何とかなりそうか第三話?
今、聖は魔族救出の為に地下の捕虜収容所に来ていた。
そこの環境はとてもいいものとは言えず、賞味期限4週間切れの牛乳と同じくらい、「それ大丈夫?」と言われるレベルに酷い残飯に、虫に喰われた紙の様にボロボロな服を着て血だらけの床に裸足で収容されていた。
これは思っていたよりも酷い状況だな。
魔法で穴を開けて、魔族の人達には自分で逃げてもらうつもりだったが、どうにも歩けそうにない人がいる。
怪我をしてという者もそうだが、厳しい環境に置かれた事による疲労の蓄積や、十分な栄養が摂取出来ていないからだろうな。そんな状態の捕虜がざっと4割、他の捕虜は怪我をしていて歩くだけで背いっぱいの人ばかり、まだ元気がありそうな捕虜は1割くらいか、頑張ってもその捕虜達だけで4割もの捕虜を運び出すのは厳しい。
食糧庫を見せられた時にこっそり食料を奪っておいたが、それを食べさせてとかはまず無理だ。
変に与えて死なせる訳にはいかないし。
「セイ殿、どうかなされましたか?」
そう考えていると、国王が話しかけてくる。
こいつが着いて来たのも厄介だ。
国王は強い魔力を宿した王冠を持っている。魔王に匹敵は流石にないだろうが、国宝になるくらいだ。多少は気を付けないと足を掬われる事になるかもしれない。
適当に理由をつけて追い払わないとな。
「僕をここへ呼んだ時は、捕虜を生贄にして召喚したんですよね?」
「ええ、そうです。なかなか良い贄ですよ。魔力、生命力が高いのでここにある物を使えば神のみわざも起こせるでしょう。」
「国王様、そこで提案なのですが、ここの魔族を私の強化に使いませんか?」
かなり、無理そうな言い訳だけど、いけるか?
「それはどういう?」
「ここの魔族の魔力、生命力を吸収して更なる力を得れば、四天王も簡単に倒せるのではと。」
「今のままではダメなのですか?」
「流石に今の状態では、四天王に敵わないと神が、仰ってありましたが、ここの捕虜を使えば四天王など敵ではないとも仰ってました。」
「そうですか、ならばセイ殿に全てをお任せします。」
「よろしいのですか?」
「ええ、これらは随分と使いましたので、この戦いで新品に入れ替えようと思っていたところでしたので、それがセイ殿のお役に立つのでしたらどうぞ、お好きになさった下さい。」
「では、そうさせて頂きます。そこでなのですが、しばらく一人にさせて頂けますか?」
「何故ですか?」
「この魔力は集中が大切なので、出来るだけ必要ない物などは無くしたいのです。」
「東方の文献にある、仙人の修練の様なものですか?」
「こちらの世界にも仙人が!私の故郷でも仙人の伝承などがありまして、こちらの世界の仙人が私の故郷と同じならば、その認識でいいと思います。」
「では、
よし、一旦なんとかなったな、後は捕虜をあの人の仲間に引き渡せば
騎士団よ、捕虜の首を裂いて回復魔法をかてよ!」
「え?ちっょ、待って頂けますか?」
「どうかなさいましたか?」
どうかなさいましたか?じゃねえよ!
そんな事されたらこっちの首が飛ぶよ!
「捕虜の悲鳴で共鳴を引き起こして魔力の活性化を図るので、出来れば声帯などは綺麗な方がいいんですが?」
「あ、そうでしたか、では私達がお手伝い出来る事は他には?」
「あとは、僕が実行に移すだけです。」
「そうですか、では私達は下がらせて頂きます。」
そう言うと、国王は近衛兵を連れて来た道を戻っていった。
よし、取り敢えずはこれで良い、次は内通者の言っていた、ドルクルドと言う男を探すか
「この中にドルクルド殿はいらっしゃるか?私はキャバラス
・ラリエ殿の依頼を受けて、あなた方を助けに来た。」
捕虜の魔族は皆(そう出来る者だけ)が顔を見合わせた。
「言葉も預かっている。日を背負いし者達に安息の未来を、との事だ。」
聖がそう言うと少し間を置いて、
「私がドルクルドだ。まずは、私達の戦いに巻き込んでしまった事に謝罪をする。」
「その謝罪を受け取る。」
「感謝する。次に私達を助けに来てくれた事に感謝する。」
「それに関しては報酬が約束されているからな、報酬分の仕事はしよう。では、早速だが、僕が今から一周回るから意識のある者は状態などを言って言って欲しい。」
聖が一言そう言うと、ドルクルドが叫ぶとは行かないが、大きな声を出した。
「私を中心に番号を言え!」
その一声で、ドルクルドを中心に皆が数字を言っていき、しばらくするとそれなりに大きな数字が端から帰ってきた。
「我らの数は大体5000人程で、動けない者が2500、運べる者が1000人、補助なしで何とか逃げれる者は1500人程だ。意識のない者も動けない者の中に入っている。それでセイ殿、私達はどうすれば良い?」
「え?ああ、そうだな、まずは私がキャバラス殿が用意した場所まで魔法で穴を掘る。そこからはキャバラス殿の仲間にあなた方を任せて私は混乱を起こす事になっている。まずは私がドアを壊していくからその後に穴を掘っていく。その間に元気のある者限定で少量などを少し配るから掘り終わるまで少し英気を養ってくれ。」
「いや、私達も牢を壊すのを手伝おう。この手錠が無ければ魔法を使って簡単に他の者を助けられるし、身体能力きょうかで二人くらいなら何とかなるだろう。」
「分かったそうしよう。」
そこからはドルクルドを中心に効率よく捕虜を救出していった。
そこからは聖とドルクルド達は穴を掘り、キャバラスに伝えられていた所にたどり着いた。