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悪魔の証明終了〜QED evil〜  作者: 朱坂卿
certification11 asazel 探偵は生贄の羊(スケープゴート)に甘んじない
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移された遺体

「こ、この顔って……」

「ぱ、パーティーにいた野間口さん!?」


 塚井と実香は、カバンから出ている顔を確認し。

 息を呑んでいる。


 大門から連絡を受けて来てみれば、この有様であった。


「ん!? み、実香……こ、これって……!?」

「う、うん! ……な、何か眠く……」


 しかし、その時であった。

 急に彼女たちは、気が遠くなっていく。


 実香も塚井も、知る由もないが。


 これは大門が佐原のロッジで彼を見つけた直後、眠らされた時と同じ状況だった――


 ◆◇


「塚井、塚井!」

「お姉ちゃん、実香ちゃん!」

「塚井さん、実香さん!」

「ん……? あ、み、皆!」


 どのくらい、時間が経ったか。

 塚井と実香は、眠ってしまっていたところを妹子や日出美、美梨愛に起こされる。


 帰って来ない彼女たちを心配して、妹子たちはやって来たのだった。


「ち、ちょっと美梨愛! お嬢様や日出美さんをお願いって言ったでしょ!?」


 妹子や日出美を連れて来た美梨愛を責める塚井だが。


「それは仕方ないじゃない! お姉ちゃんや実香ちゃんが帰って来ないから!」

「! そ、そういえば……そう! 私たち、ここで遺体を見つけて気絶して……って、え!?」


 妹の言葉に、はっとした塚井は先ほど遺体入りカバンがあった辺りを見るが。


 カバンは、忽然と消えていた。


「こ、ここにあったカバンは!?」

「え、か、カバン?」

「わ、私たちが来た時にはそこには何も……ねえ、日出美ちゃん?」

「え、ええ……」


 塚井の言葉に、妹子たちは首を捻るばかりである。

 と、その時。


「え? け、携帯に……め、メールが、九衛さんから!」

「え!? ひ、大門君から!?」


 塚井の携帯に、またメールが来ていた。


 ◆◇


「お願いです、入れてください!」

「だから、まだ開場時間じゃないので無理なんですって!」


 それから数十分後。


 実香や塚井に妹子、日出美、美梨愛はファザーフード牧場の受付にいた。



 驚かせてしまい、申し訳ありません。

 遺体はファザーフード牧場に運び込みました。



 先ほどの、この大門からのメールを受けてのことだった。


 そんな彼女たちを、金川や白木を始めとする従業員たちは阻止している。


「皆さん!」

「! あ、長丸のおじ様に……あ、朝香さん……」


 と、そこへ。

 長丸と朝香も、やって来た。


「僕が呼んだんです……社長! このお客様たちいくら言っても聞いてくれないんですよ! 早く、どうにかしてくれませんか?」

「うむ……まあ、事情は聞いていますよ妹子さんたち。」


 金川がそう言うと、長丸はやや苦み走った顔をしつつ妹子たちを見る。


「……金川君たち、皆さんをお入れしなさい!」

「な!? し、社長……」


 が、長丸はそう指示し。

 金川や白木は、驚く。


「妹子さんたちが、野間口さんの遺体はここにあるとおっしゃっているんだ。恐らく事実だろう。」

「おじ様……」

「し、社長……まったく。変な贔屓しやがって」

「ち、ちょっと金川!」

「何だって?」

「い、いえ何も……どうぞ。」


 社長の言葉とあらば、聞かぬ訳にも行かず。

 金川はそのまま、妹子たちを通す。


 ◆◇


「塚井! その、大門君は――いいえ、多分そう見せかけた別の誰か――は! ファザーフード牧場のどこに遺体を置いたって?」

「は、はいお嬢様! め、メールにあったのは……も、物置小屋に置いたと。」

「! どこ、その物置小屋?」

「こっちだよ、妹ちゃんたち!」


 そのまま、牧場内に入った塚井たちは走り出し。

 その物置小屋に向かう。


「あ、あそこね!」

「ん、扉開いてる!」

「九衛さ……ん!? きゃああ! な、中にバラバラ遺体が!」


 しかし、チェーンがかけられ中途半端に開いた扉の隙間からはバラバラにされた手足が見えた。


「ど、どうしました!?」

「あ、お、おじ様! い、遺体がある小屋がここなんですけど……ち、チェーンがかかっていて」

「はい、妹子さん! おい金川君に白木君、早く工具でも斧でも何でもいいからチェーンを切れるものを!」

