大半の人は本気で怒ってる時、無言
おもちゃ屋さんでの勝負は、俺の勝ちで幕を閉じ、さっきまでいた坂瀬河さんは風のようにどこかに行ってしまった。あくまで、デートは邪魔しないみたいだ。
そして、俺と藍那さんは今、二人で歩いているわけだけど……。
「藍那さん次は──」
「(ぷいっ)」
なんか、機嫌が悪いんですよね。原因は……まぁ、あれでしょう。
まさか藍那さんが、こんな負けず嫌いだなんて思ってもいなかった。どうしよう……、勝ったのに罰ゲームを受けてるみたい。
変な汗も出てきたし、目的もなく歩くと疲れる。なんだかんだ十分くらい、この状態だ。
「ちょっと、休憩しようか」
「(ぷ……こくっ)」
あ、今、首を横に振ろうとしてやめた。いちいち可愛いなこの子。
同意も得られたところで、空いてるベンチに並んで座る。……ちょっと離れられたことが胸にぐさっと刺さるな。飲み物でも買いに行こう。
そう思い何も言わず立ち上がると、左隣の藍那さんが俺の袖を掴んで一緒に立ち上がった。
「飲み物買いに行くだけだから」
「(……ぷい)」
そう言うと、そっぽを向いて座りなおす。なんだ今の。
藍那さんを置いて、一番近くの自動販売機の前に立つと、その影から和服メイドが現れた。もう、この程度では驚かない。
「お困りのようですね」
「はい……」
ほんと、どうすればいいのかわからないです。
妹なら「機嫌が悪いので──」やら「怒ってます」とか、口で言ってくれるのでわかりやすいことこの上ない。基本、一方的に言われるけど。
「一つ、この状況を打開する策があります」
自信満々にそう言う坂瀬河さん。
ニヤニヤ笑っているあたり、何かを企んでいるのは間違いないが、今はそれを気にしている余裕などない。
「教えてください」
「ふふ、潔いですね」
藍那さんと残りの時間をこのまま過ごすのは嫌だ。せっかく連れ出したんだし、ちょっとでも楽しんでもらいたい。
「芦屋様、これですよこれ」
そう言った坂瀬河さんは、自分の頭の上で右手を円を描くように回した。
「それですか……」
子供じゃあるまいし本当にそれでいいんですか?あと、それはちょっと、あれだ。
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