怒り狂う電動ノコギリ
摩耶の身体が、ゆっくりと上昇する。
摩耶が上昇するに連れて天井も少しずつ上昇して3メートルの位置で、摩耶の身体は天井にピタリと貼り付いた。
背中の痛みも天井のぐにゅぐにゃのマッサージ効果で薄れたのか、激痛はない。
『フゥ』と摩耶は息を吐く。
(骨は折れてないみたいだな)
LUCAが、数十本のフォークをガシャッと床にぶちまけた。
「何をするつもりなんだ!」
「本当は分かっているんでしょう。こう言う事だよ。ゾクゾクする」
LUCAが両手の平を、ハの字に広げて胸の辺りまで上げる。
するとフォークがブルブルと小刻みに震えながら摩耶に焦点を合わした。
摩耶は観念して眼を閉じた。
組織を抜けた時から、こういう運命になる事は分かっていた。後悔は無い。
摩耶は晴れやかな表情になった。
(野呂元気でな‥‥)
『えっ?』
摩耶は自分の心の呟きに驚愕した。
死ぬ寸前に、野呂の事が脳裏に浮かぶとは思いもしなかったので動揺した。
(心残りがあるとすれば、野呂の事だけだな)
「穏やかな表情をして気にくわない。これならどうだ」
『ぐぅいぃん』
電動のこぎりが上下左右に躍り狂っている。
「お前をミンチにして犬の餌にするわ」
『クックック』
LUCAがが邪悪に嗤う。
『うっふふ』
摩耶が笑みを洩らした。
「な、何が可笑しい!」
LUCAが気色ばんだような表情をした。
「バラバラにして犬の餌にしようが、現実世界のあたしは無傷よ。なので恐怖感は半減するわよ」
「そう思うなら、今から体験させてやる。夢魔地獄の凄さをな」
『ガチャガチャ』
『グゥッイン』
電動ノコギリとフォークが小刻みに踊っている。
LUCAが胸前で押し開いていた両手を、地面に叩きつけるように振り下ろした。
フォークと電動ノコギリが、摩耶を目指して突進する。