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 休み時間、トイレの帰りに洲咲さんと出くわした。


「えーと、もうすぐテストだね」

「え、あ、うん」


 なんだその返しは! 俺しっかりしろよ! せっかく話しかけてくれているのに、こんなんじゃ藍那さんのこと言えないぞ!


「す、洲咲さんは、勉強とかしっかりしてそう」

「は、え!? そうかな……あー、でも、あんまり成績は良くないよ?」

「そうなんだ、意外かも」


 自分のコミュ力を最大に生かした結果、なんとか会話はできたみたいだ。


「お、驚いた……」

「え?」

「いや、何でもない」


 洲咲さん、顔が赤いな……。嫌だったのか? もしかして、さっきの「もうすぐテストだね」も俺ではなく俺の後ろにいた誰かに言ったのでは? ……そう考えると俺、相当やばいやつだ。早く教室に戻って死にたい。


「じゃ、じゃあ、お互いテスト頑張ろう」

「うん……あ、ちょっと」


 教室に向かって歩き出した俺の袖を掴んで、呼び止めた洲咲さん。そして、彼女はこう続けた。


「もし、もしよかったら一緒に勉強しない?」


 一瞬、何も聞こえなくなった。ほんのり赤い洲咲さんの顔と真っすぐ俺を見つめる瞳、どこか力強さを秘めたその眼差しに俺はノーと言うことができなかった。



「あのー、藍那さん。今日の勉強会なんですけど、同じクラスの洲咲さんも一緒になんて、どうでしょう?」

「いい」

「あ、え、いいの?」

「うん」


 あれ、思った感じと違うな。いや、ありがたいんだけど、もっと反対されると思ってたから。


「勉強、楽しみ」

「お、おぉ」


 授業まともに受けてないよね、藍那さん。


読んでいただきありがとうございます!

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