久しぶりの登場
校内放送で文化祭の開催が知らされてから三十分程がたった。
外でぶらぶらしていた俺は、適当にポテトを食べたり、綿菓子を食べたりしてお腹を膨らませていた。
初日の主なお客さんは、近所の人や親御さんのため全体的に落ち着いた雰囲気が流れていて、言うほど忙しそうではない。
「はぁー……」
グラウンドにある休憩スペースで一人、大きなあくびをかます。天気は良く、時間が進むにつれ気温も上がり丁度いい暖かさになった。油断するとこのまま寝てしまいそうだ。
「おー、歩ー」
「んー?お、京介」
「ほんとに執事役すんだなー、似合ってるじゃん」
「まぁ、ありがとうだけ言っとく。京介のクラスの出し物は?」
「これこれ」
一人で座っていた俺の元に、友人である京介が声をかけてきた。
爽やかに服装を褒めるところが、またイケメンだ。ここ最近、色々あって京介と会うことがほとんどなかったため、京介のクラスの出し物すら把握していなかったのだが、そんなことは気にしていない様子の京介は、持っていたプラカードを俺の目の前に突き出してくる。
「お化け屋敷か」
「そ、客引き中。歩、くるよな?」
「……時間的には全然余裕なんだけど、そんなに怖いの得意じゃないんだよな」
「大丈夫だって、所詮作りもんだから」
「胸張って言うことじゃないだろ……」
ほんとに客引きをする気があるのか。
とりあえず暇なので、京介に連れられお化け屋敷を体験することとなった俺。
どうやらペアで入るのが前提らしく、一人での入場はお断りのようだ。
全盛期の俺なら、ガチギレして教室もろとも吹き飛ばしていたところだぜ……。
「どうも男子がカップルを怖がらせたくて気合い入ったんだよ」
おっと、どうやら同志諸君がこの中で待ち構えているようだ。さて、お手並み拝見といくか。
「よし、いくぞ」
「まさか歩とお化け屋敷に入ることになるとはな」
べ、別にあんたと入りたいわけじゃないんだからね!友達がいないだけなんだから!……はい。
────。
「こ、こぇ……」
時間にして十分ちょい。情けない声が、このお化け屋敷に響き渡りまくっていた。
なーにが作りもんだ。ガチじゃねぇか。途中でペアと離れされるところにお化けとは違う恐怖さえ感じたわ。
「だろ?みんな頑張ってたからな」
「……準備だよな?」
京介の肩を借り出口をくぐった俺。暗かった視界が一気に明るくなる。
「ホモォチャンスっ!!!!!!」
あれ、おかしいな。我がクラスの総監督が、一瞬姿を現したような気が……。気のせいだと思いたい。
読んでいただきありがとうございます!




