フェロモン全開
一息ついたのか、麻耶はフゥと深いため息を漏らした。
「旦那の身体は、ぶよぶよでヌメヌメしていた。そしてフラフラしながらバタリとうつ伏せに倒れた。するとバリバリと皮膚を破って旦那とそっくりの男が現れたのよ。旦那は若い時に格闘技で試合にも出ていた。格闘技をやめてから鍼灸師になった。あたいは彼の店の患者。知り合って半月後に結婚したのよ。まあ、身を隠す為の偽装結婚みたいなものね。結婚して2年よ」
「そうか。俺も身を隠す為に、山田組に下っ端の組員として潜りこんだ。ところがシャブ取引中に警察の手入れがあった。俺は兄貴分のシャブを預かり、それで捕まった。てっきり身元引き受け人は、兄貴の関係筋だろうと思っていた。しかし見知らぬ女性、それに飛びっきりの美貌の持主。俺は、腰を抜かさんばかりにびっくりしたわい」
「そうね。あんたは眼を丸くして、あたいの身体を舐め回していたわ」
「そりゃそうだろう。フェロモン全開の、ハクイスケが突然現れたらな。しかしそのスケがお前だったとは、2度びっくりよ」
神谷は思いだし笑いをして、口角を上げた。
「あたいも整形して、別人になったからね。最近では自分でも鏡を見て、もとの顔を思いだせないほど馴染んだわ。それにしてもあんた、相変わらずね」
「何がだよ」
「だって最初は、保釈金を払ってくれた身元引き受け人に対してお礼を言うべきじゃない。だけど、あんたは『俺は飢えてんだ。早くステーキを食いたい。それにお前も‥‥』開口一番、そのセリフよ。まあ、あんたらしいけど」
「そうか、それはすまんこ」
「本当に、あんた下品だわ。でも、あんたから下品をとったら何も残らないわ」
「おい、それはないだろう。でも俺はお前の単刀直入な言い回し嫌いじゃないぜ。それはそうと先程の話しに戻ると、何故お前の親父の別荘に円盤が?」
「その話しの続きは羽村の駅前のグランドホテルでね。603号室よ。今から野呂を羽村のマンションに連れて帰るわ。明日の朝、野呂にあんたを紹介する」
「分かった。先に行っている」
『トントン』
神谷がドアを開けると、摩耶が飛びかかって来た。
「おい! 焦るなよ」
二人は、そのままダブルベッドに、ドスンと倒れ込んだ。
摩耶はむしゃぶりつくように、神谷の唇に吸い付く。
そしてお互いの服を脱がしながら下着もベッドの下に落とした。
摩耶は、体勢を入れ替えながら何度も何度も絶頂感を感じた。
自分が、ふわふわと雲の上を浮遊しているような、安らぎ感と安心感を神谷とセックスしている時だけ感じる。本当に相性が良い。
このまま時が止まってしまえと思う。
『ドン』
何かがドアにぶつかるような微かな音に摩耶は、ピックと反応した。
お気に入りと評価ありがとうございます。
感謝いたします。
これからも宜しくお願いします。