【みんな同じクラス?】
列車が魔術路の路線を走り出して数分。
天空を走る姿に慣れたティオは改めてタケルと共に星達姉妹と魔術学校について話をしていた。
「この車両に乗ってる子は、みんなわたし達と同じ新入生になるんだよね」
そっとコンパートメントから通路を覗きこみながら、ティオが三人に話しかける。
「確かクラスって2つあるんだよな。太陽のクラス(ゴールデンサン)と、月のクラス(シルバームーン)だっけ」
「学校に到着した時には既に決まってるって話だヨ。どっちのクラスになるのかな。できたら月は星と同じクラスがいいヨ……」
すっと月が星の袖を掴む。
双子といっても、妹の位置にいる月のほうが少し甘えん坊らしい。
「心配しなくても、あなた達はきっと同じクラスよ」
「えっ?」
気がつくと、コンパートメントの入り口に銀髪の少女が立っていた。良くみると、ティオ達が列車前に並んでいた時に、先に二人の前に並んでいた少女だった。
「誰おまえ」
「レディに名前を問うなら、まず貴方が名乗ってから問う方が紳士的よ?」
「し、紳士的って……なんだよ、えらそーに」
銀髪の少女は腕を組んでクスリと微笑んだ。
「わたくしはレイチェル・サンダーボルトと申します。わたくしを知らなくても、わたくしの家、サンダーボルト家の名はご存知なのでは?」
「サンダーボルト家って……」
四人は思わず、列車を眺めた。
サンダーボルト家とは、火水地風の四大魔術の術式の礎を作り出した偉大なる魔術師の家系のひとつで、風のウィンダム家と呼ばれている。
「この魔術路はわが一族が作り出した術式を応用した技ですのよ」
「そうなの!? すごいね!」
「ふふ、当たり前よ」
ティオの素直な感想に気を良くしたレイチェルは、フフンと胸を張った。
「……。おまえがすげぇ家のお嬢様なのは解ったけど、でも、どうして星達が同じクラスになるってわかるんだ? クラスは着いてからじゃないとわかんねーんだろ?」
「そうね。でも、既に決まっているのも同然なのよ。このコンパートメントにいる時点でね」
「えっ?」
レイチェルの言葉に、ティオは思わず部屋を見渡した。しかし、特別な何かがあるのかどうか、わからない。
「ねえレイチェル、一体どういうことなの? なにかあるのか、わたしには全然見つけられないよ」
「ああ、装飾の類いがあるわけではないわ。この通路を隔てたコンパートメントが重要なのよ」
「どういう事ネ?」
「つまり、チケットを貰った時からクラスはもう決まってたってこと。車両に乗る前に、先生から部屋を誘導されたでしょう? あれがもう、クラス分けされた証拠なの」
「そうなの?」
「ええ。どちらのクラスかまではわからないのだけどね。というか、割と有名な噂だから、知らない方が稀なんだけど」
そう言って、レイチェルはにこりと微笑んだ。
「もしクラスが違うならば、先生が自然と貴女達を引き離していたはずよ。多少気を使うかもしれないけど、少なくともコンパートメントは離すはず。だから、クラスが同じなのは確定よ」
半信半疑だった双子も、さすがに現実味を感じたのか、お互いの顔を見て微笑みあった。
「ちなみに、わたくしはこのコンパートメントの前の部屋にいるの。つまり、おそらくわたくしも貴女達とクラスメイトになるってこと」
「わぁ、そうなんだ!」
「どうぞ、よろしく頼むわね」
「うん!」
レイチェルの挨拶にタケルは難しい顔をしたものの、名家と名高い家柄の人間と知り合いになるなど、孤児院出身のティオにとってはまずあり得ないことで、彼女は素直に差し出された手を握った。
「つまり、学校でもオレらは争うってことだよな、レイチェル」
レイチェル達の前に、三人の少年少女が近づいて来る。
彼らの言葉に、レイチェルはすっと目を細めた。