水着回だと思う
「兄さん!どうですか!!」
「うん、似合ってる」
抱きついてきた七海は、さっと俺の前に移動し、くるりんと一回転。
青色の可愛らしいビキニ、シンプルなデザインだが七海の良いところをを余すことなく引き出している。まぁ、この水着、家で見たけどね!
「ふふん、わかっていましたが、兄さんはななにメロメロ。他の方々の水着を見る必要はなさそうですね」
腕を組みうんうんと頷いている。京介も「似合ってるねー」とか言ってるのに完全無視。さすがです。
どうやら話を続ける気はないようだ。それなら、それでいい。……それがいい。
と、少し遅れて残りの方々がやってきた。
「お待たせしました」
「は、はい」
「ふふ、私も水着に着替えさせてもらいました」
「い、いいと思います……」
真っ白なビキニに、ラッシュガードを羽織った坂瀬河さん。持っているのはタオルや飲み物だろうか。
東京で見たメイド服よりも、足の露出……というか肌の露出が多い。
引っ込んでいるところは引っ込んで、出ているところは出ている。そんな、メリハリのついた体型に目が奪われる。
「ありがとうございます。ですが、私は前菜に過ぎませんよ?」
イタズラじみた笑みを浮かべて、後ろを振り返る坂瀬河さん。
そのすぐ後ろには、これまた真っ白な水着を着た藍那さんがいる。タンキニというやつだ。よく見れば、うっすら花の模様があって、とてもよく似合っていた。
「お嬢様、隠れていては感想を言ってもらえませんよ」
「……」
坂瀬河さんの背中に、隠れるように立っていた藍那さんは目をそらして前に出てくる。
どこか恥ずかしそうなのは、さっきのことがあったからだろう。
「歩……可愛い?」
「っ!!」
胸の前で手を握る藍那さん。上目遣いでそう聞かれた俺は、無言で頷くことしかできなかった。
「……そう」
と、またすぐに隠れてしまった藍那さん。今日はなんだか様子がいつもと違う。
「あ、歩くん、お、お待たせ……」
「す、洲咲さん」
なんて思っていたら、続いて洲咲さんが恥ずかしそうに前に出てきた。
薄いピンク色の、ホルターネックタイプのビキニ。彼女も上にラッシュガードを羽織っているが、水着のチョイスのせいで、あの、その、胸がですね……。
「あっしーがくるみっちのおっぱい見てる!」
「み、見てませんけど!?」
直視はしてない!横目でチラチラ程度だから!やめてよ、そういうこと言うの!
「う、うぅ〜……」
よほど恥ずかしかったのか、顔を隠してその場にしゃがみ込んでしまった洲咲さん。
しかし、胸は隠しきれていなかった。
「ど、どう?京介」
「あ?うん、普通だ」
「っ!何よその感想!」
すぐ隣では、京介と湊川さんがそんなやりとりをしていた。
「引き分けですかね……」
「くるみっちのたわわでドロー……なかなか手強い」
坂瀬河さんと平福さんが何か言っていたけど、ここは聞こえなかったふりをしておく。
「っ……」
「……」
そして、俺はまた藍那さんに目をそらされてしまい、落ち込むのであった。
はぁ……太陽が眩しい。
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