体力の無さ
情けない……。ちょっと泳いだだけで体が動かなくなるとは……。
はい、というわけでですね、俺は今パラソルの下で休んでいます。
遠くに見える水着姿の美女達を眺めながら、一人体育座りですよ。
「普段の生活が悪いな……」
膝小僧に顎を乗せそう呟く。
「そっちいったよ〜」
「ちょっと!どこ打ってんのよ!」
「まいまいなら取れるっ!」
「舞さんファイオー!」
仲良し三人組プラス妹は、ビーチボールで楽しそうに遊び。
「お嬢様、もうすぐ開通ですよ」
「……うん。砂が動いた」
藍那さんと坂瀬河さんは、砂でお城を作っている。
「歩ー!!助けてくれー!!」
あぁ、なんか京介は湊川さんに砂に埋められてたな。違う女の子のグループに話しかけられていたのがバレたようだ。
友を助けたい気持ちはある。だか、俺は疲れていて砂を掘る余力がない。それに、湊川さんが怖いんだ。九割九分九厘恐怖なのはわかってるよな?
いやー、それにしても俺の体力の無さは異常。冒頭で泳いだと言ったがあれは嘘だ。ほんとは海の中を少し歩いただけ。水圧をなめてた。足腰にくるやつ。
「情けないわ……」
今一度自分にそう言い聞かせ、ため息をつく。
と、さっきまで藍那さんとお城を作っていた坂瀬河さんが俺の隣に腰かけた。
少し濡れた髪が大人っぽさをより際立たせ、横顔がとても艶めかしく見える。
「そういった視線は、お嬢様や洲咲様に」
「……すいません」
言い訳は無駄なので素直に謝っておく。けれど、怒っているわけではないようで、その表情はとても穏やかだ。
もちろんその理由はここから見える、彼女が仕える女の子の姿のおかげだろう。
「ほんとは洲咲様や七海様たちの方にも混ぜてあげたいのですが、体が強い方ではないので」
「それでも、俺よりはちゃんと満喫できてますよ」
日よけの麦わら帽子を被ったまま、作りかけの城に磨きをかけていく藍那さん。
どこか子供っぽいけど、せっせと砂を積み上げていく姿はとても愛くるしい。
「あ、そういえばですね、この砂浜の端っこに、夕日がとても綺麗に見える場所があるそうなんですよ」
「へぇー。有名なんですか?」
「うーん、知る人ぞ知るといったレベルでしょうか」
「ここからは見えないですね」
坂瀬河さんが言った夕日が綺麗に見える場所とやらを確認しようとしたが、ここからは見えない。
そこそこ広い砂浜だからな……。端っこはもうちょい先のようだ。
「体力が回復したら、ぜひお嬢様と行ってみてはどうでしょう?」
「今日は多分無理ですけどね……」
「ふふ、明日でも構いませんよ?」
坂瀬河さんの提案に苦笑いを返すしかない俺。行きたい気持ちはあるけど、心と体がまるで合っていない。
「では私は、戻りますね。お城ももうすぐ完成なので」
「了解です。完成楽しみにしてます」
「任せてください」
「あと、坂瀬河さんも水着似合ってますよ」
「っ!」
さて、俺はちょっと寝ようかな。海にきても、結局やることは同じなのか……。
「……ちゃんと、反省を生かせてますね」
そんなメイドさんの褒め言葉を、俺は聞くことなく膝に顔を埋めたのだった。
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