疲れてきた第六話?
近々、多分、書き方を変えます。
聖は王女を背負いひたすら地下通路を走っていた。
(アルジェンディさん達は大丈夫なのかな?ペウクニアさんとか動物園で兎の世話とかしてそうな感じだけど。)
聖は二人を心配しながらも走り続け、ようやく出口の近くまでたどり着いた。
(よし、ここを左に曲がってと、後はあの扉を開ければ)
そして、聖が扉を開けようとした瞬間、幾何学模様が浮かび上がり聖達を強い光が包んだ。
「あ、これやばいやつだ」
ペクウニアとアルジェンティは騎士達を片付け、全速力で聖達の後を追っていた。
「ん?前に見えるのは聖殿じゃないか?」
ペクウニアは目を細めかなり前に聖達らしき人影を見た。
「相変わらず凄い目をしているな。それにしても思ったよりも合流が遅れたな。お曲がった。」
ペクウニアは普通の状態で視力6という化け物じみた視力を持っている。
今は魔力で視力を強化中なので余裕で二桁に達している。
「いや、自分達を擁護するわけじゃないが、聖殿が予想よりも遥かに早かった。今回はお互いの力量を把握しないままの任務だったから!ペクウニア!今すぐ引き返すぞ!」
「今の魔力は何が起きたんだ!?」
アルジェンティは魔力感知能力に突出しており、ある程度の距離があってもどんな系統の魔法が発動されたか分かる。
本来なら発動前に魔法が仕掛けられているのを知る事が出来ただろうが、王城は特殊な素材で出来ており、魔力感知能力を阻害する効果を持っている。
「転移系統だ!恐らく我々を逃さない為に王城の防衛魔法のレベルを上げたのだろう。上に向かって魔力が動いたのを感じた。急いで戻らなければ取り返しがつかなくなるかもしれん。」
「え?牢屋?」
聖は気づくと王女が囚われていた部屋に似た場所に立っていた。
しかし、そこは体育館程の大きさがあった。
違和感を感じるがそこはあの部屋と似ていた。
「ペクウニアも落ちたものだな〜、こんな子供に抵抗用の魔道具も持たせずにあの迷宮を歩かせるとは。」
突然、後ろから声がし聖は振り返った。
「すみません。どなたでしょうか?」
「君は変わっているな、この状態でよくそんな事を言えた物だ。まあいい、私は序列8位 武天 アトラス・パラドクスだ。」
「序列?」
聖は聞き慣れない単語に首を傾げた。
「あー、魔族側に着いたからもう聞いてると思っていたが、まだだったのか。今日は懐かしい顔触れが見れて気分がいい。一から説明してやろう。
この国含め多くのヒューマンの国は大体裏で表に出さないような事をしている。
魔族は勿論、我々と同種も含めて色々と実験をしているわけだが、研究には質の良いサンプルなどが欠かせない。
同種でも王族などは神との繋がりがあり良い被検体になる。
ヒューマンの国は戦争を仕方て、王族を集めている。
それらも全て我らが神の目的の為。
しかし、一定数それに反発するヒューマンも出てくる。
それ以前に他の神にバレたら速攻で潰されてる。
それを防ぐ為に数百年をかけて魔族を悪とし、戦争を仕掛けつつ、裏では工作をしてエルフやドワーフの王族の遺体を集めていたのだが、流石に魔族やエルフ、ドワーフの神に研究の事がバレてしまって今この状態にいたる。
」
「魔族とヒューマンの戦争は問題ないの?」
「基本、神は人間には不可侵って言う制約。その種が滅びそうとかまで行かないと手が出せないんだよ、それに戦争自体はどこでもやってる訳だから問題ない。ただ、神が関与して戦争を誘発させるという制約を破る事をして、その裏で禁忌にも抵触してるからね。で、序列の話だけど序列は裏の人間つまり私達の文字通りの序列を表している。ヒューマンとそれ以外の国のパワーバランスがおかしいと思った事ない?実はそうでもないんだよ。
魔王と四天王と何人かはバケモンみたいな強さだけど、普通の魔族はそこまで強くない。私目線でなくて普通の王国の兵目線でね。力国の一般兵の強さに違いは殆どないんだよ。戦争激化前にヒューマンが魔族と互角だったのは魔王達が神々の制約で参戦してなかったから、でも今は違う。だから僕らも出ないと行けない戦場にね。」
アトラスと名乗る男の一人語りの様な話が終わった瞬間、物凄い圧が聖を襲った。
「まあ、序列を20文字くらいで説明すると、魔王達と同等の力を持った者達に与えられる称号かな?君はあの老害共の力を少し持ってるみたいだけど、私にはその力は通じないよ?」
アトラスは薄気味悪い笑を浮かべながら戦闘体制にうつろうと
「その前に王女様を安全なところに運びたいんだが?」
「おっといけない、私とした事が二人とも消すところだったよ。それじゃああそこの扉の向こうにでも置いておくと良い。ここには私しかいないから、外に置いておいて兵達に襲われるという心配はないよ。」
