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人間スポンジ

「ご主人さま、ありがとうございました。本当にありがとうございました!」


 未だ眼を覚まさない葵を客用の布団に寝かすと、魔理亜が目に涙を浮かべて礼を言った。葵のことが余程心配だったのだろう。


「無事でよかったな」


 こうも下手に出られるのは、慣れていないせいもあってこっ恥ずかしい。


「はい。流石はご主人さまです。ロードの力は伊達じゃないですね! あのタコさんも、力の強い鬼だと言っていましたし」


 確かに、余りしっかりとは覚えていないがタコ女はそんなことを言っていた。自分が人間離れした力を持っているとは思えないが、紅の言った通り、俺は鬼の血を引いている、ということなのだろう。


「まあ、そんなことはどうでもいい。奴隷のために骨を折ってやったんだ、言葉だけで礼を済まそうなんて考えていないよな?」


「え、えと、はぃ」


 真っ赤になりながらも、魔理亜は頷いた。


「いい子だ。さてどうしようかな……」


 俺は改めて魔理亜の体を眺めた。見れば見るほど魅力的な体だ。今は俺の命令通り、胸元に十字の穴があき、スリットの入ったセクシーな修道服姿だ。美味しそうな胸の谷間と見事な脚線美を見ると、いろんな妄想が湧いてくる。


「あぅ、そんな目で見ないでくださぃ」


 魔理亜が少し身悶えた。恥ずかしいのかも知れないが、嫌がっているのか、それとも悦んでいるのか判別がつかない辺りで、魔理亜は損をしているのだろう。こんな仕草を見せられてテンションの上がらない男がいるとは思えない。


「奴隷の分際で俺に指示するな」


「あぅ、ごめんなさぃ」


「心配しなくても、もっとたっぷり見てやるさ」


「そ、そんなぁ……」


 意地悪な言葉をかける度に、魔理亜がぴくっと震える。そんなどMな反応に俺の嗜虐心は刺激されまくりだ。


 とりあえず、今日してもらうことは比較的簡単に決まった。先ほどのタコ女のせいで、身体がぬめぬめして気持ちが悪いのだ。間接的には魔理亜のせいでこうなったのであるから、ここは、責任を取って、魔理亜に身体を綺麗にしてもらうべきだろう。


「ほら、風呂に行くぞ」


「え、えぇ!?]


 俺は、魔理亜を風呂場に引っ張っていった。急ごしらえの安普請とは言え、一応戸建である。ユニットバスではなくセパレート、つまりトイレから独立した風呂場がある。


「あ、あの、わたしとの約束、覚えてますか?」


「ああ、生殖器や精液には触れてはいけない、というあれだろ?」


「は、はぃ」


 はっきりと言われて、魔理亜が顔を赤らめた。


「じゃあ、可能な範囲で俺の身体を綺麗にしてくれ」


「しょ、承知しました」


 返事はいいのだが、魔理亜は一向に動こうとしない。


「おい、なんで服を脱がないんだ?」


「え、え、脱ぐんですか!?」


「風呂に入るんだから、当然だろ」


「そんな、無理ですぅ……」


 今にも泣きそうな顔。これは本当に嫌がっていそうだ。ご主人様を気取ってみても、実際には魔理亜に嫌われるのが怖い。ここはこちらが少し妥協して、徐々に魔理亜の警戒心を解くべきだろう。


「仕方ないな。下着姿ならいいだろ?」


「あぅ、それも、恥ずかしい、です……」


 そうは言うものの、完全に拒絶しているわけではない。これは先ほどと違ってまだ交渉の余地がありそうだ。


「目をつぶって、なるべく見ないようにしてやるから、下着姿で頼む」


「くすん……わかり、ました」


 目に涙を溜めながらも、諦めたように魔理亜が頷いた。

 

 俺は手早くTシャツとジーンズを脱いで、ボクサーパンツ一丁の姿になった。「約束」のことを考えれば、俺も全裸はまずいだろう。


 全部脱げないのは少し残念な気もする。俺に露出狂の趣味はないし、下半身露出で逮捕されるような人種の気持ちは幸か不幸かまったくわからないのだが、俺の身体を見た時の魔理亜の反応には非常に興味がある。もっとも、そんなことをするのは、悪魔を封じるまでは無理なのかも知れないが。


「ほら、俺の身体をじっと見てないで、魔理亜も早く脱げよ」


「あぅ、ごめんなさいっ」


 真っ赤な顔でちらちらと俺の方を見ていた魔理亜が慌てて後ろを向く。そして、ようやく躊躇いがちに修道服を脱ぎ始めた。


 まず、ベルトを外し、続いて背中のファスナーを降ろしていく。徐々に白い背中が露わになる。そして、両肩からするりと服が落ちて、下着姿の魔理亜の完成だ。下着の色は白く、可愛いフリルが付いている。


