なななな〜なななな〜♪
耳に届くのは、ひたすらシャーペンを走らせる音。その間隔は一定で、止まることはない。
普段、勉学においての集中力が皆無な京介も今日ばかりは集中力が違う。まぁ、勉学というか、宿題を写しているだけなんだけどね!
京介がきてから2時間が過ぎ、そろそろお昼になる頃。お腹も空いてきたし、休憩でもしよう。
「ふぅ〜」
背伸びをしながら息を吐く。確か、母がそうめんを作って置いといてくれたはず。やっぱり、夏はそうめんだ。
「ふぅ、終わった」
と、京介もひと段落ついたらしく、ペンを置き俺と同じように息を吐きながら背を伸ばす。
「どんくらい進んだ?」
「国語と社会は終わり、今理科」
「割と早いな……」
真面目にやってるこっちがバカらしくなってくるぜ……。
ちなみに俺はすべての宿題が終わったので、残りの夏休みを満喫させていただきます。
冷蔵庫からそうめんとそのつゆを取り出して、テーブルに運ぶ。取り皿も準備して、食事を始めようとしたところで、玄関の方から声が聞こえてきた。
「兄さん、兄さん、兄さーん」
どうやら妹が部活から帰ってきたみたいだ。あと、その独り言、外では言ってないよな?
「お、ななちゃん帰ってきたか」
「みたいだな」
麺を取りながら妹がリビングにやってくるのを待つ。目の前の京介がめっちゃ嬉しそうなのはなぜだろう。
「ただいまで……す、兄……さん……」
勢いよくリビングの扉を開け、元気な声で入ってきた七海だが、京介を見た瞬間、その声はどんどん小さくなっていく。
「おかえり、なな」
「ななちゃん、お邪魔してます」
「なんでいるんですか?ほんと邪魔なんですけど」
「きついなー、ななちゃんは」
京介からサッと距離を取ると、俺の隣に移動した七海。あれ、くること言ってなかったっけ?
すると、テーブルの上の状況を見て色々把握した七海が、さらに言葉を浴びせにかかる。
「宿題くらい、兄さんの力を借りずやってください。兄さんはななと遊びに行くという予定があるんですから」
「え、マジ?」
「いや、ないな」
「ちょっと兄さん!あの日の約束を忘れたんですか!?」
セリフだけやけに感動的だが、覚えてないし、多分してない。
「いやー、ななちゃんはほんと、歩のこと好きだよね」
「愚問ですね。あと、ななのことをななと呼んでいいのは兄さんだけです。なので、ななのことをななと呼ばないで下さい。次、ななのことをななと呼んだら、家から追い出しますよ?」
「ご、ごめんなさい……」
めっちゃまくし立てるな。京介も勢いに押されて、なんか謝ってるし。
あと気になったんだけど、なななな言い過ぎな。もう頭も中では、白いシャツを着た芸人さんがなななな〜なななな〜と言いながら、踊っている姿しか思い浮かんでない。まことにすいまめーん。
「それでは気を取り直して。兄さん、ただいまです」
「おかえり……って、さっき俺言ったけど」
「私にする?妹にする?それとも、な・な・み?」
無視ですかそうですか。
「立場が逆なんだよな……」
あと、選択肢は全部一緒。
真昼間から何をやっているのか。
読んでいただきありがとうございます(^。^)
投稿はほぼ毎朝8時にしてますので、続きが気になる方はブックマークをお願いします!
感想、評価も待ってます!




