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唐突に

『只今をもちまして、赤石高校文化祭最終日を終了致します』


真っ赤な太陽が校舎を照らす夕暮れ時。校内全体に、そんなアナウンスが流れた。

賑やかだった店内も、少し前から落ち着きを取り戻していき、今ではお客さんと入れ替わるようにしてクラスメイト達がぞろぞろとここに戻ってきている。


「あっしー、最後までご苦労」

「いやいや、平福さんに比べると俺の仕事量なんて」

「なははは。私は好きでやってたからね、全部楽しかったから良いんだよ」

「……なんか、尊敬するよ」

「うむ、大いにしたまえ」


その一人一人に、労いの声をかけていく平福さん。全く力になれていない俺にさえもこんなことを言ってくれるなんて……泣いてもいいのかな?


「よし、じゃあ片付け始めるから、あっしーは着替えてきて」

「わかりましたっ!」


片付けは全力で手伝おう。そう思いながら、敬礼をすると平福さんも笑いながらそれに応えてくれる。

きっと、こんな子だからみんなついていくことができたんだろうな。

今までの学校生活で、間違いなく一番いい思い出だ。ほんと、ありがとう。



教室から少し離れた更衣室に向かう俺。窓から見えるグラウンドでは、複数の生徒が高く組み上がった木の中に、廃材らしきものを次々と入れている。

恐らく、後夜祭の準備だろう。去年は参加しなかったからな……、今年もどうするかは状況を見て判断しよう。


「あ、おーい、芦屋くーん、あっしーくーん」

「……?」


そんなことを思っていると、後ろの方から声が聞こえてきた。

振り向くとそこには、ここの学校の制服ではない女の子が、小走りでこっちに近づいてくる。


「はぁ、やっと見つけた」

「い、衣生(いそう)さん……」

「もう、どこにもいないから学校中探し回っちゃったよー」

「そ、それは、ごめん」


そう軽く彼女に頭を下げた俺。すると彼女は、いきなり俺の袖を掴み弱く引っ張った。


「逃さないように捕まえておこう」

「っ……」


きっと彼女の中でこの行動に何の意味もないのだろうけど、俺の胸をドキドキさせるのには十分すぎる攻撃だ。何これ、こんなんされたら好きになっちゃうやん。童貞の心を弄ぶのはほどほどにしてほしいな!


「それしてもその格好、似合っててかっこいいね。お店で見たかったよ」

「あ、き、きてくれてたんだ」

「うん、約束したからね。でも、行った時間には芦屋くんいなかったから」

「そ、そっか」


ほ、褒められても、嬉しくないんだからね!!

それにしてもあれだ。人通りの少ないところとはいえ、他校の制服と燕尾服の奴が一緒にいると嫌でも目立つな。

てか、そろそろ来客の人は学校を出ないといけないはず。もたもたしてると、怒られてしまうかもしれない。


「私、そろそろ帰らないといけないからさ、最後に芦屋くんと会ってこれだけは言おうと思ってて」

「う、うん、どうしたの?」


「私、やっぱり芦屋くんのこと好きみたい。だから、私と、付き合ってください」


その告白は唐突で、決してロマンチックなんて言えるものじゃない。

でも、彼女の言葉に嘘は感じられなくて、冷やかしでも遊びでもないと言うのは俺にも伝わってきた。

だから、笑い飛ばすことも、すぐに返事をすることも俺にはできなかった。


「返事は今じゃなくていい。メールでも、直接でもいいから、一週間後に聞かせてほしい」

「……あ、え、と」

「待ってるから、じゃあ……バイバイ」


そう言って彼女は、足早にその場から去ってしまう。


「……」


静かな廊下。さっきまであった人通りもパタリとなくなって、そこには俺一人だけ。

嵐のように去ってしまった衣生さんの告白が、頭の中でずっと鳴り響いている。


読んでいただきありがとうございます!


休みがちで申し訳ないです。

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