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休みとメイドさん2

 和服姿の女性に朝から説教を受ける男子高校生。そんな様子を見ながら、通勤、通学する人たちは何を思っているのか。いや、本当に恥ずかしいから見ないで……。


「わかりましたか?」

「はい……」

「声が小さいですね?」

「はいっ!」


 怖っ。どうも! 説教を受ける男子高校生こと、芦屋歩です。

 それにしても、この和服姿の説教する人こと、坂瀬河湖春さんは何歳なんだろか? めっちゃ若く見えるんだけど。そんなに離れてないよな?


「紹介ありがとうございます。私は、19歳ですよ。小さい時からずっとお嬢様にお仕えしています」

「え、俺今、声に出てました?」

「いえ。私は人の表情からいろいろなことを読み取るのが上手なんです。なので、あまり表情に出さないことをお勧めしますよ」


  何、その無理難題。


「それより、芦屋様はいつもこの時間にこられているのですか?」

「まぁ、大体……。一応藍那さんを待たせないよう早くは出ているんですけど」

「そうですか……。はぁ、やっぱりまだ完全には読めないみたいですね……」


 おでこに手を当て、ため息を吐く坂瀬河さん。そんな彼女に「どうかしたんですか?」と尋ねてみる。


「実はお嬢様、この時間の一時間も前に家を出られるのです」

「一時間ですか!?」

「私もおかしいなとは思ってたんですけど、芦屋様がいらっしゃるのでついてこなくていいと言い張るんですよ」

「そんな前から……どうして」


 藍那さんがいつも門の前で待ってるから、少しずつ時間を早めていたと言うのに、予想外の時間に家を出ていたのか。それは悪いことをしたな。


「でもお嬢様、本当に嬉しそうに家を出ていかれるのです」


 藍那さんが嬉しそうに?


「あんなお嬢様、今まで見たことありません。毎日、荷物も忘れるくらいそれはもう嬉しそうに」

「それは、なおして欲しい……」

「そんなお嬢様を疑うなんて私にはとても」


 俺の声は、耳に入ってないみたいです。

 いつも無表情で、何を考えているのかわからない。藍那さんはそんな子だと思っていたのに、坂瀬河さんにはあの子がそんな風に見えているのか。


「ですから、私は芦屋様に感謝しているんですよ。まぁ、ピーマンの件は別ですけど」

「はは……」

「どうぞこれからも桃花お嬢様のお世話、よろしくお願いいたしますね」


 学校に行くことが嬉しいのだろうか、弁当を食べることが嬉しいのだろうか、それとも俺がお世話係りをしていることが嬉しいのだろうか。

 きっと、藍那さんに聞いてもわからないだろう。でも、あの無表情に隠されている感情が「嬉しい」と言うものなら、理由はなんでもいいのかもしれない。


「はい」


 だから俺がお世話係りをやる理由だって、なんでもいいのだ。


「それはそうと芦屋様……お時間、大丈夫ですか?」

「……あ」


 学校に着いたのは遅刻ギリギリの時間だった。

 久しぶりに走って、疲れているはずなのに、なんでこんなに体は軽いのだろう。

読んでいただきありがとうございます。


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