兄と妹
もう夕方だと言うのに、俺はまだベットの上に横たわっている。
おでこには濡れたタオルが乗せてあって心地いい。けれど、体は熱くだるい感じがする。まぁあれです、熱です。
「久しぶりだな……」
数年ぶりのこの感覚。自分の身体なのにそうじゃないみたいだ。
テスト前の土日に風邪をひくなんてついてないな、ほんと。明日には治ってくれるといいけど。
そこで俺はふと気づいた。右手が何かに覆われていることに。
柔らかくて、スベスベで、温度のあるそれは誰かの手だ。誰のものかは見なくてもわかるけど。
「なな、起きろ。いや、目を開けろ」
「うふふ、バレましたか」
「タオル変えてくれたばかりだろ? ありがたいけどさ、うつると悪いから部屋から出て言った方がいいぞ」
「そんな……彼女である私にそんなこと言うなんて……うぅ、しくしく」
「いやお前、妹だろ……」
わざとらしく泣いているこいつは俺の妹、芦屋七海。三つ年下の中学二年生。
黒髪ショートの髪型、前髪は短めで、顔は可愛い方だと思う。妹だからそういう目で見たことがない。
「兄さん……実は私たち血が!」
「バリバリ繋がってるから心配するな」
「ぐぬぬ」
「ほら、早く」
部屋を出るように指示してもなかなか従わない。我が妹ながら、なかなかにめんどくさい性格をしているのだ。
「兄さん、私は母さんに頼まれたんです『歩をっ、歩をお願い……ね。(パタン)』って」
「そんな、ドラマチックに言ってなかっただろ絶対」
「だから私は言ったんです『兄さんは任せて! だから母さんは気にせず行って!』と」
「買い物だろ? いつまで続くんだその猿芝居は」
妹よ兄は今、病人なんだよ。だからさ、うるさくするならちょっとあっち行ってて。頭がガンガンするから。
「そして、兄さんと私は一生幸せに暮らしました」
「急展開がすぎる」
わかった。いてもいいから静かにしてて。
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