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契約

「とりあえず、俺の家に来るか?」


「は、はい」


 突然契約して欲しいなどと言われても意味がわからなかったため、俺は魔理亜を自分の家にお持ち帰りすることにした。いつまたさっきの吸血鬼とやらが襲ってくるかも分からないし、そうでなくとも、このまま外で吸血鬼だの契約だの怪しげな話をする気にはなれなかったのだ。


 こんな深夜に男の家に来ることに、魔理亜は抵抗を示さなかった。魔理亜が軽いとか、遊び慣れているとか、そういったことではなさそうだ。身にまとった修道服からも、ぎこちない俺|(男)との距離のとり方からも、貞操観念は高そうだ。魔理亜が俺について来るのは、どうやら本気で俺をヴァンパイアロードだと信じているかららしい。

 

 お互い無言のまま山道を登り、神社の鳥居の横に建てられた我が家、と言っても借家だが、に辿り着く。


「上がってくれ」


「は、はい」


 ここで俺は、致命的なミスに気がついた。


「お兄……誰よ、それ。……妹を待たせておいて、こんな時間にそんなコスプレ女連れ込むなんて何考えてるのよ!? 信じらんない……。変態、けだもの、最低男!!」


 お土産を期待して笑顔で玄関に駆けてきた紅が、表情を一変させて一気にまくしたてる。こいつがいると、話がややこしくなって吸血鬼ごっこも破綻しそうだ。


「悪いが出て行ってくれないか、紅。お兄ちゃんたちはこれから大事な話があるんだ」


「……お兄のばかぁ!!」


 半べそをかきながらも、紅は俺と魔理亜を押しのけるようにして出て行った。悪いことをしてしまった。今度食い物で機嫌をとるしかないだろう。


「ヴァンパイア・ロードさんには妹さんがいるのですか?」


 驚いた顔で魔理亜が聞いて来る。


「ああ。人間界で暮らす上での仮初めの関係だけどな。あいつは俺の正体を知らないよ」


 それらしい言葉を並べると、魔理亜は、なるほど、と大きく頷いた。よかった、納得してくれたらしい。


 俺は魔理亜を私室(と言っても、一人暮らしなのだから、居間ではない、という意味でしかないが)に通した。自分はベッドに腰掛け、魔理亜には机の椅子を勧める。


「まず、自己紹介をしておこう。俺の人間としての名前は此処之月 蒼だ。吸血鬼としての名前は秘密にさせてくれ」


 もちろん、吸血鬼としての名などないし、考えてもいない。


「わたしは、さっきも言いましたが罪詠 魔理亜です」


 変わった苗字だ。罪を詠む……教会関係者にはうってつけの姓だろう。


「それで、契約ってどういうことだよ」


「は、はい、えっと、それは……」


 言いにくそうに少し躊躇った後、魔理亜はおずおずと話を始めた。


「じ、実は、わたしはとある教会で退魔師(エクソシスト)を務める修道女(シスター)なんですが……。えっと、困ったことになっちゃいまして……」


 吸血鬼の王(しかも偽物)の前で懺悔を始める修道女……。退魔師としても修道女としても語るに落ちている。


 それにしても、こんなどじっ娘に退魔師などが務めるのだろうか? 実は、俺は退魔師という職業には縁がある。西洋の、ではなく、東洋の、だが。そう、妹が養子に貰われ巫女を務める姫刻神社は、もともと退魔を生業とする神社なのだ。そして、俺たちの母も、かつてはこの神社で鬼を祓う退魔の巫女を務めていた。


 だから俺は知っているのだ。退魔師というものが存在することと、魔あるいは鬼などというものが存在しない(・・・)ということを。


 俺の認識では、現代の退魔師の主な仕事というのは、昔ながらの儀式の伝承だ。科学が未発達な時代には、人は人知の及ばぬ災害や疫病を魔物や鬼のせいにしてきた。退魔師というのは、そんな時代に人々の不安を払うために、鬼や魔物を祓うための儀式を行ってきた者だ。だから、現代の退魔師の仕事というのは、そんな伝統的な儀式を今に伝えることなのだ。


 もちろん、昔は災害だけでなく凶悪な咎人たちも鬼と認定されていたらしく、退魔師はそのような鬼を狩る役目を負うこともあったようだが、今はそんな仕事もないだろう。


 洋の東西は違えど、退魔師の役割は似たようなものなのではないか。複雑な退魔の儀式と、場合によっては武術を身につけさせられる退魔師が、このどんくさい美少女に務まるとはとても思えなかった。


「困ったことって?」


 退魔師の悩みという時点で大した問題ではないと思ってしまったが、一応聞いてみる。


「は、はい、えっと、封じられていた悪魔を、その、逃がしちゃいまして……」


 存在しないものは逃げようがない。大方、悪魔を封じていると伝えられている何らかの道具を壊してしまったとか、そういう話なのではないか。もちろん、すべてこの少女の妄想だという可能性もないわけではないのだが……。


