ふりだしに戻る
昨日は諸事情で投稿できませんでした。
申し訳ないです。
坂瀬河さんに見送られ家を出た俺と七海。
こうやって一緒に登校するのは実は久しぶりで、なんだか前の俺に戻ったような感覚だ。
藍那さんが転校してくるまでは、これが普通だったんだよな……。
「兄さん、ほんとに湖春さんと結婚するんですか?」
「いや、しねぇよ……」
「でもでも、私みたいに本気で言い寄られたらどうするんですか!?」
「それを聞くと坂瀬河さん以前の問題になってくるんだよな……」
お願いだから兄さんのこと本気で口説きにこないでね?兄さん、落ちる自信あるから。だってほら、七海さん可愛いし……。おっとこれは、坂瀬河さんでも七海でもなく俺に問題がありそうだ。とりあえず近日中に病院に行ってくる。……精神科でいいのだろうか?
兄弟仲良く道を歩くこと数分。目的地が違うため結局は途中で別れるはずなんだけど……。
「七海さんよ、いつまでついてくるんだい?」
「え、学校までですよ?」
「やめて!恥ずかしいから!」
「そんな恥ずかしがらなくても……初めて学校に行った日だって一緒だったじゃないですか」
そうだったね!入試の前に一緒に下見にきたことを今思い出したよ!あれも恥ずかしかったからな!
……まぁ、七海がこんなことをする理由もよくわかっている。だから、怒これないし突き放せない。もっと俺がしっかりしていたら、この優しさは無駄になっていなかったのに。
「兄さんは大丈夫だから、心配しなくていいよ」
「……無理してませんか?」
「しない。約束したろ?」
「……」
「ほれ、遅刻すんぞ」
心配そうに見つめてくる妹の頭をポンっと一回優しく叩いて、行けと合図を送る。いい匂いが一瞬鼻をくすぐり、すぐに消えては、安心感を俺に与えてくれた。
「早く、帰ってきてくださいね?」
「自慢じゃないが、兄さんは歩くのが早い」
俺がそう返すと、逆の方向に足を向けた七海。離れていく後ろ姿を見えなくなるまで見送った後、俺も学校へと向かった。
「ごめんな、七海」
不甲斐ない兄で、心配をかけてしまう兄で、頼りない兄で。
小さく呟いた謝罪の言葉は、誰に聞かれることもなく車の音に消しさられたのだった。
学校に到着し教室に入ると、夏休み明けだということもあり一段と騒がしいように感じる教室の雰囲気。
そんな雰囲気を壊さないよう俺は、静かに席に着いた。
今日は始業式と宿題の提出だけで学校は終わる。だから荷物は少ない。……俺の分だけだし。
「……」
誰もいない左隣の席。それを見ると、やはり罪悪感が押し寄せてくる。
俺がちゃんとしていれば藍那さんはここにいたはずなのに、坂瀬河さんはあそこにいなくてよかったのに、あの二人はずっと一緒だったのに。
机の上で腕に顔を埋め目を閉じる。寝ているわけじゃないけれど、こうしていれば誰の邪魔にもならない。誰も気にも止めない。
何もしなければ、何も起きない。楽しいことも、悲しいことも、嬉しいことも、寂しいことも。
それが一番いい。俺にはそれが一番だ。
誰かを、周りを、巻き込んでしまうくらいなら、なんにもしない方がいい。
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