「分かった。」
聖はそう言うと扉の向こうに王女を置いて、再びもと場所に戻った。
「やっぱり、君は面白い。どうだい?今なら私が何とかしてやるからヒューマン側に戻って来ないかい?」
「遠慮しておきます。どうもヒューマンよりも魔族の方が好みなので。」
「そうか」
会話が終わるとアトラスは一瞬で間合いを詰めて聖に剣を振り下ろした。
キーン
「流石は勇者君、最低限の剣術は出来る様だな。じゃあこれは?」
そう言うとアトラスは先程よりも強く剣を振るった。
振るっては更に強くを暫く繰り返す。
しかし、聖はそれを全て見事に受けきる。
「君、かなり出来るね。老害の力以前に君自身の力を強く感じる。一つ聞きたいんだけど、どうやって私の剣を受け止めているんだい?そうだね〜、答えてくれたらこの戦いの後に王女様をペクウニアのところまで届けても良いよ。どうだい?」
アトラスは再び口を開いてこう言った。
「剣に意味が無い」
「意味?」
聖の答えに、アトラスは首を傾げた。
「柔道をやっていた時に学んだ。乱取りの時、試合の時、ただ掛けてくる技があるんだ。投げる技じゃなく、掛ける技が。投げる為に技を掛けてあるんじゃない。ただ、指導を喰らわない様にとか、何となくみたいな感じの、意味がない技を掛けられる。」
「つまり?」
「あなたの剣は僕を殺す為に振られてると言うよりかは、僕で遊ぶ為。子供が格好をつける為に言う言葉みたいなそんな感じを受けた。」
「ふっ、はっはっはっは、つまり私が君を殺す気がないと?」
アトラスがそう言い放つと、聖は先輩に道着を握られた時の様な圧を受けた。
「少なくとも、僕はそう感じた。」
聖は気圧されながらもそう言った。
「君は本当にあの世界から来た子供なのか?」
圧は急になくなり、初めのアトラスの雰囲気に戻った。
「あちらの世界の人間に何度かあったが君みたいなのは初めてだよ。殺意のない剣なんて感じ取れる人間、今まで会わなかったし、話している感じあの世界で、この感覚を持ってる人間はそこまで多くないだろう。いや〜、君にはますます興味が湧いてきた。」
アトラスはそう言うと剣を納めて握手を求めた。
が、聖は状況をあまり理解出来ずに手を出しそびれた。
「あれ?君のところではこれは和解の印ではなかったか?」
「こうですけど、どうして急に?」
「いや、そもそも私は君に干渉している暇も余力も無いのだが、君に興味を抱いたから会ってみたんだ。あの方も他っておいて一刻も早くמלחמת קודשの用意をする様に言っていたのだが我慢出来なくてね。君のこれからが楽しみだ。そろそろ時間だ、あの扉を暫く行くとまた扉があるこれを開ければ本来出る筈だった場所に出れるよ。ほら、ペクウニア達が心配してあるだろうから早く行くといい。」
アトラスはそう言うと手で扉へ行くよう促した。
「あー、どう言えばいいのか分からないけど、ありがとうございました。」
聖はそう言うと扉の方へ行き、扉を押そうとした。
「あ、それと君は私が君を殺すつもりはないと予測したが、それは半分不正解だ。面白そうじゃないと思ったらその瞬間に殺していた。呼び止めて悪いね。じゃあ」
そして、聖は扉を出て王女を背負って言われたとうり進んで行った。
「クソ!お前ら許さんぞ!」
ペクウニアはそう叫ぶ。
「だから我々は知らないと言っているだろう!本来はこんな事をしている暇はないのだ!」
アルジェンティとペクウニアは長身の男二人と戦っていた。
「貴様ら以外に誰がいると!」
ペクウニアが声を荒らげていると
「ごめん、4人共。ちょっと興味が湧いて少し遊んでた。今はペクウニア達の仲間と合流しているところだと思うよ。」
「アトラス!貴様また!」
ペクウニアと戦っていた男がそう言う。
「本当にごめん。次からは気を付けるから。」
「クソ、行くぞ、トール。」
そう言うと長身の男二人は去って行った。
「ペクウニア達久しぶり、元気にしてた?今日はごめんね?でも二人とも無事だから心配しないでね?」
「アトラス!貴様!」
「ペクウニアやめろ、今は早く戻る事が先決だ。先に戻ってファス様達の無事を確認してこい。」
「分かりました。」
そう言うとペクウニアは消えた。
「久しぶりだな、アトラス。お前が助けてくれたと言う事で良いのか?」
「さあ、それは解釈によると思うけど、ここでははいと答えておこう。」
「そうか、助かった。」
「いやいや、こちらこそ楽しませて貰ったよ。聖君にありがとうと伝えておいてくれ。」
「お前は大丈夫なのか?」
「まあ、何とかするよ。久しぶりに顔が見れて良かったよ。今度からはしっかりと面倒を見るんだよ。」
そう言うとアトラスは背を向けて去っていった。