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実は食いしん坊
くいくいと後ろから俺の制服を引っ張るのは、無表情な美少女、藍那桃花さん。
いつもの帰り道、立ち止まった藍那さんの目線の先にはクレープ屋さんがあった。
「お腹空いた」
「お昼、人の弁当横取りしたよね……?」
お世話係である俺の日課となった藍那さんの送り迎え。部活もやってなければ委員会すら所属していない俺は、結構適役だったのではないかと思い始めていた。
そして、藍那さんと時間を過ごしていく中でわかったことがいくつかある。一つ目がこれだ。
「おいしい」
「……」
少し幸せそうにクレープを頬張る藍那さん。
どんだけ食べるんだろなんて思ったけど、食べる姿が小動物みたいに可愛くていっぱい食べろなんて思いに変わっているので多分病気。
とにかく食べる。藍那さんのことでまずわかったのはこれ。
「おいしかった。なんて言うの?」
「クレープだよ、知らなかった?」
「うん。また食べたい」
「また今度ね」
「明日?」
「早いな……」
でも、お願いされたらきっと買ってしまうんだろうなぁ。
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