番外編 ハッピーハロウィン
ハロウィンなので番外編!読まなくてもいいよ!
『芦屋家の場合』
とある日のハロウィン──。
午後7時頃。すっかり暗くなった窓の外を見て、そろそろコタツが恋しくなる季節だなぁと、思っていた俺は、ソファに寝転びテレビをつけた。
『ハッピーハロウィンー』
画面の向こうでは、一応仮装をしたアナウンサーが、マイクを片手にそんなことを叫んでいる。
「あぁ、そういや今日お菓子くれなきゃイタズラする日か」
いつからだっけ、ハロウィンという日がこんなにも騒々しくなったのは。小さい頃は、近くの商店街なんかでお菓子を無料でもらいに行っていたが、今や小さい子供だけが楽しむようなイベントではなくなってしまったな。
テレビに映し出されるクオリティが高いんだか低いんだかわからん仮装を見せつけられ、ここは本当に日本か?と、ついつい思ってしまう。
「うーん、わからん」
あれの何が楽しいのか。まだ、お菓子もらいに行った方が楽しいし、美味しい。
見ててもつまらないので、チャンネルを変えようとした瞬間、後ろから目を隠され視界を奪われた。
「だーれだ?」
「どうした、なな」
「正解です!さすが兄さん、秒ですね!」
「こんなことするのななしかいないからな……」
チャンネルを持ったまま後ろを振り向くと、そこには魔女っぽい仮装をした妹の姿が。
とんがり帽子のツバの部分を持ちポーズを決めると「どうですか?」と聞いてくる。
「おー、似合ってるなぁ」
「へへぇ〜」
俺がそう褒めると素直に照れる妹。でも、ほんとに似合っている。さっきテレビに映っていたあきらか、お前それドン○ーホーテで買っただろ、と思った低予算仮装よりは全然マシだ。
「どうしたんだ、それ?」
「母さんと一緒に作ったんです」
「ほぉー」
そりゃ似合うわけだ。
と、ポーズを決めた妹が定番のあのセリフを、俺に向けて放ってきた。
「トリックオアトリート!お菓子くれなきゃイタズラ……し・ちゃ・う・ぞ?」
「……おう」
イタズラされたくないので、テーブルの上に置いてあった小さいようかんあげといた。
ちなみに、妹のこの感じはハロウィンとかあんまり関係ない。一年中ハッピーハロウィン。
『洲咲さん達の場合』
「「「ハッピーハロウィンー!」」」
場所は私、洲咲くるみの部屋。普段、妹のこころと共有して使っている部屋には、私の友達である湊川舞と平福琴葉の2人に私を含めた3人で、プチパーティーを開催していた。
コップに注いだジュースで元気よく乾杯すると、持ち寄ったお菓子に、適当にパクつく。
「って、あんまりいつもの感じと変わらないね〜」
「メンツがメンツだから」
ジュースを一口飲んだ舞と、指にリング状のお菓子をはめた琴葉がそんなことを言う。
いやいや、やろうって言ったの2人じゃん……。しかも、狭い私の部屋で……。
そんな私の視線を感じたのか2人は「イェーイ」と無理やりな感じで、テンションを上げる。
一体、いつからなのハロウィンがこんな大それたイベントになったのは。
「あ、そうだそうだ、私こんなもの持ってきてみましたー」
と、琴葉がリュックからある物を取り出す。
「何それ」
「これはですね、朝の幼女向けアニメ『魔法使いマギ☆キュア』に出てくる魔法使いの先生、ミマさんのコスプレ衣装でーす」
「へぇ、買ったの?」
「うんや、手作り」
「「えぇ!?」」
「この日のために頑張ったよ〜」
驚く私と舞を無視して、不敵な笑みを浮かべる琴葉。そして、彼女は次にそのミマさん?と言うキャラの特徴について語り出した。
「いやー、このミマさんってキャラなんだけどおっぱいがでかくてさ、私が着ても似合わないと思って」
「じゃあ、1人しかいないね」
2人の視線は私の胸あたりに注がれる。嫌な空気を感じた私は、部屋を出ようと立ち上がるも2人に肩を掴まれた。
「くるみ」
「くるみっち」
「い、いやぁー!!」
必死の抵抗も虚しく、結局衣装を着せられた私。
2人からは「似合ってる!」と言われたけど、鏡で見たその姿は、ほんとに幼女向けアニメの登場人物なのかなぁ……と、思うくらいに際どい格好だった。
「お嫁にいけない……」
ハロウィンなんて……嫌いだぁ!!
『桃花と湖春の場合』
「これ美味しい」
「ありがとうございますお嬢様。今日はハロウィンですので、デザートに力を入れてみました」
「ハロウィン?」
「はい」
「美味しいの?ハロウィン」
「ハロウィンは……どうでしょう」
「うーん、湖春の料理の方が美味しい」
メイドの私にはこれ以上にないくらい、嬉しいお言葉ですね。
それにしても、一体ハロウィンとはなんでしょうか?盛り上がってるので、一応それっぽくデザートは作ってみましたが、いまいちどんなイベントなのかは理解していません。
確か、悪霊を追い払うみたいな感じの儀式だったはずなのですが……。
でも、そこは気にしたらダメな気がしますので、放っておきましょう。
読んでいただきありがとうございます(^。^)
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