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悪魔の証明終了〜QED evil〜  作者: 朱坂卿
certification11 asazel 探偵は生贄の羊(スケープゴート)に甘んじない
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身代わりの羊

「ええと……遺体からは、サクシニルコリンが検出、か……」

「はい、外傷は左腕の注射痕ですからここから注入されたと思われます! あとは……被害者が普段から服用していた抗不安薬の成分が検出されたぐらいですかね。」

「なるほど、な……」


 遺体発見現場を。

 沖縄県警の30代男性警部・堂本聖志(どうもとせいじ)が指揮を取り、検証していた。


 そう、瀬名の発見現場を。


 ◆◇


「あなた方が、発見したんですね?」

「あ、はい……正確には、彼女が第一発見者ですが。」

「ん……あなたですか?」

「は、はい! 私が……」


 ホテルの食堂にて。


 堂本の言葉に。

 隆子が、答える。


「発見されたのは、何時頃でしたか?」

「確か、朝八時頃だったかと。」

「なるほど……死亡推定時刻も大体その頃でしたね。」


 堂本は隆子の言葉に、そう呟く。


「あの……すみません。犯人……とはまだ断定はできないんですが。私、重要な参考人になりそうな人を知っています。」

「……はい!?」

「え!?」

「な!?」


 そこへ声を上げたのは朝香である。


 その場にいた妹子や塚井、日出美に実香に美梨愛はその"重要な参考人"という言葉に嫌な予感を覚える。


「私、実は見ていました。昨夜お客様を呼んで社長たちとのパーティーが行われていた時、実は私フリー記者の佐原さんに呼ばれて佐原さんのロッジに向かったんです。その途中で、九衛さんを見かけました。」

「な、何!?」


 やはり女性陣の予感は的中したというべきか、朝香はそう告げた。


 ◆◇


「ロッジ村の監視カメラには、確かに彼の姿が映っていますね……」

「は、はい……」


 ホテルの警備室にて。


 堂本の指揮の下、長丸に朝香に妹子たちや隆子が監視カメラ映像を注視する。


「しかしこの監視カメラ、死角が結構ありますね。」

「ええ……まだ初期投資の段階でして。それで色々と、設備に不備が」

「なるほど……そんな状態で、お客様を?」


 冷や汗を拭きながら答える長丸に、堂本はやや呆れ顔である。


「いいえ! おじさまからは事前にそのことは聞いていました。それでも私たちは来させてもらったんです! あと、佐原記者や島出身の方々も同様です。」

「お、お嬢様!」


 妹子は堂本に、ややキレ気味に言う。


「私はそこで彼を見かけた直後。佐原さんから予定のキャンセルを申しつけられまして。パーティーに戻ったという次第です。」

「! あ、なるほど……」


 と、そこで場を収めようとしてか朝香が声を上げた。


「では……九衛大門さんはそれからどうしました?」

「さあ……私はその後で、急いでパーティーに戻りましたから。そこから先は……」

「なるほど……」


 堂本はメモを取りながら頷く。


「では、その佐原記者という方は今どちらに?」

「そ、そう言えば……姿を見ていませんね。どこに」

「うむ……よし、緊急配備だ!」


 堂本は長丸に尋ねてのその答えを受けて叫ぶ。


「九衛大門を重要参考人として追う!」

「そ、そんな!」


 この堂本の言葉に、妹子たちは不満の声を上げる。


 ◆◇


「え? 朝香さんが怪しい?」

「うん、昨日の昼間。長丸さんに予定について言われた時の朝香さん、ちょっと取り乱してたみたいだし。」


 その後。


 妹子に塚井、日出美に実香に美梨愛はホテルの部屋で話していた。


 それは、大門が突如倒れたあの時の話である。


 ――あ、そうだ朝香君。その今夜の妹子さんやそのお客様とのパーティーだが……君は確か、他の用事があるんだったな。


 ――!? ……え?


 あの時長丸と朝香は会話していたが、その時の朝香の様子が妙だったのだ。


「そ・れ・にい! 大門をあんな風に告発しやがってええ!」

「そ、それは……」


 日出美の更なる言葉に、塚井も言葉に詰まる。


「とにかく! 犯人は絶対あの女よ。あの時長丸さんから夜の予定を聞かれた時、本当の夜の予定――佐原さんとかいう人の殺害計画があること言われているんだと思って取り乱したんだわ!」

