実は天……才?
ある日の授業中。
「えーと、じゃあこの問題を……珍しく起きてる藍那に解いてもらおうかな」
数学の教師が、教室を見渡すと俺の隣の席の藍那さんを指名した。
授業中、高確率で寝ている藍那さん。今日はなぜか起きている。なぜかってのもおかしいけど。
まぁでも、起きていただけで聞いていないみたいだ。教科書もノートも机の上に置いてあるだけで開いていない。
この子、学校に何しにきてるんだろう……。
「じゃあ、前に来て解いて──」
「4」
「当てずっぽうに言っても──」
「4」
「正解……」
えっ、合ってんの? 結構ややこしい計算が必要な問題だと思うんだけど……。たまたまだよな?
「こっちの問題もわかるか?」
先生も俺と同じことを思ったのか、次の問題も藍那さんに聞いている。
「0.2」
問題を見た瞬間に即答する藍那さん。先生の反応からして、どうやらこっちも正解のようだ。
俺もクラスのみんなも、何が起きてるのか理解するのに少し時間がかかった。
「どうやって解いたの?」
「普通に」
授業が終わり、昼休みに突入した直後、俺は藍那さんにさっきのことを聞いてみた。
普通にって言われてもな……。さすがに、二問続けてあんなの見せられると、普通じゃない気がする。
もしかして藍那さんって天才?
「それより、弁当」
「あ、うん……自分のは?」
「食べた」
今日の朝、学校着いたら食べてたね。うん、知ってる、聞いてみただけ。
人の弁当を美味しそうに食べる姿をみて、垣間見えた天才の片鱗は、頭の中からすっぽりと抜け落ちていた。
「これ、嫌い」
「子供か!」
ピーマンも残さず食べよう。
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