人という文字は人と人で支え合ってできた字だそうだが、2人組を拒否された人は人じゃないのかな?
人には言えない事、世間に知られてはいけない事。
誰にでもある事だ。
「ごめんなさい、お付き合いとなると」
「そ、そんな……」
「まだ、考えられないの」
女子アナウンサーは、男性の告白を断った。
「どうしたら付き合ってくれますか!?」
「それは……」
秘密があるから付き合えない。言えない事がある。知られて欲しくない事がある。
女子アナウンサーには秘密がある。
「私が決めることです」
今更、私が”男性アナウンサー”なんて言えない…………。
いくつもの男に惚れられるくらいの女の顔で、趣味も萌え系ぬいぐるみ収集。就活中にスカウトされるルートでアナウンサーになる軌跡なわけで、家族以外は誰も私が男だなんて知らない。
私だって、女子として扱われるとは思わなかった。
「っ……決心がまだ足りないんですか!?」
告白した男性にも秘密がある。
「覚悟や行動だけでも……!」
女として一目ぼれした。でも、”私が女じゃ結婚なんかできない”、恋→愛→結婚という、最終進化に至らない。だから、整形して、性転換までして、男になって結婚を前提のお付き合いをしたかった。いっぱい彼女と遊んで、いっぱい食事して、いっぱい話しても、まだ何かが足りないというのか。
君と結婚がしたいのに……
「きっと、私達は結ばれないわ」
「そんな!諦めたくはない!」
しかし、女性は決める。
「私は境界を一歩超えているんだから、付き合えない」
「いや!共に超えているはずだ!」
「ううん、それでも方向がどこか違ったの。さようなら、忘れはしないから」
2人が、結婚することには至らなかった。
悲しいすれ違いの話。
◇ ◇
「というように」
短くまとまる、切ない作り話をしたのは四葉聖雅という、高身長イケメン男子であった。しかし、その性格の大半はこーいう男。
「世間は少し、同性同士の生活に対して寛容になるべき事だと、俺は思うんだ」
その話を聞いた、四葉のクラスメイト。相場と舟、川中、御子柴の四名。
「ふざけんなぁ!」
「物凄く悲しい話を聞いて、お前が持っていくテーマはなんでそっちに行くんだよ!!」
男子である相場と舟が四葉にキレる。しかし、四葉はそれにまったく意に介さず
「待て待て、結婚なんてまだ早い」
「あ!?」
「この世の中。友達や仲間という枠をより深めるべきことが、社会の発展になるんじゃないか?不思議な事だが、男同士でも、女同士でも、死ぬまで共に生きるってのは素晴らしいだろう?人という文字は人と人で支え合う文字、同性であっても間違っていない」
一瞬良い事に思えるのは、四葉がイケメンという容姿を得ているからだろう。
「さすがに気持ち悪いぞ!!男同士、支え合ってどうする!蹴落としてなんぼだ!美女同士だったら、眺めたいけどな!」
「兄弟とかの家族ならともかく、血も繋がらない奴と最後まで共にしてたまるか!仲間の範囲を守れや!」
「今の時代、男だって家事が当たり前。主夫なんて言葉もあるしな。女性もしかり、働く環境になっているじゃないか。ルームシェアもあるし」
「さすがに何年かしたら独立するだろ!」
「そーいうものか?俺は良い男がいたらな~、離したくない」
「そこは”奴”って言え!性別を限定するな!」
相場と舟の感情をこと丁寧に相手をし、むしろ、それを楽しんでいると四葉は思われる。
「……………はぁ~」
そこのところ、川中は残念そうにため息をつく。意識している人であるが、性格というか。その……ね。意識され辛いのが、辛い……。このため息にすら気付いてくれない。
「川中。露骨にやっても無駄よ」
「ですね」
「四葉は良い奴なんだけど、ズレてるから。他の男子と違って、圧倒的に……」
「うーん、ズレてるのはむしろ。四葉くん自身、かな?」
「?」
四葉くんの秘密を知っていると、その意見が分からなくもない川中。
今の創作話、ありえないようでリアリティを感じた。
四葉くんには秘密がある、……彼は……
「寂しい奴がいるのは悲しい!愛なんて境界を乗り越えよー、人類!」
「1人が好きな奴は1人にさせろよ!」
良い人であるのは違いない。