魔少女LUCA
隣りを見ると神谷は、まるで死んだように眠っている。
入り口のドアが微かに波打っているように揺れている。
麻耶は、素早く下着とワンピースを身に纏う。そして神谷を激しく揺り動かすが、ピクリともしない。
『ウッフフフ』
「誰だ!」
「あたしの夢魔ワールドへ。ようこそ」
『クスクス』
ドアをグニュリとすり抜けて、あどけない 16歳位の少女が現れた。
まるでフランス人形みたいだ。
「まさか、お前は?」
「そうよ。魔少女LUCAよ。やっと見つけたわ」
LUCAが悪戯っぽく嗤う。
「LUCAよ、お前の仲間はいるのか?」
『クスクス』
「何が可笑しい」
「確かお前はNo.13 あたしはNo.4よ。お前ごときは、あたし1人で十分よ。格上のNo.1.2.3の3人でも、あたしの夢に引き込んだら勝手な事はさせないわ。あたしの夢の中では、超能力も無意味だからよ」
「そうかい、無意味かどうかそれなら試してみな」
LUCAの言葉が言い終わらないうちに摩耶は垂直に飛び上がった。
『えっ?』
摩耶は驚愕の表情を浮かべた。
摩耶は2メートルの空間に浮かんでいた。
『クスクス』
LUCAが無邪気に嗤う。
「『ウフッフ』だから言ったでしょう。無駄よ無駄」
LUCAが口角を邪悪に歪ませる。
「分かった。早く殺せ」
(夢の中では何をやっても駄目なの? 夢の中で殺されれば、ホテルの部屋のあたしも死ぬのか‥‥この空間は不気味だ。壁も天井もぶよぶよ動いて脈動している)
「簡単には殺しはしない。あたいは、いたぶるのが好きなのさ」
LUCAが右手を下に下ろして左に手首をスッと払った。
摩耶は瞬時に左の壁にバシッと叩きつけられた。
『ズダッ』
鈍い音がする。
背骨がミシット軋む。
(息が出来ない。何というスピードだ。壁がぶよぶよと蠢いていなければ、全身の骨はバラバラだわ。現実世界でないと分かっていてもこの衝撃。だんだんと呼吸が楽になってきたのはぶよぶよ蠢いている壁のマッサージ効果ね)
「どう? これからが本番よ『クックック』」
LUCAが両手の平をハの字に広げて、天井へゆっくりとスライドした。