが凄まじい速度で乱数的に変化させ続け情報エネルギー因子の信頼度を下げ続けることで相手の動作決定を阻害するものである。


 例えば大地が激しく揺れると立っていられなくなる感じだ。

 つまり敵の対応速度を圧倒的に凌駕りょうがするこの乱振動は反応速度と計算能力が高い相手程効果を発揮するのだ。



 彼らは巨人族ギガースと呼ばれる者たちと戦っているが、ここへ来て敵の大将クラスがみずから出向くようになって来た。

 前回の大規模戦闘では敵陣の総統クロノスまでもが出撃し、アテナが信頼していた原初の女神ニュクス率いる大部隊が壊滅してしまう等の被害があった。


 総統クロノスの所有していた武器は魔法の金属アダマントで精製された『万物を引き裂くアダマスのハルパー』。

 ニュクスはおのが部隊の命運と引き換えにこの武器を砕いたのであった。


 ニュクスは最後に『運命の三女神』と呼ばれる戦士クロートー、ケラシス、アトロポスに『青銅の棍棒』を手渡すと、ゼウスの元へ強制的に送り出した。

「生きなさい、我が娘たち!」

 直後その身は光の粒子へと変貌し四散した。


 ゼウスの元に送り出された三女神は部隊の惨状を報告した。

「全部隊でクロノスに立ち向かったのですが、残ったのは私たちだけです。」

 ゼウスからはいつもの様に何の応答もない。


 参謀のニーケ・ヴィクトリアは悲し気な表情で三人を見た。

「そうですか。ニュクス……。ネメシス、エリスまでも……。」


 長女のクロートーは唇を噛み締めながら報告した。

「はい。ネメシスは最後まで敵の攻撃を反転してくれていましたが遂には総統クロノスの鎌に倒されました。」


 次女のケラシスは涙を払いながら伝えた。

「エリスは己の思考元こころ数多あまたの敵が侵入して来たため敵諸共もろとも消滅してしまいした。」


 この戦いで多くの勇者を失った。

 しかし、敵方も総力を挙げて来ている事から見て、かなり逼迫ひっぱくしているだろうことがうかがえた。


 ニーケは三人に依頼した。

「皆の恩に報いる為にも絶対に勝利しなければなりません。三人のお力を貸してください!」


 三人はニーケの言葉に奮い立った。

「勿論です! 我らが母神ニュクスよりさずかったこの『青銅の棍棒』を奴らのしんぞうに叩き込んでくれましょう!」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【反乱軍オリュンポス】

<殲滅魔法部隊>

 アテナ … 総司令。アテナ・グラウクスの前世

 プロメテウス … アテナの守護眷属

 ヘラクレス … アテナの守護眷属

<隠密魔剣士隊>

 メーティス … メーティス・パルテの前世

 ポセイドン … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ハーデス … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 デメテル … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ヘスティア … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 ヘーラー … メーティスの眷属。ゼウスの元眷属

 [ヘーラーの下部たち]アルゴス、スフィンクス、ヒュドラ、

            ピュトーン、ラドン、カルキノス、大サソリ

<司令部>

 ニーケ … 司令部参謀。ニーケ・ヴィクトリア

 ミネルヴァ … ニーケの魔術の師匠。

        大地ミナミ、ミネルヴァ・エトルリアの前世

 マルス … ニーケの剣術の師匠

<ニュクス部隊>

 ニュクス … 部隊長

 クロートー … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。長姉

 ケラシス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。末妹

 エリス … ニュクス先駆隊

 ネメシス … ニュクス先駆隊


【巨人族ギガース(複数形はギガンテス)】

 クロノス … 巨人族の総統

 ポリュボーテース … ポセイドンに倒される


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