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悪魔の証明終了〜QED evil〜  作者: 朱坂卿
certification9 paymon 学校七不思議に八つ目はない 
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八つ目の七不思議

「ううむ、一度に二人の犠牲者か……」

「はい、こちらも先ほどの絵島と同じく非常勤教師の奏泰という人です。」


 図画工作室から音楽室へと場所を変え。

 祭と部下は、改めて現場検証にあたっていた。


 時は、現在より一年前の話に遡っている。


魔法乱譚伝(マジックランタンでん)灯王(ランプキング)』の撮影現場で起きた殺人事件の解決とその劇場版鑑賞より数日後。


 HELL&HEAVENを訪れた女性陣だったが、ちょうど大門が外出する時というタイミングの悪い時であり。


 菓子や茶を沢山用意したので、戻って来るまでそれで間を持たせてくれと大門は言い。


 どこかへ行ってしまったのであった。


 その間に女性陣たちの間では、大門と日出美の馴れ初めは何だったのかという話になり。


 彼らの初めての出会いとなった、一年前の出来事について日出美は話していた。


 これは日出美によるその話である。


「念のため、この校舎を見回っていた捜査員が見つけまして。えー、死因は……腹部を刺されたことによる失血死のようです。」

「そうか……」


 部下からの報告に祭は、顔を顰める。

 こうも立て続けに事件が続くことは、犯人に嘲笑われているようでいい気持ちにはならない。


「……だがな、分かったことはあるぞ! この事件の八つ目の七不思議というのはな……この八不思議が元々七つだったのを、八つに増えたことを意味していたんだよ!」

「! お、おお……お見事です祭警部!」


 祭の言葉に、部下は拍手で讃える。


「ははは、そうだ! もっと讃えたまえ!」

「なるほど、この音楽室と廊下まで分断する壁により遮られた図画工作室……元々一つだった音楽室が、分けられて音楽室と図画工作室になったという話ですか?」

「ははは、よく分かったな……って! また君か探偵さん!」


 気をよくしていた祭だが、大門の言葉に驚く。

 いつの間にか、彼の姿が。


「ううん、ここには音楽家たちの肖像画と教卓のような形のキーボードと……黒板の方位が図画工作室と同じで、これまた図画工作室と同じく生徒たちの机や椅子は一つもないんですね……」

「ええ。廃校に当たり、既に机や椅子は運び出されたようです。」

「こ、こら! こちらの話を聞かんか!」


 祭をよそに大門は音楽室を見渡し、笠倉に尋ねる。

 黒板の上にかけられた肖像画たちは、壁に張られた布の上にかけられていた。


「なるほど……」

「こ、こら! 早くこいつらをつまみ出せ!」

「は、はい! ほら、出た出た!」


 祭は痺れを切らし。

 大門や笠倉を、部下に追い出させた。


「おっと! すみません、笠倉さんも邪魔者扱いされちゃいましたね……」

「あ、いえいえ私は!」


 大門の謝罪に笠倉は、手をひらひらと振るが。

 大門はすぐに、考え込んでいた。


「あ、あの九衛さん。先ほどの、七不思議が八つに増えたというのは?」

「ああ、言った通りです。恐らくあの八不思議は、元々この七つだけだったんじゃないかと。」


 笠倉の更なる質問に、大門はあの八不思議の紙を出して見せる。



『1.開かずの教室を開けると、神隠しに遭う


 2.体育館で、霊がサッカーボールを蹴ってばかりいる。


 3.とある階段は上がった時と下がった時の階数が違い、そこからは首が落ちてくる。


 4.夜の印刷室では、下半身或いは上半身が切れた人の姿が互い違いに延々と印刷されていく。


 5.家庭科室では、蛇口から血が流れ続ける。


 6.理科実験室では、チョークが黒板にひとりでに文字を書き続ける。


 7.音楽室で加藤さんが亡くなり、それ以来ピアノが勝手に鳴る』


 八つ目を、手で隠しながら。


「な、なるほど……確かにこの学校全体が、十年前に改装されたという話を聞いたことが。その時にこの音楽室も、先ほどの九衛さんの言葉通りこんな風に分けられたそうです。」

