転校生だったのか
「と、言うわけで、転校生の藍那さんです。自己紹介お願いします」
「藍那桃花」
無表情のまま、無感情に名前だけの自己紹介を終えた藍那さんに、まばらでまとまりのない拍手が送られていた。
生徒達は「可愛い」とか「可愛い」とか言ってだけど、正直、藍那さんは可愛い。
転校生だったのか……。どおりで見たことなかった訳だ。
「じゃあ席は──」
と、先生が喋ってるにもかかわらず、俺の方に歩いてくる藍那さん。そしてそのまま俺の膝の上に腰かけた。
「えぇ!?何やってんの!」
「お世話……して?」
驚きを隠せない俺とクラスメイト達、黒板の前では先生が深いため息をついている。
「ごめん……洲咲さん。席、変わってくれないかしら?」
「え……」
洲咲くるみ。俺の隣の席の女子で、男子から結構人気のある子だ。別に親しいわけではないのだが、突然変わるとなるとほんのちょっと寂しい気持ちはある。
「わ、わかりました」
「ごめんね」
優しい洲咲さんは、藍那さんに席を譲った。
「あの、早く立って」
「重い」
「何が!?」
そんなやりとりをしていると一瞬洲咲さんと目が合った。
「……バカ」
小さい声でなんて言ってるか聞こえなかったけど、心なしかその表情は寂しそうに見えた。
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