仲良くなれたら
畳が敷かれた部屋。勉強会が始まって一時間が経った頃、静かだった部屋の沈黙を破ったのは京介だ。
「休憩! 十分!」
「まだ一時間しか経ってないぞ」
立ち上がった京介は、部屋の端っこで椅子に座り本を読んでいた坂瀬河さんに「トイレどこですか?」と聞いていて、俺の言葉を完全無視した。
それで集中力が切れた俺は、ペンを置いてコップに注いであるお茶を一気に飲み干した。
部屋からいなくなった京介と坂瀬河さん、今部屋には、俺と藍那さんと洲咲さんの三人だけだ。
「って、藍那さん寝てるし」
「はは……結構序盤から寝てたよ」
俺の横で寝ているこの子は、今日の目的を完全無視。テスト大丈夫なんだろか……。
向かいに座っている洲咲さんは、うーんと背を伸ばすとノートの横に置いてあったスマホで時間を確認していた。
その様子を何となく見ていた俺。見られていることに気づいたのか、洲咲さんがこっちを向くと自然と目が合った。
「な、何かな?」
「あ、いや、なんでも」
気まずい空気が流れる。元々、仲が良かったわけじゃないんだよな俺と洲咲さん。本当にたまに喋るくらいで、友達とも呼べない関係だったはずなんだけど……、何で一緒に勉強してるんだろ。
「えーと、なんか急に勉強に誘ってごめんね。まさか、藍那さんと長田くんと約束してたなんて知らなかったから。私の誘いなんて断ってくれても良かったのに」
「洲咲さんの誘いを断るなんて俺にはできないよ。それに、せっかくだから藍那さんと仲良くなって欲しいなと思ったし」
「芦屋君……」
まぁ本当は、断れる雰囲気じゃなかったってのもある。でもこれは、藍那さんにとっても洲咲さんにとってもいい機会だとあとから思ったのだ。
友達ができれば藍那さんだって俺にずっとくっついてなくていいし、洲咲さんも藍那さんと仲良くなれて幸せ! ……なんて言う俺の思惑はことごとく散ったわけだけど。
「洲咲さんこそなんで俺なんか誘ったの?」
「へ!? いや、その、流れで……?」
「特に理由はなかったんですね」
美人さんに誘われて何か期待したわけじゃないからね? 俺だってその辺わきまえてるからね?
「私のバカぁー……」
頭を抱え何か言ってるみたい。
「歩! トイレもめっちゃ綺麗だったし、広かったぞ!」
京介が帰ってきたのを皮切りに、俺たちはまた勉強を再開した。
藍那さんそろそろ起きようよ。
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