実は人見知り
「……」
「な、何?」
授業終わりの小休憩、トイレに向かう途中で制服を引っ張られた。
まぁ、犯人はわかりきっている。
「うるさい……」
「何が……」
急に怒られたのか? と思ったけどどうやら違うみたい。けど、この表情は怒っている時のやつだ。
藍那さんが指差すのは教室の方、そのドアの前には数人の女子生徒がいて、こっちの様子をチラチラと伺っていた。
「あぁ」
藍那さんのお世話係になって気づいたことその二。
割と、いや、結構重度な人見知り。
転校生でしかも可愛い、そんな藍那さんと仲良くなりたいと思うのは、当たり前と言っても過言じゃない。
俺の隣の席なので、何人かのクラスメイトが藍那さんに話しかけているのは見たことがある。緊張かそれともわざとなのか、藍那さんは何を聞かれても無表情で突き通していた。
で、今回はその我慢の限界を迎え、俺のとこにやってきたっぽい。
いやー、正直、俺には何もできないな「藍那さん迷惑がってるからやめて」なんて言えるわけがない。どんだけ独占欲強いやつなんだよ! とか思われる。
それに、藍那さんには友達作って欲しいし。これもお世話係の仕事……ってことか?
「話してみればいいじゃん」
「いらない」
「いらないって……」
掴んでいる制服にさらに力が加わる。どうやら藍那さんの意志は固いようだ。まぁ、日が経てば藍那さんにも友達ができるだろう。
「はぁ、わかった。後で俺が言っとくから、教室に戻ってて」
「嫌、一緒に」
「俺、トイレに行きたいんだけど……」
「一緒に?」
いや、違うから! ほら、周りに変な目で見られた!
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