「そうでしたか……」


 笠倉の言葉に、大門はまたも考え込む。

 やはり、この音楽室は二つに分けられたということか。


 そこに伝わる七不思議の一つ諸共に。

 しかしそこで、では何のために分けられたのかという疑問が湧く。


 一体何故――


「音楽室で奏先生が殺されていたって本当ですか?」

「あ、丹沢先生。」

「……ん?」


 すると、その時。

 体育の非常勤教師丹沢がやって来た。


 どうやら、別の教室で取り調べを受けた後らしい。


「あ、はい……警察の方々も、一度に二人も犠牲者がって嘆いていました。」

「そうでしたか……開かずの間で教頭が殺されて、その後は理科実験室、家庭科室と、今夜は図画工作室と音楽室……もう、どうすればいいんでしょう……」

「丹沢先生、どうかお気を確かに!」


 丹沢は言いながら、気が塞いだためかしゃがみ込む。

 そこへ、同じく取り調べを受けていたと思しき持田が駆け寄る。


「はあ、はあ、ごめんありがとう持田先生……」

「いえいえ、私は養護教諭ですから。」


 丹沢の言葉に、持田は胸を張って見せる。


「だ、大丈夫ですか丹沢先生!」

「……ん? あれ、着信……?」


 が、その時。

 大門のスマートフォンに、着信があった。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「キー! やっぱり刑事ってムカつく!」

「お、お落ち着きくださいお嬢様!」


 再び、現在のHELL&HEAVENでは。

 日出美の話が止んだ所で妹子は、話中の祭に怒りをぶつける。


「ま、まあまあ妹子さん!」

「でも日出美ちゃん、その時は病院だったんでしょ? よくそこまで知ってるね……まさか。」

「ふふん美梨愛ちゃん……おーっほっほっ! このミセス九衛を舐めないで頂戴!」

「ええ!? ち、ちょっと日出美さん……」


 美梨愛は日出美にツッコミを入れるが、またも日出美の言葉に他の女性陣も驚く。


 まさか――


「……っていうのはさすがに冗談よ! 私もあの時は、本当に動けなかったから。」

「……冗談かい!」


 しかし次には、女性陣は盛大にズッコケる。

 拍子抜けした気分だ。


「まあここまで知ってるのは、後で大門から聞いたからよ。さて……大門に電話をかけて来た相手って、誰だと思う?」

「え? あたしたちも知っている人?」


 次には日出美は、先ほどの話の終わりで大門に電話をかけて来た人物について皆に聞く。


「いたでしょ? 今から三年前――ま、その音小の事件から数えたら二年前かな。大門と関わりのあった警察関係者さん。」

「……あ!!!!」


 そして日出美のこのヒントに。

 女性陣は揃って、合点した。


 あの人か――


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「おほん! 分かったか皆? この八不思議は、元々この七つだったんだ!」

「おお、さすがです祭警部!」

「あのー、祭警部。」


 再び、一年前。

 先ほどの電話を受けて音楽室に戻った大門は、得意げに部下たちに話す祭に声をかけるが。


「ははは、そうだろう!」

「あのー……」


 大門の声は、祭には届かない。

 と、その時だった。


「こら、祭! その程度のことは九衛君はとっくに分かっているぞ、調子に乗るな!」

「!? は、はい井野先輩! ……って、あれ?」


 どこからともなく、所轄の刑事――いや、この頃は既に警部となっていた井野の声が響き渡る。


 井野は祭の、高校時代の一学年先輩らしい。


 それに対して、祭も一瞬恐縮するが。

 何故いるはずのない井野の声が聞こえたのかと疑問に思い、周りを見渡す。


 やはり、彼の姿は見当たらないが。


「九衛君のスマートフォンだ!」

「あっ! な、何故……い、井野先輩この探偵と……?」


 大門のスマートフォンから声は出ていた。

 大門は自分のスマートフォンを、祭に渡す。


「埼玉県警の奴にも、知り合いがいてな! 探偵が事件に首突っ込んでるって聞いて、もしやと思ったんだが……やはり、彼だったか。」

「えっ、ええそうなんです! 第三者のくせに首を突っ込んで来まして……是非、先輩からも」

「ああ、言ってやらないとなあ! ……祭、お前に!」

「ええ、その通りで……え?」


 祭が愚痴を零しかけたその時。

 井野の言葉に、祭は首を傾げる。


「いいか、この九衛君にでき得る限り協力するんだ。」

「……はい!? で、ですが……」

「いいか! さっきも言ったがこの九衛君は、お前がようやくたどり着いたことにも早期に気づいたんだよ! だから、そんな彼が早く事件解決できるよう、当然のごとくお前も協力するんだ、分かったな!」

