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嵌められ勇者のRedo Life Ⅱ  作者: 綾部 響
1.プロローグ
3/75

脱兎の如く

俺の返事を聞いたマリーシェ達は、どうにも呆けた様な……訝しんだ表情をしている。

まぁ、このクエストの本質を知らなければ、それも仕方ないよなぁ。

 俺たちは今、まさに危機的状況だ。

 護衛対象の行商隊(キャラバン)を護るのは、今や俺たちのパーティだけになっちまった。

 元々行商隊が抱えていた守備隊は、もうすでに全滅してしまっているからなぁ。


「……え? ……全滅……させるんやんなぁ? ……ワーウルフ盗賊団」


 マリーシェの問い掛けに疑問符で返事した俺に対して、サリシュが方針を再確認して来たんだ。

 彼女の表情には、大きく疑問符が浮かび上がっている。


「……いや? 全滅なんてさせるつもりはないけど?」


 そんな彼女に向けて、俺は自分の考えを口にしたんだ。

 それを聞いたサリシュも、そしてマリーシェやカミーラ、それにセリルとバーバラも瞬間的に呆けた表情となっていた。

 もっとも、押し寄せる狼人間(ワーウルフ)の群れに晒されて、そんな状態を長く維持し続ける事なんて出来なかったんだけどな。


「そ……それでは、どうやって行商隊を護ると言うのだ!?」


 目の前の魔物を倒しながら、カミーラが俺に問い掛けて来たんだ。

 う―――む……。どうやら彼女は……いや、俺以外の全員は、どうにもこの依頼(クエスト)の趣旨を理解していない様だなぁ。


「良いか! 俺が合図したら、御者に全力で馬を走らせる様に指示するんだ! ……セリル、バーバラ!」


「お……おう!」


「……何?」


 そんなカミーラの質問はとりあえず流して、俺は先ほどから機会を(・・・)見計らっていた(・・・・・・・)作戦を決行する事にした。

 有無を言わせない迫力を出した俺の声に、セリルはやや気圧された様に返事をする。

 まぁ、バーバラは普段通りなんだが。


「お前たちはまだレベルが低いからな! 同乗して、もしも馬車に入り込もうとするワーウルフがいたら蹴落とすんだ! 必ずしも倒す必要は無いからな!」


「あ……ああ。……って、倒さなくて良いのか?」


「……分ったわ」


 俺の指示を聞いてもまだ疑問符のセリルは無視して、俺は次の指示に移った。


「サリシュは先頭の馬車に乗り込んでくれ! 御者の横に座って、もしも前方に立ちはだかる敵がいたら無力化してくれ(・・・・・・・)!」


「……うん。……分った」


 それでも俺の事を信頼してくれているサリシュなんかは、こう指示しただけで何をするのか察してくれている。

 やっぱり、パーティの醍醐味はこの連帯感だよなぁ。


「マリーシェとカミーラは、俺と共に馬車と並走するぞ! ちょっと長い距離を走る事になるけど、頑張ってくれ!」


「……了解した」


「そ……それは良いけど、それじゃあクエストを完遂出来ないんじゃあ……?」


 疑問を口にしたマリーシェだが、すでに行動を開始する準備に移ってくれていた。

 俺の指示に従う事がこのパーティの形となりつつある今、彼女も疑問を口にしながらその手を止める様な真似はしない。

 それを確認して、俺は腰袋から白い玉の様なアイテムを数個取り出した。

 これこそは逃走用アイテム「逃走玉」! まぁ、そのまんまな名前な訳だが。

 これを地面に叩きつければ、煙幕で周囲の状況を分からなくしてくれるって代物だ。


「あれ? それって……もしかして『煙玉(・・)』か!? でもそんなもんじゃあ、あいつらから逃げるなんて……」


 俺の手にしたアイテムを覗き込んで、セリルが非難の声を上げるんだが。


「……違う。……これは……『逃走玉(・・・)』!? ……こんな高価なもの(・・・・・)を……ここで使うの!?」


 でもバーバラは、俺の持つ玉が「煙玉」じゃないと知って驚いていた。

 ……まぁ、それも当然だろうなぁ。


 逃走用アイテム「逃走玉」。

 叩きつけると煙を吐き出すんだが、その煙には魔物の感覚を麻痺させる効果がある。

 だから気配の鋭い魔物や、耳や鼻の利く魔物でも、この煙の中じゃあ後を追う事は出来ない。

 ……もっとも、高レベルの魔物には効かない訳だが。

 魔法により(・・・・・)作られている(・・・・・・)このアイテムは、「煙玉」みたいにただ煙を吐き出すだけでは終わらない。

「煙玉」なら、屋外で使用したらすぐに霧散してしまうからな。

