何やってるんですか3
「ぬふふ、本場のメイドさんとツーショット」
最早、どんな感情なのかわからない平福さんがよだれを垂らしながら、チェキ撮影の場所へと移動していく。彼女の趣味はいまだに謎だ。
席に座る藍那さんを除いた三人は、平福さんを見送りながら苦笑いを浮かべていた。
「ひ、平福さんっていつもあんな感じなの?」
「いつもは普通なんだけど……好きなことになるとキャラが変わるというか」
苦笑いのまま俺の質問に答える洲咲さん。彼女もあの地獄の時間の犠牲者だ。
「ま、メリハリがついてるからね琴葉は」
残りのドリンクを飲み干した湊川さんが、そう続けた。
なんて羨ましい関係なんだろう。趣味さえも理解して、許容して、付き合ってあげる。
「度がすぎる時もあるけど」
それでいて悪いところは悪いとちゃんと言える関係。これが友達か。
「はいはい、次はあっしーだよ。ご指名のはるこたんが待ってたよ〜」
撮影が終わった平福さんが席に帰ってきた。そしてそのまま、手に持っている写真をみんなに見せびらかす。
それを軽くあしらう湊川さんと、ちゃんと感想を言う洲咲さん、首を傾げ無表情でそれを見つめる藍那さん。
なんというか、幸せな気分になるなぁ。
「じゃあ行ってきます」
そんな彼女たちに見送られながら俺は、撮影室へ続くカーテンをくぐった。
あまり広くない部屋には、カメラ一台と色々な装飾品が置かれていた。猫の耳とか、うさぎの耳といったアクセサリー? なのだろうか。結構種類はある。
そして、メイド服を身につけた坂瀬河さん。太ももくらいまでのソックスを履き、普段は隠れて見えない長い、すらっとした足があらわになっている。
「ふふ。芦屋様、これどうですか?」
「似合ってますね、とっても」
「ありがとうございます。まぁ、こんな格好をしたメイドなんて絶対にいないんですけどね」
くるりんと一回転する坂瀬河さん。スカートがなびくと、下着が見えそうになる。わざとやってるなこの人!
「それで、その、なんでここにいるんですか?」
「あ、やっぱり気になりますか?」
「そりゃ……」
「ざっくり説明しますと、私も楽しみたいなと思いまして。もちろん、お嬢様の見守りも兼ねてですよ」
「俺たちがここにくるってよくわかりましたね」
「まぁ、洲咲様のお友達がお話ししていましたから」
「盗聴とかしてないですよね!?」
「……当たり前です」
「なんですかその間……」
昨日からって言ってたから、初日から東京にきてたのか……。もしかして、藍那さんと出かけた日の時みたいにどっかから見てたとか!? 怖いな!
「冗談ですよ」と言いながら、カメラをセットし終えた坂瀬河さんが俺の隣にやってくる。
「あ、ご指名ありがとうございます。素直に嬉しいですよ」
「は、はぁ……」
「選んだ理由とか聞いてもよろしいですか?」
「えっ」
実はこの写真撮影、撮影前にどのメイドさんと一緒に撮るか選べるのだが、見せてもらったメイドさんたちの写真の中で別格に可愛かったのが坂瀬河さんだった。
も、もちろん、それだけじゃなくて、色々聞きたかったから選んだんだけどね!
「知り合いの方が緊張しないかなと……」
「そういうことにしておきましょう」
そうでした、この人に嘘は通じないんだった。
「お嬢様たちを待たせるのも悪いですし、早く撮りましょう」
「わ、わかりました」
と、坂瀬河さんがいきなり自分の腕と俺の腕をからませるように密着してきた。
思わず横向いて「えっ」と声を漏らした瞬間、カメラのシャッター音が部屋に鳴り響く。
「ふふ、どうでしたか? いつもはこんなことしないので、今日だけ特別なお返しですよ?」
「っ!」
確かに、普段は絶対に見れない坂瀬河湖春の姿がそこにはあった。
「大事にしてくださいね?」
もらった写真に写る彼女もまた、見たことのない素敵な笑顔をしていた。
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