ちょっと遅れて
月曜日。藍那さんを迎えに行くと、相変わらずの無表情で家の前に立っていた。
「歩、おはよう」
「おはよう、藍那さん」
「……」
「……?」
どうしたんだろ、めっちゃ見てくる。顔に何かついてるのだろうか?
それに坂瀬河さんの姿が見えない。いつもなら藍那さんと一緒に待ってるんだけど。
「行こう」
「う、うん」
一体今の時間はなんだったんだ……。
登校中は特に会話もなく、学校に到着した。まぁ、いつもほとんど会話はしてないんだけど。
教室に入り席に着くと、またしても藍那さんがこっちをじーっと見てくる。
怒ってるようには見えないし、顔に何かついてるわけでもないよな。さっきちらっと確認したし。
えー、じゃあなんだ……。
「歩」
「はいっ」
なんて考えていると、藍那さんが急に俺の名前を呼んだ。割と驚いてしまい、大きめの声がでてしまった。恥ずかしい。
何かを話そうとする藍那さん。ちょっと鼻が膨らんだその表情は、今までに見たことがない。
「この前、湖春に怒られた」
「えっ!?」
「初めて怒られた。湖春、いつもと違って怖かった」
「なんで怒られたの?」
そう聞くと、鼻をピクピクさせ目を逸らした藍那さん。何度も言うけど、いちいち可愛い。
この様子だと、自分が悪いと認識しているみたいだな。朝、坂瀬河さんがいなかったのはこう言うことだったのか。
「勝手に帰ったから……」
「勝手に帰った?」
「歩と遊んだ日」
あー、最後のことか。俺と坂瀬河さんが茶番を繰り広げていたあの時だな。
え、あのメイドさん、あれを無視したこと怒ったの?正直あれは、俺と坂瀬河が怒られるべき案件だと思うんだけど……。まぁ、それで坂瀬河さんが藍那さんを怒るわけないな。
「えーと、なんて怒られたの?」
「ありがとうも言えないのかって。歩が傷ついたって」
「……」
な、なるほど。帰り際の態度を怒られたのか。
確かに、俺もちょっと気にはしていた。坂瀬河さんにフォローはされたけど、藍那さんは楽しくなかったのかなとか、嫌だったのかなとか、不安だった。
俺のそんな気持ちを坂瀬河さんは、察してくれたのだろうか。
「歩、嫌いになった?お世話係やめる?」
どこか怯えるように、不安そうにして藍那さんはそう聞いてきた。そんな弱々しい藍那さんに俺は、こう答える。
「俺は藍那さんを嫌いにならないし、お世話係もやめない。だから藍那さんも、坂瀬河さんのこと嫌いになったりしたらダメだよ」
誰よりも藍那さんのことを考え、思いやっているのは坂瀬河さんだと思う。そうじゃなきゃ、彼女のために頭を下げたり、叱ったりなんてできないはずだ。
坂瀬河さんにできないことがあるなら、俺にだってしてやれないことがある。だから、その部分はあのメイドさんに任せないといけない。
こんなこと坂瀬河さんに言ったら「余計なお世話ですよ」とか言われそうだな……。
「うん、湖春は大好き」
「なら良かった」
そこで俺のスマホがメールを受信。最早、差出人なんて見る必要がない。
『お嬢様から聞きましたか?またお願いしますね』
また……と言うと?
「歩」
「ん?」
「楽しかった。ありがとう。また、行きたい」
こんな時間差はずるいと思うな。
内心ドキドキしながら、次はもっといいとこに連れて行ってあげたいと思う俺でした。
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