「な、なるほど……」


 日出美は更にそう言い、塚井もそれについてはやや納得した様子だ。


 確かに、その可能性も一理はある。


「第一! 大門君には佐原記者を拉致ったり瀬名さんを殺したりする動機はないし、ね?」

「う、うん。そうだよね実香ちゃん……」


 実香もそこに声を上げ、美梨愛も彼女に同調する。

 と、そこへ。


「あの……よろしいでしょうか?」

「うわあ!? あ、朝香さん?」


 ノックもせずに、朝香が部屋に入って来た。


「あ、朝香さん……どこまで……」


 塚井は思わず、そう聞いていた。


「……ええ、まあある程度私が疑われても仕方ないかもしれません。でも! 皆さんに、聞いていただきたいことがありまして……」

「……え?」


 どうやら、全部聞かれていたようである。

 しかし。


 今女性陣は、朝香が話そうとしている内容の方が気になった。


 ◆◇


「き、脅迫ですと!?」

「ええ……私の下に、誰かは分かりませんが。」


 その頃。


 ホテルのVIPルーム内にて、長丸から警察が聞き出していた内容は今朝香が妹子たちに話している内容と同じである。


「ううむ、もしかしたら……九衛は探偵……ということは! その筋で何らかの情報を得て、あなたを脅迫していたのかもしれません。」

「そ、そんな……」


 堂本は、ややフライング気味にそんな推理を披露し。

 長丸を、困惑させる。


「……で、その脅迫の内容とは?」

「く……それは……あああ! こ、この島の生贄にされた娘の祟りだ!」

「……え?」


 そして。


 長丸のこの言葉が、今度は堂本ら警察関係者を困惑させた。


 ◆◇


「い、生贄の祟り!?」

「はい……社長はずっと、そのことに怯えていました。」


 またも、奇しくも同じ内容を。


 朝香が女性陣に語っていた。


 何でも、この島には人柱の風習があったという。


 その人柱――ひいては生贄にされかけた娘がかつていた。


 その娘は山羊を身代わりにして逃れた。


 が、それが原因か島は災害に見舞われ続け最終的に娘は見つけられて殺害されるという一幕がありそれ以来慰霊祭が開かれていたという。


「ですけど社長が、その……少々強引な手でこの美川里島を手に入れて以来。その慰霊祭もされなくなってしまって。ですから今回も、その祟りじゃないかと……」

「た、祟りねえ……」


 朝香の話に、実香はやや納得がいった。


 この島を村の人たちと交渉して得られたんですね。――


 ああ、その通り! いやあ、中々難航したが最後には皆分かってくれたよ!――


 村人たちの仲引き裂いてまで奪ったクズが!――


 かつて長丸や元島民たちから聞いていた話から既に、長丸が強引にこの島を買い取ったことを彼女は知っていたからである。


「だ、だけど……今のままじゃ! 大門はやってもいない脅迫の――ううん、だけじゃなくて! 殺人の犯人にされちゃうのよ?」

「そ……そうね! やっぱりそんなことは駄目よ! そうでしょ皆?」

「日出美さん、お嬢様……」


 日出美と妹子の堪りかねてのこの言葉に、他の女性陣は言葉に詰まる。


 無論、大門が殺人など行わないことを彼女たちは知っている。


 しかし――


「でも……私たちは、どうすればいいんでしょうか?」

「! そ、それは……」


 塚井の言葉に、場はやはりまた言葉に詰まってしまう。


 ◆◇


「た、隆子さん!」


 しかし、その日の夜のことだった。


 美川里島の林の中に、隆子の遺体が。


 ◆◇


「大門君のスマートフォンが、その遺体発見現場で起動された後また電源切られたって……くう! このままじゃ、塚井どうしよう……」

「うん……」

「大門さん……」

「大門……」

「九衛門君……」


 隆子の現場の状況に。

 女性陣はまたも、頭を悩ませる。


 と、その時。


「!? な……め、メッセージアプリに大門君から!?」

「え!?」


 何と、実香のスマートフォンに。

 大門からの、メッセージが入っていた。


「えっと……『僕のことは心配しないでください、大丈夫です。それより、皆さんにはやってもらいたいことがあります』……」

「……え?」


 実香が読み上げたその内容に。

 女性陣は、首を傾げる。


 ◆◇


「こ、ここだね……」

「うん……」


 実香と塚井が、メッセージアプリの内容を元に向かったのは。


 島の林の中の、何やら廃屋となった小屋である。


「大門君、いるの?」

「九衛さん! 直接出て来て話をしてください!」


 実香と塚井は、そのまま小屋へ入って行く。


 と、そこへ。


「え!?」

「こ、これは……カバンかな?」


 何やら天井から吊るされた、一つの大型カバンが。


「……降すよ、実香。」

「う、うん! ……せーの! ……って!? こ、これは!?」

「き、きゃああああ!!」


 が、そのカバンを二人して降ろした途端。

 実香と塚井の声が木霊する。


 その鞄の中から、文字通り首を出しているのは。

 殺害された、野間口だった――

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