俺とメイドさん
先生にプールの鍵を返し終えた俺たちは、それぞれ帰路に着いた。
校門を出ると洲咲さん、湊川さん、平福さんの三人は一緒にご飯を食べに行くと言って、駅の方に向かっていった。
『あ、歩くんも、一緒に行かない?』
もちろん俺も流れで誘われたけど、今日は家で妹がご飯を作ってくれているらしいので、行きたい気持ちを抑え、断ってしまった。
それに、女の子三人と外食なんて俺にはとても耐えれそうにない。ここは、仲良し三人組で楽しんできてほしい。まぁ、お金がないのも理由の一つなんだけど。
「せっかくの洲咲様からの誘いを断るなんて」
「し、仕方ないじゃないですか……」
「それに、ずいぶんと仲良くなられて」
「あ、あれは、その」
俺の隣を歩く坂瀬河さん。格好のせいか、それともそれ以外の魅力が滲み出ているのか、すれ違う人達は皆、彼女に目を奪われていた。
帰る方向が同じなので、一緒に帰るのは仕方ないのかもしれないが、隣を歩かれると妙に緊張するのはなんでだろう……。なんか、近いし。
藍那さんとはまた違った緊張感、嬉しさ半分、怖さ半分といったところだろうか。
話していると何かありそうで、警戒してしまう自分がいる。
「あ、そう言えば、藍那さんは家にいるんですか?」
「はい。お疲れなのでお休みになられています」
露骨に話を変えても、優しく答えてくれた坂瀬河さん。この笑顔の裏が何でできているのか知りたい。
ドキドキしながら歩いていると、いつも藍那さんと一緒に立ち寄るクレープ屋さんが見えてきた。
また、奢ってあげようなんて考えながら横を通り過ぎようとすると、隣の坂瀬河さんが急に立ち止まる。
「ここが、いつもお嬢様と寄っている場所ですか?」
「そうですよ」
「結構、高いですね」
「まぁ……はは」
「無理なさらないで下さいね?」
「あ、ありがとうございます」
「なので、今日は私が奢ってあげますね」
「え?」
「遠慮なさらず、ささ食べましょう」
ん?どういう流れ?
有無を言う間も無く、クレープを二つ購入し近くのベンチに座ってそれを食べている俺と坂瀬河さん。なんだこの時間……。
「すいません。少し、付き合って下さい」
「は、はい、それはいいですけど……」
「ふふ、ありがとうございます」
着々とクレープを食べ進める俺と坂瀬河さん。これと言った会話もなく、ほとんど同時にクレープを食べ終えてしまった。
「さて、行きましょうか」
「いやいやいや、なんですかこれ!?」
「嫌でしたか?」
「嫌ではないですけど!何か企んでるんじゃないんですか!?」
「心外ですね。私も常に芦屋様に意地悪をするわけではありませんよ?」
「できれば今後もしないで下さるとありがたい!」
「それは──。考えておきます」
また、いつもの笑顔でそう言った坂瀬河さん。なんだろうなぁ……、この不思議な関係は。
それに、坂瀬河さんの笑顔はとても──。
「あ、クレープ奢ったので歩様はホテルきて下さいね?」
「それが狙いだったんですね!!」
結局これだよ!この人!
はぁ……。ん?何か違和感があったような……。
「早く帰りましょうか。そろそろお嬢様も起きる頃ですので」
この笑顔、悪魔の微笑みなのか天使の微笑みなのか……。どっちにしろ可愛いからな……、それがずるいんだよな。多分、俺がそう思ってることわかってやってると思うけどね!
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