シスターズ報告会
私、洲咲くるみがこれほどまでに、家に帰るのが嫌だったことはない。
目の前にはドア。それを開ければきっと、母の「おかえり〜」という、世界で最も安心する声が聞こえてくるだろう。
でも、でも、今は開けたくないの! だって、その後に待ってるのが……!
「あれ、お姉ちゃん。ドアの前で何やってるの?」
「っ!?こ、こころ……。今帰り?」
「うん。練習終わりにミーティングあって、ちょっと長引いたんだ」
「そ、そう」
私の横をすり抜け、先に家に入るこころ。それに私も続いた。
「おかえり〜って、二人一緒なんて珍しい」
「さっき家の前で会ったんだ〜、それより今日のご飯は何? もう、お腹ペコペコだよぉ」
「もうすぐできるから、先に着替えてきなさい。くるみも」
「うん」
「あれ? 元気ないわね?」
「そ、そんなことないよ……」
元気がないのではない。現在進行系ですり減っているのだ。
「さぁ、行こっかお姉ちゃん」
その天使か悪魔かわからない謎の微笑みに、私は背筋を凍らせたのであった。
思うように箸が進まなかった晩御飯を終え、私とこころは部屋に戻った。
途中お母さんが心配をしてくれていたけど、その元凶がすぐ隣にいるなんて思ってないんだろうなぁ。
「はい、お姉ちゃん座って」
「はい……」
そう指示された私は床に、こころはベットに腰掛ける。
どっからか取り出した伊達メガネをかけたこころは、スマホのメモ機能を開いた。
「えーと、班に誘うところまでは成功……次は、オセロ? なんだっけ?」
「あ、えーと、勝ったらなんでも言うことを聞くという条件のやつです」
「あぁ〜。で、どうだったの?」
「完敗でした……」
芦屋くん強かったな〜。いちおう、こころとお母さんには勝ったんだけどな〜。
あ、ちなみに今私たちがやっていることは、報告会です。
妹に課せられた、修学旅行前から終わるまでのミッションをちゃんとこなせているかの報告会。今回で三回目なんだけど、前回からこんな形になりました。
「そうなんだー。まぁ、今回のはボーナスステージみたいなもので元々無かった予定だから、特に支障はないかな」
「は、え、そ、そう」
こころのその言葉に胸をなでおろす。めっちゃ怒られると思ってました……。
「じゃ、次は修学旅行中のことだけど」
「はい」
「さくっと手を繋いじゃおう」
おっと、妹が何を言ってるかわからなかったなぁ。もう一回は言わなくてもいい。聞こえてはいたからね。
それを踏まえて私は妹に聞き返す。
「手を繋ぐってどういう意味?」
「こうだよお姉ちゃん」
ニコニコしながら、私の左手を右手で掴むこころ。って、いきなりハードル上がりすぎじゃない!?
「無理っ! 無理無理無理無理っ! 絶対無理っ!」
ちょっとこころさんよ、ほんの少し前まで会話ですら緊張していた私が、手を繋ぐなんて絶対できないよぉ!
そんな私の心の叫びを悟ったのか、こころは頭を抑えため息をすると、大きな瞳で私を見つめる。
「いいお姉ちゃん。話を聞く限り、現状、お姉ちゃんが藍那さんに勝てる見込みはない」
「ぐふっ」
「突然、死んでくださいなんて言う子に好意なんて抱かないものだよ」
「ぐはっ」
「じゃあその、悪い印象をどう良い印象に変えるか。答えは一つ、ボディタッチです!」
鼻息を荒くして、そう言ったこころに反論する気は起きませんでした。
頑張るしかないのかなぁ。漫画のヒロイン達は簡単にやってみせるけど、なかなかそうはいかないものだと、感じています。
「が、頑張るけどさ〜」
「うんうん、頑張って」
「そういうこころは、男の子と手、繋いだことあるの?」
「う、うん、も、もちろんだよお姉ちゃん」
さすがこころだ〜。私とはやっぱり違う。目をキョロキョロさせてたのは、気になるけど。
「私のことより、今はお姉ちゃんでしょ! 頑張るのも大事だけど、楽しんできなよ? 東京」
「うん! お土産いっぱい買ってくるから!」
これにて今日の報告会は終了です。お疲れ様でした。
と、そこで部屋にお母さんが入ってきた。
「ちょっとこころ、テストの結果まだ見せてもらってないわよ」
「あ……えーと……」
その後のテスト報告会で立場が逆転していたことは、言うまでもない。
読んでいただきありがとうございます(^。^)
投稿は毎朝8時にしてますので、続きが気になる方はブックマークをお願いします!




