戻った……?
席に座り、じっと時計を見つめる私、洲咲くるみはいろいろ考えていた。
歩くんがきたらどうしよう、なんて声をかけよう、どういう風に接そう。あの日からずっと考えてる。
……あ、私今ものすごく恥ずかしいことを思ってるかも。はぁ……、意識すればするほどわかんなくなってくるよぉ。
「普通でいいのかなぁ……」
私の普通ってどんなんだっけ?学校にいる時の私って、歩くんからはどう見えているんだろう。
ちょっと前までは、休みの日に会うなんて思ってもいなかったし。
気がつくと教室はだんだんと騒がしくなっていて、ほとんどのクラスメイトが登校してきたみたい。
でも、まだ空席が二つ。桃花ちゃんの席と、歩くんの席。時間はもうギリギリで、いつもならもうきていてもおかしくない時間帯だ。
……休みかな。
と、その時、教室の前の扉が開き、歩くんがやってきた。よかったと一安心したけれど、その後ろから桃花ちゃんは現れない。
「あっしー、一人だね」
「うん……」
「くるみ、声かけてきたら?」
「え……でも……」
前の先に座る舞が、私にそんな提案をしてくる。私も、近くに行って挨拶くらいはしたい……けど……。
なんていうんだろ、雰囲気が戻った?
同じクラスになった時の最初の頃の雰囲気……。話しかけづらい、暗い雰囲気。ずっと見てたから、なんかわかっちゃう。……度々、恥ずかしいことを自分で言っちゃうなぁ。
「やっぱり、気にしてるのかな。あのこと」
「多分ね……」
あの日の別れ際、明らかにそれまでの歩くんとは違う感じだった。
ずっと歩くんのことを考えてしまっていたのは、あの時の冷たい表情が忘れられないから。
「はーい、みんな席に着いてー」
間も無くして、朝霧先生が生徒たちに声をかけながら教室に入ってきた。
さっきまで立ち話をしていたクラスメイトたちも、自分の席に戻り前を向く。
腕に顔を埋めていた歩くんも、右肘を机につきながら先生の話に耳を傾けている。
「あとで、話せるかな……」
嫌な予感が胸を走る。
根拠はどこにもないけど、なぜかこのままずっと話せない気がして、もう近づけない気がして、遠くに行ってしまうような気がして、彼の横顔から目が離せなくなった。
「ちょ、くるみ!呼ばれてるよ!」
「……え?」
「洲咲さーん、今から体育館に行くから、クラスの点呼お願いねー」
「は、はい!」
ボーッとしていた私を、クラスのみんなは軽く笑い、再び先生の方に視線を戻す。
歩くんも同じように笑ってくれたらよかったのに、彼の横顔は冷たいままだった。
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