 でもこの「逃走玉」なら、そんな事を危惧する必要はない。

 魔法を織り交ぜて(・・・・・・・・)作られた(・・・・)煙は、一定の範囲に広がった後そこに留まり続けるんだ。

 これは、風が吹こうとも掻き消そうと暴れたって消えやしない。

 最上級の「絶対逃走符」は流石にもったいないけど、この程度の魔物ならこれでも十分にお釣りがくるだろう。


「マリーシェ! カミーラ! 一端、こいつらを一気に押し返すんだ!」


 とにかく逃げるにしても、相手との距離を取る必要がある。

 俺は彼女たちに、そう指示を与えた。


「うん、任せて!」


「心得た!」


 そして2人からは、何とも心強い返答が戻って来たんだ。

 レベルが上がって変わったのは、何もパーティ編成だけじゃあない。

 レベルも10を超えたこの2人には、新たに「攻撃スキル」が身についている。

 まだ連発出来る様でもないけど、ここぞって時には強力な攻撃手段になるんだ。


「んじゃあ、行くわよ!」


 隙をついて、マリーシェが構えを取る。

 腰を落として半身になり、目の高さに剣を掲げて切っ先を敵に向けた。そして!


「ん―――っ! 『無尽穿(セイフ・ディエス)』っ!」


 彼女が技名と共に攻撃を繰り出すと、その名の通り何回もの素早い突きが繰り出されたんだ! 

 ……もっとも「無尽」という程に数えられない様な攻撃じゃあない。せいぜい、10回が限度ってとこかな?

 でも、敵がワーウルフ程度ならこれで十分だ! 

 マリーシェの目の前にいたワーウルフが3体、殆ど同時に吹っ飛んで後続とぶつかった!


「『一閃豪断(ラーマ・ブリッツ)』っ! はぁっ!」


 同じく腰を低く落とし刀を鞘に納めたカミーラが気合一閃、刀を抜き横に薙いだ! 

 居合切りの様にも見えなくないが、これは切れ味よりもより広範囲を攻撃する為に放つ力技だ。

 カミーラの攻撃を受けて、彼女の眼前まで迫っていた魔物が数体、同時に吹き飛ぶ!


「神秘の雲よ、眠りを誘え……睡眠の雲(ドルミル・ヌベ)!」


 そして前方……行商隊の先頭にある荷馬車から、サリシュの魔法も放たれたんだ!

「眠りの雲」の魔法は、対象範囲の生物を眠らせる魔法だ。

 魔法のレベルが低いから睡眠深度は浅いだろうけど、敵の隙を作り出すにはもってこいだな。

 そして今の彼女なら、割と広範囲の敵を巻き込む事が出来る!

 サリシュの魔法で、10体くらいのワーウルフがバタバタと倒れ込んだんだ。

 それも十分に、魔物の足止めに役立ってくれる! さすがだぜ、サリシュ!


 3人の攻撃で、押し寄せて来ていたワーウルフは足止めを食らい、俺たちとの間に十分な間が取れたんだ! 

 やるなら、ここが最善だ!


「サリシュッ! セリルッ! バーバラッ! 荷馬車を走らせろっ!」


 その瞬間に俺は、3台の荷馬車にそれぞれ待機していた彼女たちへ向けて大声で指示を出したんだ! 

 それと同時に、足元に持っていた「逃走玉」を叩きつけて炸裂させる!


「よし……逃げろ―――っ!」


 俺は大声で走り出し、全員にそう声を掛けたんだ!


「逃げろって……あんたねぇ……」


「……ふふふ」


「良し、心得た!」


「なんか……これで良いのかよ?」


「……面白い」


 逃げろって指示も、まぁ余り聞く事は無いだろうな。

 俺の指図を聞いた仲間たちの反応はまちまちだ。

 呆れたような声を零して俺を見つめるマリーシェ。

 面白そうにクスクスと笑うサリシュ。

 笑顔で応じてくれているカミーラ。

 どうにも納得がいっていないセリル。

 僅かに口角を上げて楽し気にしているバーバラ。

 まぁどうせ、上手く逃げおおせればそこで質問攻めになるだろうけど、結果を見れば納得してくれるはずだ。

 今回はこれで問題ない筈だからな。

 アイテム「逃走玉」のお陰で、ワーウルフ達が追って来る事は無かった。

 如何に鼻が利き耳が良く敏捷なワーウルフと言えども、流石に魔法的な妨害煙を発する「逃走玉」の効力には成す術が無かった様だな。

 これで、少なくとも俺たちは次の街「アルサーニ」までは安全だと言える。


 そして俺たちは、その日の夕刻に「アルサーニの街」に辿り着く事が出来たんだ。

 当然、行商隊の積み荷の損害は……ゼロだった。



俺たちは、無事に逃げ切る次の町へと辿り着いたんだ!

荷物の損失はゼロだったけど、護衛隊に被害は出ているからなぁ。

はてさて、クエストは成功だったのかどうなのか。

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