休みとメイドさん
「遅いですね」
「す、すいません……ってあの、誰ですか?」
「あぁ、申し遅れました。私、桃花お嬢様の専属メイドをやっております、坂瀬河湖春と申します」
「専属、メイド?」
朝、家を出る時間がちょっとずつ早くなっているせいで、母に文句を言われ始めた俺、芦屋歩は、藍那家の門前で和服姿の女性に会っていた。って、メイドさんなの?
「あ、今、和服でメイドかよとか思いましたね? 見てくださいこの屋敷を。こんなとこにエプロンドレスを着た人がいるなんて、場違いも甚だしいですよね? メイドとは決して目立たず、主人にお仕えするもの。場に合わせるんですよ」
「な、なるほど……」
よくわからんけど、坂瀬河さんのこだわりか何かだろう。
「あの、それで、藍那さんは?」
「お嬢様は今日、体調が優れないようですのでお休みをいただいております。学校の方には連絡したんですが、芦屋様の連絡先がわからないので連絡できませんでした」
「あ、そうですか……」
「それにしてもお嬢様の体調が優れないなんてよっぽどのことがあったに違いありません。芦屋様、何か心あたりございませんか? 例えば……何か良くないものを食べたとか」
良くないもの? え、何だろう。俺の弁当になんか入ってたっけ。まさかピーマン……?
「ちなみに、お嬢様は過去にピーマンを食べた際、一度体調を崩しております。それ以降ピーマンを使った料理はお出ししてません」
ピーマンだった! 昨日、口に入れたピーマンは無理やり食べさせちゃったよ!
「おや? 芦屋様、何かあったんですか? 顔がこわばってますよ? 何かあったんですね」
「すいませんでしたっ」
正直に話した俺は、初めて会った人にめっちゃ怒られた。
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