「は、はい!!」


 そこへ、長丸や朝香以下従業員たちも合流し。

 長丸は自分も動きつつ、朝香や金川たちに指示を出す。


 そうして。


「社長、これを!」

「皆さん、離れてください!」


 金川が持って来た斧により。

 鎖は、瞬く間に斬られた。


「お嬢様たちは、外にいてください!」

「む!? これは……野間口、さん……」

「ま、間違いないよ塚井……これはさっき見た顔……」

「う、うん……」


 そうして、小屋に踏み込んだ一同は。

 手足や首、胴とバラバラにされた野間口の遺体を発見したのだった――


 ◆◇


「死亡推定時刻は、死斑や死後硬直の具合からして昨夜の21:00頃……」


 その後。

 島にまだ止まっていた堂島以下警察は、小屋の現場検証を始めた。


「ふむ……それで。あなたたちは九衛大門が運ぶ途中の遺体を見せられたと?」

「あ、はい……」

「で、でも! 大門君の名前でそういう内容のメールが来たってだけです! 彼が本当に出したのかまでは」


 そうして堂島は、塚井と実香にも容赦なく質問する。

 妹子たちは今度こそ、美梨愛によりホテルに戻らされていた。


「いいや、恐らく彼だろうな! しかも彼は、その後でこの小屋に遺体を置いたことまでメールで指示している! これはもう、決まりだろう……」

「い、いいえだから!」

「彼はそんな」

「今回九衛大門は、別の場所で野間口氏を殺害後! 意図は不明ながらも遺体をファザーフード牧場に運搬している様子を親しい女性二人に見せつけた後でまんまとこの小屋に運び込んだと思われる! ……皆、本腰を入れて佐原記者と共に姿を消した九衛大門を探せ! 狡猾にも、またも我々を出し抜いた連続殺人犯だ! 今度こそ抜かるな!」

「はい!」


 堂島は、塚井や実香の弁解も聞かず。

 大門をただただ、犯罪者と見做していた。


 ◆◇


「キー! 何よ何よ、つくづく刑事ってえ!」

「うん、本当だよ妹子ちゃん! あたしたちの言葉なんてまるで聞いちゃくれなかったわ!」

「まったく……人の旦那何だと思ってくれてんのよ!」


 ホテルの部屋にて。

 妹子たちは塚井たちの話に、すっかりお冠である。


「まあまあお嬢様。……これについては責めきれない部分もあると思います。この状況じゃ……九衛さんが疑われますから。」

「な……ちょっと、塚井!」


 が、塚井はそんな言葉を発した。


「ちょっと塚井さん! 塚井さんまで、大門がそんなことすると思ってんの!?」

「い、いえ違います日出美さん! ……今の状況で、九衛さんの無実を証明するのは難しいって言いたいだけです……」

「! そ、それは……」


 塚井のその言葉に、一同は黙り込む。

 確かに、今の状況は大門が無実ではないと物語っていた。


「……防犯カメラ。」

「……え?」

「防犯カメラだよ、お姉ちゃん! あのファザーフード牧場も、入り口ぐらいには設置してあったよね?」


 しかし、そこで美梨愛はそう声を上げた。


「そ、そうよ塚井! もしかしたら、そこに九衛門君の無実を証明できるものが映っているかも!」

「そ、そうと決まれば妹子さん! 早く長丸社長に!」


 そこに希望を見出した一同は、俄然活気付く。


「うん、さあ行こうよ塚井!」

「うん、実香! (九衛さん……違いますよね?)」


 実香と塚井も、活気付くが。

 塚井は、大門への憂いを抱えていた――


 ◆◇


「……ん? ここは……な!?」


 そうして、その思いが通じたのか。

 大門は、目覚めた。


「さ……佐原さん!?」


 どこかの古びた部屋で。

 佐原の、遺体と共に。


「やれやれ、君は()()人を殺したのかい?」

「ち、違う! ぼ、僕じゃ」

「いいや……君さ! 私の器たる君には……殺人者の資格がある!」


 そんな大門の精神に追い討ちをかけるように。

 ダンタリオンが姿を現す。


「そ、それは」

「ああ、君には資格があるんだよ……そうだ! この際だから教えてあげようか? 私が何故、いつも君より先に事件を解決していたのか。」

「! な……い、いきなり何の話さ?」


 ダンタリオンは唐突に、そんなことを言い出し。

 大門は困惑している。


「まあまあ、ひとまず聞きなよ……いや、()()()()!」

「な!? ……ん!? こ、これは!」


 しかしダンタリオンが、次に大門に見せたのは。

 遺体が多く横たわる血の海の中で、同じく血塗れになっている彼の姿だった――

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