勉強会の始まり! ……
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「湖春、ただいま」
藍那さん宅の玄関。綺麗な礼と、美しい笑顔を見せるのは、坂瀬河さん。そしてその坂瀬河さんに挨拶を返したのがこの家の住人、藍那桃花さんだ。
「今日はお願いします」
「良いんですよ、芦屋様にはお世話になっておりますし。お友達も遠慮なさらず、お上がりください」
「お邪魔しまーす」
「お、お邪魔します……」
京介と洲咲さんは靴を脱ぎ、置かれていたスリッパを履くと、坂瀬河さんについて行ってしまった。
毎日この家の前まではきている俺だけど、入るのは初めてだ。正直めっちゃ緊張している。
なのに藍那さんは通常運転、俺の緊張なんてお構いなしだ。
「歩、早く行こ」
「うん……じゃあ手を離してくれる?」
ここにくるまでの間、決して手を離さなかった藍那さん。今でもその手は俺の袖を掴んでいる。お世話係ってそう言うのじゃないと思うんだよな俺。
それに、俺の名前……。今まで名前なんて呼ばれなかったし、急だったからめっちゃドキドキした。
「……嫌?」
「嫌じゃないけど……その」
恥ずかしい。
俺だって高校生、しかも今まで女の子と付き合ったこともなければ、まともに話したことだってない。そう言ったことに全く免疫がないのだ。
それに藍那さんは可愛い。一緒に歩いてて、チラチラと視線を感じることが多々ある「あの子可愛いな」なんて感じの視線ならまだ良いけど「一緒に歩いてるやつ何?」的なやつだと精神的にきつかったり。
それでも、今まで我慢してきた俺を褒めてあげたい。
「……」
さっきまでのご機嫌から、あからさまにテンションが下がっているのを感じた。普段、何考えてるか分からない子だけど、まるで子供みたいに分かりやすい時がある。それが今だ。
「た、たまになら良い」
「本当?」
「うん」
機嫌を損ねないよう自分なりの打開策を持ちかけとりあえず機嫌をとっておく。いや本当、妹みたいだ。
「じゃあ、今は良い?」
あぁ、これはずるい。この表情に俺はいつもやられている。こんな可愛い頼み方されたら断れるわけがない。
「お嬢様、芦屋様、一応勉強会ですのでそれ以上はお控えくださいね?」
「それ以上って何!?」
早く勉強するよ!
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