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episode koharu firstchapter2

「えへへ……」


 ある日の朝。小夏ちゃんを連れて行った子たちが教室に帰って来たのと同時に私は、トイレへと向かった。

 するとそこにはびしょ濡れの小夏ちゃんが地べたに座り込んでいた。私に気づいた彼女は、力なく笑う。

 

「寒いね……」

「っ!? 早く立って、着替えはある?」

「うん、体操服がある」

「も、持ってくるから、着替えたら保健室に行こう」

「ありがとう、湖春ちゃん」


 私はずっと彼女のことを、友達の多い子だと思っていた。いつも誰かといて、楽しそうに話しをしている、そんな子だと。

 でも、いつしか周りの子はみんな彼女をいじめるようになっていた。理由は詳しく知らないけれど、何かのトラブルがあったらしい。

 

「坂瀬河さん、体操服なんか持ってどこいくの?」


 教室に戻って、小夏ちゃんの体操服を手に持つとさっきの女子数人グループが私には話しかけてくる。

 その表情は、自分たちがやっていることを一ミリも悪いと思っていない、嘲笑にまみれていた。

 

「何があったか知らないけど、楽しい?」

「な、何が?」

「自覚してないんだ。ごめんね難しい質問して」

「っ!」


 どうせ、私がここを出ていくと悪口でも言うのだろう。そう、顔に書いてある。わかりやすい人たちだ。

 

「先生に言うから」


 私はそう吐き捨て、体操服を小夏ちゃんに届けに行った。


 昼休み、私は保健室に足を運んだ。中に入ると、体操服姿のまま赤いランドセルを背負う小夏ちゃんと、スーツ姿の男の人が、白衣を身にまとった先生と話しをしていた。どうやら、今から帰るみたいだ。

 午前中、彼女はずっと保健室で寝ていて、この時間になってやっと親の迎えがきたらしい。


「あ、湖春ちゃん」

「帰るの?」

「うん……」

「そっか」


 暗い表情の小夏ちゃん。悲しい、悔しい、辛い、そんな感情が見て取れる。

 けれど彼女は精一杯の笑顔を作ると私に「ありがとう」と言い、父に手を引かれ帰っていった。

 

 ありがとう……。私にそんな言葉を受け取る資格はあるのだろうか。

 表面だけを見て彼女の存在を勝手に決めつけ、邪魔だとさえ思っていたのに。

 一度は、彼女のSOSを無視して平然としていたのに。

 もっと早く手をとっていればこうはならなかったはずなのに。


「あの、先生」

「ん? 何、坂瀬河さん」

「実は──」


 今の私には、現状をどうにかする力はない。だから、大人に頼るしかないと思った。

 でも、この選択が間違いだと気付いた時にはもう、遅かったのだ。

読んでいただきありがとうございます(^。^)

投稿は毎朝8時にしてますので、続きが気になる方はブックマークをお願いします!


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