いつでも
ゲームセンターを後にした俺たちは、家に帰るべく駅の方へと歩を進めていた。
遅い時間ではないため、まだ人通りは多い。そのほとんどが家族連れや学生、あとはカップルか。よし、早く帰ろう。
「あっしー、どうだった?」
「え、あ、うん。機嫌直ったみたい」
「……あっしーって鈍いよね。まぁ、それは良かった」
「なんでちょっとけなされたのか」
え、なに、質問の捉え方間違えてました?洲咲さんのことであってるよね?
前を歩く洲咲さんは断然元気に見える。グダグタだったプリクラも、なんとか楽しめた……はず。だから、いつも以上に洲咲さんは魅力的なんだろう。
「そうだ、一応聞いとくんだけど。あっしーって好きな人とかいるの?」
「えっ!?」
「どうなの?」
「い、いや、ちょっとわかんない……」
「なるほど。ま、それでいいか」
普段そんなこと聞かれないから、わかんないとか言っちゃったぜ……。ちゃんといないって言った方が良かったかもな。
それだけ聞くと、湊川さんは平福さんと洲咲さんの輪に入っていく。
好きな人か……。正直、考えたこともなかった。もちろん恋をしたことはある。小学生の頃とかは、みんなから人気のある女の子のことを好きになったりしてた。告白するまでには至らないけど、話すときはドキドキするし、カッコをつけようと努力もしてた。
まぁ、それも全部無駄だったわけだけど……。中学の時のことは……、ほとんど覚えてない。学校に行ってた期間が、短かったから。
それを思うと、ここ最近の変化は本当に劇的だ。前を歩く三人に、それと藍那さん。彼女たちには本当、感謝しているんだ。坂瀬河さんは、ほら、うん、あれだから……。
「じゃあ、今日は解散だねー」
ふと前を見ると、そこはもう駅。三人が立ち止まり俺を待ってくれていた。
平福さんがそういうと同時に、駅前の時計が鐘を鳴らす。今が丁度、午後の5時。
まだ一日は終わっていないのに、今日という日が短く感じてしまったのはどうしてだろう。
「あ、今日は、ありがとう」
だから今日が終わる前に、感謝の言葉を言っておきたい。今日だけじゃない、今までのことも含めて。
「どうしたのあっしー?改まって」
「え、いや、なんとなく」
「じゃあじゃあ、私もありがとう!楽しかったぜ!余計な邪魔が入らなければもっと!」
平福さんが明るく笑い飛ばす。
「私もありがとうっ。メイドさんへの報告は任せるよ」
湊川さんはいたって普通に。
「私こそ来てくれてありがとう。あの、その、ま、また誘ってもいい……かな?」
そして、洲咲さんはこれ以上ないくらいの笑みで。
「俺でよければ……いつでも」
なんてことない一日。この先、忘れてしまう可能性の方が高い、なんの変哲もないただの一日。
なのに、どうして、こんなにも、終わってしまうのが寂しく感じるのか。
それはきっと、今が幸せだからなんだとそう思った。
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