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48.ムービーオールナイト

 今日のお題は、ムービーナイト。

 前回の一件から序列決めのためのゲームが七つの大罪……七罪の間で、日夜展開されている。


「まさか本当にシアタールーム作るとか」

「おかげで悪魔が人間界の映画にハマってしまっている。私は映画よりもそろそろ外出がしたい」

「お前が原因だろう。元凶とは言わないが、オールナイトで付き合わされるのは勘弁してほしい」

「私もです」


 どういうわけか、序列決め関係なくても上映される名作の数々。シアタールームは快適な上に、名作だから古くても見ていて楽しいのだが、先日は酷かった。


「今日は何だっけ? 一昨日のはあれだろ。前にダンタリオンが言ってたやつ」

「天使にラブソングを」

「あのシスターは半端ねぇよな。シスターじゃなかったけど好感度高いわ」


 古びた小さな教会。その聖歌隊を立て直す匿われたはずのシスターが主役のお話。革命的讃美歌がミュージカルのように、歓喜を呼びさますシーンは圧巻だ。が。


「……讃美歌」

「そんなもの悪魔が聞いて、耳が痛くなったりしないんだろうか」

「力が強いからだろ? ほらアスタロトさんもモンサン・ミシェル行ったって」


 ちなみに冗談半分でその映画を推したのも忍である。出演は本物のシスターではないし、あくまで彼らは娯楽としてムービーを見ていたので、何の影響もなかったようだが。


「実はちょっとドキドキしながら見てた」

「うん、苦しみ始めたらどうしようとか思ったよな」


 司はもうどうでもいいというような顔で、暗くなった部屋にほの明るい白いスクリーンの方を向いている。しかし、若干目は遠い。


「私、寝ていいかな」

「寝られんの? こいつらめっちゃ騒ぐじゃん」

「お子様だからな。俺は騒がないぞ」


 ルシファーがなぜか隣で足と腕を組んで上映を待っている。……あなたが付き合っていること自体が不思議でしょうがありません。


「で、今日は何を観るんだ」

「今日はホラームービーナイトだ! 全世界が震撼したっていうバイオハザー……」


  「嫌だぁぁぁぁぁ」


 言い終わられる前に忍、小声で隣にいた司の袖にしがみつく。「!」と一瞬、司は凄く驚いた顔をしたが……


「あぁ、忍はこういうのが嫌いだったな」

「絶対嫌。もう寝る。部屋帰る」

「そんなに嫌なの?」


 秋葉にまで驚いた顔をされる始末。そこまでホラーに強い人間に見えますか。


「私はそんなに肝っ玉に見えますか。ホラー系に強いように見えますか」

「魔王様前に平気で観光案内するようなやつがホラー嫌いとかおかしいだろ。ここ魔界。こんなとこに来たがるやつがあの映画で撃沈とか駄目だろ」

「そうだよ、ダメなんだよ。そんな映画見た日には、夢の中でリアルハザード体験することになるから!」


 映画自体が怖いんじゃないんだ。後々、自分が襲われてる夢を見る羽目になるのが怖いんだ。

 切に訴えると秋葉も「それは怖い」と顔色を青ざめさせながら納得してくれた。


「夢の中では司くんにも助けてもらえない」

「現実でもお前は助ける間もなく、どこかに行こうとする」

「まだ行ってない。早く観光したい。明日のためにもう寝たい」


 しかしはじまる上映会。


「え、シノブ、こういうの怖いの?」

「何それかわいー」

「かわいーじゃねーんだよ。みんなまとめて追体験の恐怖を味わえ!」

「忍、言葉遣い」


 早くも色々が崩壊し始めている。ちなみに前々回は入校制限のなくなった警察学校に、問題児が集まりまくるというシリーズ映画で腹筋が崩壊していた。


「仮にも悪魔だぜ、こんなの怖がるわけ……」

『ぎゃあああぁぁぁぁぁ!』

「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!」


 ……お約束すぎてわかっていたが、大迫力のサラウンドから悲鳴、画面にグロテスクないろいろが飛び出てくると、同時に悲鳴を上げて隣に座っているアスモデウスに捕まっているマモン。


「ちょっとマモン、やめてよ」

「怖がるわけねーだろ! こんなもの魔界にはわんさかいるわ!」

「……今すぐ人間界に帰ってもいいかな」


 そんなものがわんさかいる場所にいたくなどない。


「嘘というよりほらを吹いて無駄に忍を怯えさせてるのは誰かな」

「閣下!」


 アスタロト、いつも通り突然の登場。普通に入って来ているのだと思うがそれぞれ映画に夢中で誰も気づかなかった今回。


「お、怯えてなんかねーよ?」

「マモンのことなんて言ってないし」

「ツカサ、場所変わってよ」

「嫌だ」

「私だっていやだ」


 捕まるところがなくなってしまうではないか。しっかり司の服の袖をに握りしめたまま忍。すがるにしてもそこが限界なのがなんというかどうしたらいいのか自分でもわからない。


「アスタロトさん、この映画……」

「ボクはもうこれ観てるから、今日は一緒しないけど」


 そうじゃなくて。もっと平和なのに変えてください。

 いつ見たとかどこで見たとかそういうことはこの際、疑問にも思わない。感想は聞いたら冷静になれるかもしれない。


「私、明日早いんでもう寝ます」

「そう言わずに。午後になったらボクも時間が空くから、外出の計画でも一緒に練ろうか」

「……」


 飴と鞭とわかりつつ、何も言えない。


「なぜ今日に限ってこんな仕打ちを……」

「酷いだろ。オレは一緒してやるから泣くな。ほらポップコーン」

「ポップコーンごときで忍の機嫌がとれるとは思えないけどね」


 ダンタリオンが差し入れとともに現れて、七罪たちは大喜びしているがアスタロトの言うことは的を射ている。


「せっかく親睦が深まって来たみたいだから、もう少し我慢」

「そういう意図ですか」

「つり橋効果は秋葉の方が絶大です」

「いやだ、オレもグロいのはいやだ」


 うっうっと大画面、大迫力のシアタールームが仇になって泣きそうな秋葉がいる。

 私も泣いてよろしいか。いろんな意味で。


「シノブ、怖がりすぎ」

「公爵、ゲームやってみてください。ただでさえグロいのに最初の扉開けた瞬間にやつらに襲われて瞬殺される恐怖を味わってみてください」

「忍は記憶力がいいからトラウマが多そうだね」


 誰だ、こんな映画おススメしたのは。

 消去法で忍と秋葉ではもちろんないし、司もわざわざ勧めるほど好きではないだろう。


 ……。


 考えないことにする。


「きゃああああ!」

「いやぁぁぁぁぁ!」


 なんで悪魔がホラー映画見て阿鼻叫喚するんだよ、と思いつつ。違う意味で耳をふさぎたくなりながら夜は更けていく。

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