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2.魔界訪問決定

「秋葉と司は?」

「魔界とか無理です」

「すみません、俺はこちらでやることが多いので」


司は武装警察の中でも対神魔に特化した特殊部隊に所属している。しかも第一部隊を仕切る立場なのでいなくなったら有事の際に困る。代替が効かないので、答えは一択だった。


「そうか、残念だな。司なら自衛も問題ないし、もしも忍に何かあっても安心かと思ったんだけど……」

「もう決定事項なのか。お前のプランは」


どんどん話が進んでいる。とはいえ、アスタロトは一介の観光滞在神魔。現代日本では、爵位がどうのは大使や公式訪問以外ではあまり関係ない。ダンタリオンが仕事をしてくれないとどうにもならない部分はある。


「本当のことを言うと、魔界の方で今、ボクが請け負っている仕事があって……その一環として来てもらえると有難いなと思った」

「なんだよ、その仕事……ていうか、お前に仕事負わせるとか」

「陛下からの勅命だよ」


魔界事情は全く不明だ。「陛下」ということは魔界の王、ルシファーのことだろう。今までそちらの事情は聞いたことがなかったので、忍も秋葉も司も現実感として遠い。

しかし、日本で平和ボケしそうなダンタリオンは逆に現実に引き戻されそうな顔になった。


「!? 陛下から!? まさか!」

「まさかってどういう意味かな」

「どうもこうも、陛下直々に命を下されるような事態になってるなんて情報入ってねーぞ!」

「逆に言うと、大げさにするようなことではなく。……交流を推進するのはいいことだと」

「そういうことなのか」

「いや、どういうことなの? オレたちにもわかるように」


確かに、今の会話からは勅命が何なのか何も見えてこない。ダンタリオンはため息をついて乗り出しかけた身を引いて、椅子の背もたれに身を沈めた。


「だからそのままだろ? 陛下が人間界との交流に……まさかの乗り気?」

「乗り気加減はともかく、そういうわけだから忍が来たいというならこちらの受け入れ態勢は整える。ただボクには人間界での権限は全くないからーー」

「わーったよ。繋げばいいんだろ。なごみでいいか?」


和というのは護所局の局長で、元警察庁のなんたらの役についていたらしいが、数字で言うと


893あるいは5910


という感じの人なので、護所局の魔王とも言われている。我が道を(強引に)行く人なので、下手な幹部に話を通すよりは早いだろう。


「忍ひとりじゃ心もとないだろうから、誰か誘う?」

「じゃあもりちゃんに声掛けて……」

「俺が行きます」


別に狙ったわけではないのだが、司が前言を翻した。シンは司の双子の妹で、そもそも忍の先発の友人は彼女の方だった。類友と言っていいのか、割と忍とシンクロ率が高いので誘えば多分喜ぶだろう。


が、司はその危険性に対するボーダレスっぷりを知っているので、「ダメ、絶対」みたいなことになる。定番の流れだ。


「但し、局長に許可をもらってください」

「そうだね、じゃあ人事交流って言うことで順応性の高そうな強めの誰かを派遣するから、そっちは安心して」

「本当にお前の脳内どこまで進んでんの?」


もうこのまま色々が決定しそうな流れ上、ダンタリオンが再度確認をしている。


「一任されたものの、どうしようかとは思っていたんだけどこれに関してはボクの脳内に浮かんだ時点で、もう八割方は実行されているようなものかな」

「じゃあほぼ思い付きなんだな。リアルタイムで生じる問題は?」

「その都度修正をかけていく」


仕事ができる人の柔軟思考を見た。


「あ、でも期間ってどれくらいですか?」

「一年くらいか?」

「長い! 忍と司さんが行っちゃったらオレここに一人で来るの? 無理だろ。オレもやっぱり一緒に行かせて」

「お前は魔界に行くよりここに一人で来る方が無理なのか」


秋葉とダンタリオンが不毛な会話を繰り出している。無理だろう。ダンタリオンそのものも無茶ぶりをしてくることがあるが、それ以上に……怒れる魔王様の観光案内をさせられた経験のある秋葉は『そっちの方がマシ』と思っているに違いない。


「いいんじゃないかな。慣れた三人が揃ってる方がお互い過ごしやすいだろうし。でも適応できないと困るからとりあえず3か月から始めようか」


お試し期間が提示された。


「ホームステイかよ」

「そう言われると、軽い感じになるよな。アスタロトさんのところならちゃんとしてそうだし」

「面倒を見ると言ったからには、不自由はないようにするよ」


その言葉を聞いて、秋葉も改めて安心したようだ。……基本的にダンタリオンより信用している。


「まぁいいけどな……陛下からの一任なら早めにやっとく方がいいだろ。どうせ即OKでるんだから、お前らも準備しておけよ」

「魔界に行く準備とは」

「お泊りセットでいいですか」

「私服だけでいいよ」


なんという至れり尽くせり。今時のホテルや旅館と大して変わらない不自由のなさの予感しかしない。


「万一必要なものがあったらその都度ダンタリオンに手配してもらうから」

「何でオレだよ」

「大使の権限でフリーで行き来できるのが君だからだよ。まぁ大体魔界の中で済むはずだから、あまり深く考えないで」


そんなわけで。

ダンタリオンの言った通り、和とはどんなやりとりがあったのか交渉即日OKが出て、三人は魔界を訪問することになった。

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