「ご、ご主人さま、こっち見ちゃ、ダメですぅ」


「わかってるって」


 言いながらも、魔理亜から目を離すことができなかった。肉付きがよく、マシュマロのように柔らかそうな魔理亜の身体は、綺麗とか可愛いというよりもまず、エロい。


 特に、可愛らしいブラから零れおちそうになっている胸の作る谷間は、それこそ創造主の全知全能を信じてしまいそうになるほど、完璧だった。


 それでいて、AVやネットのポルノサイトで見る女性とは異なり、きめ細やかな肌には少女の幼さが残っているのだ。


「ご、ご主人さま? 大丈夫ですか?」


 はっ!? 思わず見入ってしまった。


「あ、ああ。風呂、入ろう」


 俺は今更になって恥ずかしくなってきた。お互い下着姿とは言え、美少女と一緒にお風呂に入る機会など、今までの人生で一度もなかったからだ。紅との入浴を友人に羨ましがられたことはあるが、それももう随分昔のことであるし、少なくとも俺にとっては、紅は妹ではあっても、美少女ではなかった。

 

 俺は足早に浴室に入り、温めにシャワーを出した。


「あ、あの、どうすればいいですか?」


 壁にかかった鏡越しに、魔理亜の全身が見えた。年相応のあどけなさの残る顔と、ましゅまろぼでぃーのコンボが凶悪だ。魔理亜が壁に掛ったスポンジを取ろうとする。


「待て、スポンジは使うな。自分の身体を使って洗ってくれ」


「え、えぇ!?」


「大丈夫、スポンジより、魔理亜の身体の方が柔らかい」


「そ、そんなの理由になってないですぅ」


 そんなことは解っている。俺は魔理亜にシャワーの湯を浴びせた。


「きゃっ……」


 スポンジを湿らすように、まんべんなく魔理亜の身体を濡らす。


「あったかくて、気持ちいいです」


「お礼のご奉仕で自分が気持ち良くなってどうする。ほら、動くなよ」


 俺はシャワーを浴びせるのをやめ、ボディーソープの容器を手にもった。頭の部分を押すと口のところから液体のせっけんが射出されるタイプの奴だ。


「ご、ご主人さま!?」


 俺の意図を察したらしく、魔理亜の身体が強張る。それでも律儀に命令に従って動かない魔理亜の胸の谷間に、俺はボディーソープを垂らしていった。


「いゃ、冷たぃです……」


 桃の香りの、とろりとしたピンク色の液体が、ゆっくりと魔理亜の白い肌を伝っていく。冷たさに耐え、ぷるぷると身を震わせている魔理亜に、俺は命じた。


「泡立てろ」


「は、はぃ」


 魔理亜が手を使って自分の身体をこすって、ボディーソープを泡立てていく。泡で下着が隠れると、まるで何も着ていないかのように見え、色っぽさが増す。


「くすん、ご主人さま、見ないっていったのにぃ」


「見てない見てない」


「ご主人さまのうそつき……」


 泣きそうな声で、魔理亜が俺をなじる。


「いいから洗ってくれよ」


「は、はぃ。あの、後ろ、向いてください」


 止むを得ず、俺は後ろを向いた。魔理亜の様子を鏡越しに見るのも、悪くない。魔理亜はおずおずと俺に近づき、俺の背中にぴったりと密着した。柔らかい胸が背中に押しあてられる。魔理亜は俺の両肩に手を添えて、胸を上下に動かし始めた。豊満な胸がむにゅむにゅと形を変えながら、俺の背を優しく擦る。


「ご、ご主人さま、こうですか?」


 おずおずと魔理亜が尋ねる。


「ああ、気持ちいいぞ。その調子だ」


「は、はい。がんばります……んっ」


 一生懸命、魔理亜が胸を上下させる。柔らかい中に、微妙に固いしこりのようなものを二つ、感じるような……。


「ん、んぅ……」


 顔を上気させ、少し呼吸を乱れさせながら、魔理亜は自分の体を俺に擦り付けることに没頭している。そのうちに、魔理亜は俺の肩に置いていた手を俺の胸に絡め、抱き付くような格好になっている。


 こ、これは刺激が強すぎる。魔理亜に触れたい、揉みしだきたいという欲望が膨れ上がり、理性がはじけてしまいそうだ。


「ご主人さま、気持ち、いいですか?」


「魔理亜……」


 俺が振り向き、魔理亜に手を伸ばそうとした瞬間だった。突然、魔理亜の背後のガラス扉が開き、全裸の少女が現れたのだ。寝惚け眼で浴室に入ってきたのは、葵だった。タコ女の分泌液の気持ち悪さに、もうろうとした頭で風呂場を探して、入ろうとしたのだろう。


 ほっそりとした身体付きながら、適度な大きさの美乳と括れた腰が色っぽい。しかし、その美しい裸体を楽しんでいる余裕はなかった。俺の本能が危険信号を発しているのだ。 


 俺と葵の目が合った。葵は、一瞬状況が理解できなかったようで、じっくりと周りを見やる。そしておもむろに大きく息を吸い込んで、悲鳴をあげた。


「きゃあああああ」


 甲高く、けたたましい悲鳴だった。


「貴様、貴様、きさまぁ!」


「ちょっ、葵、落ち着けっ」


 俺の説得も虚しく、葵は俺に抜き手の当て身を放ってきた。殺意を感じるほどの一撃が俺のみぞおちに突き刺さり、俺はそのまま濡れた床で足を滑らせ、浴槽の角で後頭部を強打した。


「ご主人さま、ご主人さま!?」


 魔理亜の声を聞きながら、俺の意識は遠ざかっていった。最後に頭に浮かんだのは、何か最近このパターン多いな、ということだった。


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