達成
………………迷子です。うん、私が悪いの。何も言わなくていいよ。
もうすぐ帰らないといけないのに、最後の時間をこんな風に使う羽目になるとは思ってもいなかった。
「なんで、こうなるんだろ」
いつも大事な時に……。このままだと、こころと約束したことが何一つできないまま帰ることになっちゃうよ。
私、洲咲くるみは人通りの多い場所から少し離れ、脇道に立っていた。
今から、舞と琴葉が迎えにきてくれるはず。
『迷子!? 今どこ? 写真撮って送って、そこを動かないで! 今から行くから』
送られてきたメッセージを見ると、その必死さが伝わってくる。ほんと、申し訳ない。
舞のメッセージ画面の下には、芦屋の文字。急にやりとりが途絶えた相手の名前だ。
無視……とかじゃないよね……。めんどくさいなとか思って、無視してるとかだったら私泣きたいよ。
「お、可愛い子発見」
「え?」
「ねぇ、君どこからきたの?」
「わ、私ですか……?」
「そうそう、君しかいないじゃん」
スマホから目を離し顔を上げると、私の周りを取り囲むように、見知らぬ制服を着た三人の男が立っていた。全員、髪を染めて、ピアスをして、第二ボタンまで開けている。不良だ。
「ねぇ、俺たち暇なんだわ。ちょっと付き合ってよ」
「え、えーと、私、人を待ってるので……」
「そんなん、いいからさ。早く」
「痛っ」
するとその中の一人が私の手を掴んで、引っ張ってきた。持っていた荷物が落ち、大きな音がする。
「ほら、暴れるから」
「そっちが急に……」
「あ?」
「っ!」
「痛い思いしたくなかったら、大人しくついてこいよ」
痛い、怖い。私の力じゃこの人の手を振りほどくことができない。舞に動くなって言われたのに、ここにいなかったら合流できないかもしれない。そうなったら、私、帰れないのかな?
た、助けて!舞、琴葉!芦屋くん──。
「はぁ、はぁ、ま、待った? 洲咲さん」
そう思った瞬間、私の目の前に息を切らしながら、可愛い携帯を握りしめた芦屋くんが現れた。
「あ、芦屋……くん」
「誰だお前?」
「お、俺は……」
「わ、私のか、彼氏です!!」
「え!?」
急に大声を出した私に驚いたのか、手を掴んでいた力が一瞬緩んだ。その隙に、手をほどき芦屋くんの側に駆け寄る。
ご、ごめん芦屋くん! 私これしか、この場面を切り抜ける方法を知らないの! 参考書は少女漫画だから、信頼性は100パーセント!
「ちっ、彼氏持ちかよ」
「でもちょっと、嘘っぽくね?」
や、やばい。バレそう。確かに私と芦屋くんじゃ、カップルに見えないかもだけど……。ここは、なんとか切り抜けないと!
私は思い切って、芦屋くんの手を握る。すると、芦屋くんの手の暖かさと、小刻みに震えているのがわかった。
「すざ──」
「歩くん! 私のことはくるみって呼んでって言ったでしょ!!」
お願い芦屋くん、ここは私に合わせて!目で訴えかけると、芦屋くんはこくんと首を縦に降る。
「くるみ……早く行こっか」
「そ、そうだね! だから、ごめんなさい!」
そして私たち二人は、手を繋いだまま大通りに出た。
最後の最後に、ありがとう神様。
読んでいただきありがとうございます(^。^)
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