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ティオの魔術師譚  作者: ぐれお
第一章【魔術学校へようこそ】
6/8

【飛び立つ魔道列車】

先に個室に座っていた少女達は、「(シン)」「(ユエ)」という名前の双子の姉妹だった。

顔は瓜二つだが、淡い青紫のおだんご頭が姉の星、淡い桃色のおだんご頭が妹の月ということだった。


「双子って初めて見たよ、オレ。まじで顔が同じなんだな!」


初めて見た双子が新鮮かのか、タケルのテンションが高めになっている。

もちろんティオも同じだった。


「そりゃ星達は一卵性双生児。当然ネ!」

「でも髪色が違うから、名前さえ覚えてくれたら間違えにくいと思うヨ」


ねー?とお互い顔を見合わせて笑う姉妹は、どうやら仲も良いらしい。


「でも、シン達って、ちょっと独特のイントネーションだね? アクセントが少し違うというか」

「ユエ達、パパの仕事の関係で入学と同時に引っ越したヨ。元々はチェナっていう国に住んでたヨ」

「チェナ?」

「東大陸にある国ネ。温かい食べ物が美味しいネ」

「へぇー! 食いモンが美味いってのは気になるなぁ」


他愛もない雑談で盛り上がっていたとき、ガタン!と個室が大きく揺れる。そして同時にフオンと大きな汽笛が響き始めた。

列車が動き出したのだ。


「ついに魔道列車の出発ヨ、星!」

「さっそく線路を眺めるネ!」


双子が意気揚々と窓を開ける。


「おいおい、地下線って空気悪く汚いんだろ? 開けたら空気悪くなるじゃん」

「みんなそんなの気にしてないヨ。ほら、ティオもタケルも見る!」

「観るって、なにを?」


月に呼ばれてティオ達も彼女らと共に窓から顔を出した。

すると、確かに他の個室にいた子供達も窓ガラスを開けて顔を除かせている。

これから何が見られることを知っているようで、わからないでいるのは自分かタケルくらいだった。


「ねえ、一体なにが見られるの?」

「魔術路ネ」

「魔術路って?」

「何も知らないなんて! 全くどこの田舎人なのか、あきれるネ」

「田舎人言うなよ」


星はため息をついて、窓から路線を指差した。


「魔術学校が孤島にあるのは知ってるネ? でも、普通に線路を走ったんじゃ、学校がある島へは行けないネ」

「学校へは特別な線路を走るヨ。術式で作られた、特別な路。魔術でできた路。それが魔術路」

「魔術でできた、路?」


その瞬間だった。

キラキラと線路が青白く輝き始めたのだ。


「うわっ、なんだなんだ!?」

「下を見るヨ、はやく!」


四人は窓から身を乗り出して列車の下を覗く。

そこには元ある線路を覆うように、青白く輝く新しい線路ができていた。

ところどころに、何か模様のようなものが描かれている。


「これ、もしかして術式の紋様?」

「そうヨ。魔術学校に向かう為の特別な魔術ヨ!」

「その効果は知ってても楽しみ。知らないならもっと楽しめるネ!」


興奮しているのか、姉妹の声はうわずっている。それだけでなく、これからどうなるのか知っている子供達も、ワクワクした目で魔術路を眺めていた。


(一体なにがはじまるのかな?)


全体の雰囲気に飲まれ、ドキドキしながらティオも線路を眺める。

青白く輝いた魔術路の光がいっそう強くなったその時、ふわりと足元が浮くような感覚が体に走った。

わっと歓声が社内に響き渡る。


「これって……浮いてるの!」


術式で作られた魔術路が線路から浮きはじめ、同時に乗っている列車もまた、そのまま中に浮いているのだ。


「もしかして、このままこの浮いた魔術路をはしんのか!?」

「もちろんネ! だから楽しめると言ったヨ!」


弾んだ歓声が響き渡る中、ホームに居る先生達が叫ぶ。


「新入生! 浮かれる気持ちはわかるが、ちゃんと体を支えておくんだぞ! 毎年何人かは調子に乗って落ちそうになる奴が出るんだ! はじめから迷惑をかけるんじゃないぞ!」


先生の言葉とほぼ同時に、ガタンと車両が揺れて動き始めた。そしてゆっくりと加速されて、ついには走り出した。


「地下線の途中で外に出る。この時が凄く綺麗だってママに聞いてるヨ!」


ユエの言葉通り、魔術路は途中でぐっと上昇する路線を取っていて、やがて奥から地上への光が近づいていく。


「外に出るぞ!」

「っ!」


地下線を出て、突然目に入った太陽の光に皆が目を瞑る。

そしてゆっくりと目を開いてみると……


「わあ……!!!」


ティオ達の目に飛び込んできたのは、空に浮いた線路の上を走る列車と、そして一面に広がる海だった。


「すげぇ……! まじで浮いてるよ!」

「見るネ、月! 鳥と一緒に飛んでるネ!」


他の車両からもたくさんの感銘の叫び声が聞こえてくる。


(すごい……わたしも魔術を覚えたら、列車を浮かせるくらいの術式が作れるかもしれないんだ……!)


普段見ることのない光景と、その状況を作り出す魔術という存在に、ティオは改めて魔術へ気持ちを馳せるのだった。


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