episode koharu secondchapter3
『お母さん、今日はどこ行くの?』
『ふふ、今日は──』
いつもの休日。今日はどこに連れて行ってくれるんだろう。前は遊園地、その前は水族園、じゃあ次は動物園かな。
そう心を踊らせる私。……だけど、何か違う。幸せな時間なのに、違和感がある。
だってお母さんは、仕事があって遊びに行く時間なんてあるわけがないのだ。
なら、目の前にあるこれはなんだろ。夢? それとも私の──。
「あ……。ここは……」
目線の先には、真っ白な天井。そして、私を包む柔らかな白い布団。
確か、私倒れたはずだよね? でも、偶然家にきてくれてたあのおじさんが助けてくれた……ような気が。
「あいたた……」
起き上がろうと体に力を入れると、頭に痛みが走る。少し寝からか、体のダルさはましになったなように気がする。
「湖春っ!?」
「お、お母さん?」
横を見ると、心配した表情の母が椅子に座り、控えめな声で私に声をかけた。
「大丈夫?どこか痛くない?」
「ううん、大丈夫」
本当は頭が痛いけど、母に心配をかけたくない。
手を包む母の温もりは、何よりも安心する。
でも、なんでお母さんがいるんだろ。仕事は、大丈夫かな?
「お母さん、仕事は?」
「っ! ……ごめん、ごめんね」
「どうして、泣くの?」
「ごめんね……ごめんね……」
涙を流す母を、あの日ぶりに見た。私はまた、悪いことをしてしまったのだろうか。
「失礼する」
「おじさん?」
「うむ。大丈夫かね、湖春ちゃん」
と、カーテンを開け私と母がいる空間に入ってきた
のは、道に迷っていたあのおじさん。今日も綺麗なスーツに身を包んでいる。
どうやら、このおじさんが救急車と母を呼んでくれたらしい。それに、治療費もすでに払ってくれているみたいだった。
「あの日のお礼だ」と言って、母からもお金を受け取らなかったみたいだ。
「病み上がりのところすまないが、少し頼みごとがあるんだ。これでも私は忙しくてね」
「はい……」
すると、おじさんは無表情のまま淡々とこう告げる。
「坂瀬河湖春。私についてきてほしい」
それは、力を持った強者の迫力。断られることはないだろうという絶対の自信。
決して、子供に向けるものではないと私は思った。この人……怖い。表情を読める私でも、この人の考えることがわからない。いや、私がそこまで到達していないのか。そのステージに、私はいない。
「君の母にも話はつけてある。少し離れることにはなるが、悪いようにはしない」
母を見ると、優しい表情で私を見つめていた。
「あとは君の答えを待つだけだ。どうする?ついてきてくれるかな?」
私が、ついていけば母に辛い思いをさせなくて済むんだ。なら、答えは一つしかない。
「わかり……、わかり、ました」
なんで一瞬躊躇したんだろ。なんで無意識に母の手を握りかえしていたんだろ。なんで涙が流れてるんだろ。
それは、私が一番嫌っていた『嘘』をついていたからだった。
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