一人語り
どうも、芦屋歩です。先に言っておくが、今回の話、俺以外の登場人物は出てこない。
まぁまぁ、話を聞いて欲しい。
今、俺たちの学年は修学旅行の真っ最中だ。誰もが楽しみにしていた学校のイベント。もちろん俺も、他に負けないくらい楽しみにしていた。
その修学旅行の一日目も終盤に差し掛かり、現在俺は大きな浴槽に浸かっている。入浴中だ。
湯気が立ち込め、ちょっと先は見えないほどに濃い。メガネをかけていたら曇っていたに違いない。
……今のはどうでもいいな。
それにしても、こんなに大きな浴槽に浸かっていると落ち着かない部分がある。家のお風呂は狭いと思っていたけど、あれくらいが丁度いいのかもしれない。
って、風呂の広さとかどうでもいいから! 一回お湯で顔を洗おう。……よし。
今日は午前、午後と楽しい時間を過ごせた。他でもない、班員である女子四人のおかげだ。最初は不安の方が大きかったけど、なんだかんだでまとまってるような気がする。
湊川さんは、コミュ力があって面倒見のいい人だ。ズッキーニランド(夢の国)にいた時、藍那さんの手を引いてくれていたのは湊川さんだった。
平福さんは、明るくてムードメーカー的な人だ。俺にはできない事を簡単にやってみせる。ちょっと、寒気を覚える時もあるけど。
洲咲さんは、しっかりしているように見えて、抜けてるとこもある。でも、それを補ってくれる友達がいて、それに甘えないようにするという自身の真面目さと、努力を兼ね備えている人だ。
そして藍那さん。彼女は相変わらずの無表情とマイペース。でも、いつもとは全然違う雰囲気を感じた。バスに乗っている時も、新幹線の時も、昼食の時も、ズッキーニランドにいた時も、常にワクワクしていたように思える。坂瀬河さん以外だと、この変化は俺にしかわからないんじゃないだろうか。
これなら、藍那さんとお別れする前にきっと、多くのものを与えられるはずだ。
まぁ、何が言いたいのかというと、普段の学校生活だけだと見えないところがよく見えるなー、ということだ。それも修学旅行の楽しみの一つなのかも。
しかしだ……、それの反面、普段よりもくっきり目に見えてしまうものもあったりしたりして。
俺って……友達いないんだなぁ……。
今入浴中なんですけど、見事に俺の周りだけ誰もいないんですよ。他のクラスメイトたちは、楽しそうにはしゃいだり、談笑したり……。
わかってた、わかってたんですけども! こう、はっきり突きつけられるとダメージは大きい。
洲咲さんを見習って俺も人見知りを直す努力しないとな……。もう、手遅れ感半端ないけど。
「おい! 今、露天風呂いったら女子たちの声が聞こえるらしいぞ!」
「まじか!? 行くしかねぇ!」
ついに俺以外は皆、外の風呂に……。
「そろそろ出よう……」
これ以上浸かってたらのぼせる。早く部屋に戻って、明日に備え寝よう。
こんな時、京介が同じクラスだったらなとつくづく思う。
風呂上がり、コーヒー牛乳を飲み、人知れず部屋に戻った歩は明日の予定を確認した後、誰よりも早く就寝した。
歩の修学旅行一日目は、こうして終わったのだった。
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