答えは……
「えーと、つまり藍那さんが俺を選んだってことですか?」
「そう言うことよ。私も、強引で悪いと思ってるわ……。でもね、こっちにも事情があるのよ!」
放課後の理科準備室。並べられた実験道具を綺麗に整頓しながら、俺の担任の朝霧先生が謝罪と藍那さんについての説明をしてくれていた。
昼からずっと爆睡をかましていた藍那さんは、まだ教室で睡眠を続けているはずだ。
小さい時から外国を転々としていた藍那さんは、十七歳になると同時、一人で日本に戻ってきたらしく、なぜかこの学校への転入を強く望み、藍那さんの父が無理を言って、転入が決まったのだ。
「その無理って言うのがまた、度を超えた無理でね……」
なんと、藍那さんのボディガードをつねに二十人、学校に居させると言う提案があったのだが、藍那さん一人だけのために、他の生徒達に迷惑がかかることは教員という立場にある先生たちにとっては、受け入れがたい提案だったので、
「そんな人達がいたら、他の生徒達に迷惑がかかるわ! さすがの校長もそれは許容できなかったみたい。で、いろいろ案を出し合った結果、唯一あっち側の許しを貰えたのが生徒を一人、藍那さんのお世話係として付けさせることで」
「それで、俺に白羽の矢が……」
「彼女が芦屋くんが良いって言ってたのよ!? 私達も同性の子とか、交代で付けていこうとか色々考えてたんだけどね……」
「何で俺なんすかね?」
「私に聞かれてもわからないわよ」
先生の昨日の態度は、絶対に断られると思い、なかば強制的になってでもいいかみたいな感じで、俺に対して、あんな風な態度になってしまったようだ。先生達も大変なんだな……。
盛大なため息を、俺と先生は同じタイミングでついた。
「誰かにバトンタッチは無理なんですよね?」
「当分は……本当にごめんなさい。でも、困ったことがあったらいつでも相談してちょうだい! 出来る限りの事はするわ」
「ありがとう、ございます」
すでに困っていることだらけなんだけど……。しかし、先生達の苦労を知ってしまうと言いづらい。出来るとこまで、やるしかないよな。
「それじゃあ、俺はこれで」
「ええ、また明日」
「さようなら」
先生と話を終え、教室に戻ると赤い夕日の日差しが窓から差し込んでいた。普段、こんな時間まで残ることがないので、この景色はとても新鮮だ。
「藍那さーん、そろそろ起きて」
「んん……」
その中で、一人寝ていた女の子に声をかける。寝ている藍那さんは、なかなか起きない。
「何で……俺?」
可愛い寝顔にそう問いかけたけれど、返答はない。
その答えを知るのは、もうちょっと先になる。
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