兄と妹10
体育祭が終わった次の週。
朝、スマホを見てみると坂瀬河さんからメッセージが届いていた。
『おはようございます。早起きできましたか?だらけた生活をしないよう、心がけてくださいね』
少しの間だけ家にいた坂瀬河さんのお世話はまだ、続いているのか……。いやまぁ、今日も早起きはしたんですけどね。
『今日からお嬢様のお迎えをお願いしたいのですが……大丈夫でしょうか?』
どうやら、こちらの方が本題っぽい。俺は『大丈夫ですよ』とだけ返し、一旦リビングに向かった。
そこには母がいて、まだ朝食の準備中。七海はまだ起きていないようだ。
「湖春ちゃんのおかげで、歩が早起きになったわね」
「あはは……」
多分、ゆっくり元に戻っていくと思うけど、スッとは抜けない習慣になってしまった。
朝ご飯ができるまでに学校へ行く準備をしてしまおうと思い、もう一度部屋に戻って制服に着替えた俺。
スマホを覗いてみると『ありがとうございます』とだけ返事がきていて、俺はそのままスマホをカバンの中にしまった。
「時間はまだあるな……あ、そうだ」
時刻はまだ朝の六時半。そろそろ七海が起きてくる時間だ。
……これは別に悪巧みではない。ただ、いつもやられていることを七海に仕返してやろうと言う、兄の粋なはからいだ。
七海の部屋は俺の部屋の右斜め前にある。その奥は一応、父の寝室になっているけどほとんど使わない。
あれ……どうしてだろう、部屋の前に立つと急に罪悪感が生まれてきたぞ。
そう言えば、前に一度だけ部屋に勝手に入ったらめちゃくちゃ怒られた記憶が……。
いやしかし、あいつは勝手に俺の部屋に入ってくるしな。
「まぁ、大丈夫か」
と、軽い気持ちでドアを開けた俺。
中は静かで、カーテンも締め切っている。まだ寝てるのか……?
なるべく足音を立てないようベッドに近づくとそこには、布団を蹴飛ばし、お腹を出して、よだれを垂らしている七海の姿があった。
……寝相悪っ!!
よく見れば足元に枕がある。えっ、半回転したの?寝癖もすごいことになってるし……。
全く、可愛いなおい!!というわけで、起こします。
「おーい、七海さんやー朝ですよー」
「……っうん?兄さんが今日も夢に……幸せですぅ〜」
「いや、夢じゃないぞ」
「……?夢じゃ……ない?」
半目を開け、じっとこちらを見て手を伸ばす七海。俺の腕をツンと触ると、水を得た魚のようにベッドの上で飛び跳ねた。
「ににににに、兄さんっ!!」
「お、おう、おはよう」
「なななな、なんでここに!?」
「いや、起こそうと思って……」
「お、お、女の子の部屋に勝手に入るなんて最低です!!」
俺はその日、妹の弱点を初めて知った。
そのおかげで、なんで妹がいつもこんなに早起きなのかという謎が一つ、解き明かされたのだった。
あと、妹と母にめっちゃ怒られた。
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