「……は、はい……」


 が、井野のあまりの剣幕に。

 祭は有無を言わず、従う他なし。


 ◆◇


「これが、捜査資料ですか……」

「ああ……まったく、先輩の温情に感謝しろよ!?」

「あ、はい。ありがたい限りで……」

「いや、何か上の空だな!」


 その後。

 音楽室で大門は、祭に捜査資料を見せてもらっていた。


「ん? 絵島先生の手に……?」


 その中で大門は、興味深い記述を見つける。

 それは絵島の手にあったという、黒い線だ。


 __ノ,,


「何なんだ、この跡は……?」

「ん? ああ、それは……確かに何だろうな?」


 祭も、首を傾げる。


「……ん? 待てよ……」


 大門は考え込む。

 先ほどの図画工作室で見つかった絵島、そしてこの音楽室で見つかった奏。


 そしてこの跡――


「……まさか。」

「ん? 何だ一体、何が……って、おいどこに行く!?」


 大門は走り出す。

 まさか――


 ◆◇


「え? 図画工作室で私が囚われてた時?」

「ああ、すまない……悪いことを思い出させるようなら答えなくていい質問なんだけれど」


 大門は走りながら。

 病院にいる日出美に、電話をしていた。


 本来あまりいいとは言えないが、事件解決のためには仕方ないと質問していたのだ。


「う、うんあの時は薄暗い中で。うつ伏せに倒れた絵島先生が」

「うん、分かったありがとう! そこまで聞ければ大丈夫。……君をそんな目に遭わせた犯人は、必ず追い詰める。既に承っているから……これが悪魔の証明ではないという悪魔の証明を!」

「! うん、ありがとう大門……」


 大門の言葉に、日出美は涙ぐむ。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「おお、やっぱりかっこいいなあ大門君! さすがあたしの見込んだ男だねえ。」

「な!? だ、だから言ってるでしょ、大門は!」


 またも、現在のHELL&HEAVENでは。

 実香の言葉に、日出美は嫉妬心を剥き出しにする。


「ま、まあでも九衛門君がかっこいいのは事実だし……ねえ、塚井?」

「は、はい!? え、ええそうですね……」


 妹子の言葉に、塚井は少し照れながら同意する。


「お姉ちゃん、照れてるね?」

「な! て、照れてなんか」


 美梨愛の茶化しに、塚井は少しムキになる。


「でも、日出美ちゃん。それで大門さん、事件は解けたの?」

「ふっふーん! あったり前でしょ!」


 美梨愛の言葉に、日出美は得意げに返す。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「うーん、しかしまだ謎は残っているな……図画工作室と音楽室はともかく、あの教頭殺しと……この八不思議はどうなるんだろう。」


 翻って、またも一年前。

 夜道を歩きながら、大門は考え込む。


 第一の教頭殺しと、八不思議の謎。

 この二つは、どう考えるべきなのか――


「お困りのようだね。」

「!? お前は……ダンタリオン。」


 そこへ。

 突如、この頃は大門自身の姿をとっていたダンタリオンが現れる。


 おなじみの、大門の第二人格である。


「……何の用だ?」

「さあて、解かないとねえ謎を! ええっとまず、教頭先生殺しか。あれさあ、教頭先生は名簿を持ってたよね。」

「……ああ。」


 ダンタリオンは大門の言葉には答えず。

 一方的に、話を進める。


「あれは出席番号何番まであったっけ? いや、それとも背の順で書かれているのかな?」

「いや、あれは出席番号で……ん? 出席、番号?」


 が、大門はダンタリオンの言葉にふと考える。

 出席、番号――


「……そうか、まさかあれは!」

「ふふ。……さて、次は八不思議か。」


 大門の言葉に、ダンタリオンは少し満足げに微笑み。

 さらに矢継ぎ早に、次の話に移る。


「1.開かずの教室を開けると、神隠しに遭う――君も開かずの()()を開けたけれど、神隠しに遭ったかな?


 2.体育館で、霊がサッカーボールを蹴ってばかりいる。――蹴る以外に、何があるのかな?


 3.とある階段は上がった時と下がった時の階数が違い、そこからは首が落ちてくる。――どんな仕組みで、階数が変わるのかな?


 4.夜の印刷室では、下半身或いは上半身が切れた人の姿が互い違いに延々と印刷されていく。――印刷室では、まだ事件起こってなかったね。


 5.家庭科室では、蛇口から血が流れ続ける。――家庭科室の蛇口から、血は出てたかな?


 6.理科実験室では、チョークが黒板にひとりでに文字を書き続ける。――こっちのチョークも、ひとりでに動いていたかな?


 7.音楽室で加藤さんが亡くなり、それ以来ピアノが勝手に鳴る――亡くなったのは加藤さんじゃなくて、奏さんだったけれどね。


 8.図画工作室で太郎さんが亡くなり、それ以来彫刻刀で何かを削る音が時折聞こえる。――こちらもなくなったのは太郎さんじゃなくて、絵島さんだったね。


 」


 八不思議についての、話だった。


「何の話だ……うーん?」


 大門はダンタリオンの言葉に対し、一語一語考えてみる。


 開かずの教室、体育館――


「……そうか。そういうことか!」

「ふふ。」


 大門はようやく合点する。

 そうか、そういうことか。


「……これが悪魔の証明ではないという悪魔の証明、終了した!」

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