「それがさっきの吸血鬼なのか?」


 そう、あの崩れ去った男たちだけは俺の常識では理解できない。何らかのトリックで騙されているのではないかとも思うのだが、流石に魔理亜が初対面の俺にそんなことをする意味があるとも思えない。奴らには魔理亜の話を笑いとばすことを躊躇わせるだけの不気味さがあった。


「いえ、あの吸血鬼たちは、悪魔を探しているうちに引き寄せてしまっただけです。えっと、わたしは、そういうのを引き寄せてしまいやすい体質のようで……」


「退魔師なのに、吸血鬼をやっつけられなかったのか?」


 俺の意地悪な質問に、魔理亜は恥ずかしそうに下を向いた。


「す、すみません。焦って退魔の祝詞を噛みまくってしまったんです」


 普通に喋るだけでも言い淀んでしまっている魔理亜のことだ、実戦で祝詞を唱えるのは難しかろう。祝詞を正確に覚えているのかすら怪しいところだ。


「まあ、君がどんくさいのはよくわかったよ。で、結局契約っていうのは?」


「あ、ごめんなさい……。契約というのは、逃げ出した悪魔を封印するのを手伝って欲しいんです」


 このどじな修道女と一緒に、いるかどうかもわからない悪魔を探し出して、封印する。それはとてつもない難題だろう。しかし、その難題を解決するまでの間、無期限でこんな美少女と一緒にいられるのであれば、それだけでも十分に魅力的な話だった。しかも、契約というからには、俺の方にも何か得られるものがあるはずで……。


「なるほど。で、対価は?」


 なるべくがっついた印象を与えないように、聞く。


「えっと、その……あんまりお渡しできるものもなくて……」


「それでは契約にならないな」


 少し意地悪な口調で言うと、魔理亜は更に目を潤ませて、今にも泣き出しそうな顔になった。


「あぅ……ごめんなさい……対価はわたしの……わたしの身体ではダメですか? わたしのこと、好きにしてくれていいです」


 願ってもない。それこそ、俺の聞きたかった答えだ。


「つまり、俺の奴隷になるということだな?」


 俺はにやけそうになるのを必死に抑えて、なるべくクールに確認した。


「……はい。でも、2つだけ条件をつけさせてください」


「2つもか。まあ、一応聞いてやろう」


「ありがとうございます。わたしのことを好きにしてくれてかまいませんが、2つのことは、実際に悪魔を封じるまで待って欲しいんです。1つは、わたしを殺すことです。これには、あなたの力でわたしを不死にしてしまうことも含みます」


 真剣な顔で、言う。衝撃的だった。俺は魔理亜をいじめたいという下種な欲望を充足するために彼女をだましているのに、魔理亜は自分が殺されることまで覚悟の上で契約を結ぼうとしているのだ。何も言えない俺に、魔理亜が続ける。


「もう1つは、わたしを犯すことです。これには、あらゆる性的な接触を含みます。その、処女性を失うと、悪魔を封じられなくなってしまう恐れがあるので……」


 犯すだの処女だの生々しい言葉を、魔理亜はおずおずと口にした。


「性的な接触というと、具体的には?」


 我ながら、セクハラに近い質問だ。


「えっと……せ、せ、生殖器や精液に触れたり、触れられたりすることです」


 更に卑猥な言葉を、魔理亜は恥ずかしそうに身悶えしながら答えた。


「生殖器以外なら、触れても何しても大丈夫なんだな?」


「あぅぅ……はい」


 それなら、できることはいろいろありそうだ。やばい、何をさせようか妄想が止まらない。


「あの、でも契約の前に、少し試させていただいていいですか?」


 あれこれ妄想していた俺を、魔理亜が現実に引き戻した。


「何を?」


「あなたの実力を、です」


 少しだけ、魔理亜が真剣な表情になった。与えられた対価に気を取られて考えてもいなかった。そもそもヴァンパイア・ロードなどではない俺が、果たして魔理亜に「対価」を支払うことができるのだろうか? 


 この魔理亜の試練が、吸血鬼としての力を試すもの、例えばコウモリに変身しろ、のようなものなのであれば、俺のいい加減な嘘など簡単にばれてしまうだろう。


「いいけど、どうやって?」


 内心の動揺を押し殺し、なるべく余裕を装って、俺は問い返した。


「えっと、ここに触ってもらえませんか?」


 言って、はちきれんばかりの胸を指差す。


「さ、触っていいのか!?」


 まさか、俺のフィンガーテクを試してくるとは……。予想外の展開に、俺は思わず、ごくり、と生唾を飲んでしまった。


「は、はい。でも、ゆっくり、ですよ」


正直なところ、女の子の胸に触れるなど初めての経験だ。俺が恐る恐る両手を近付けると 、


「りょ、両手で触るんですか!?」


 何故かとても驚かれてしまった。やむなく、両手で揉みしだくのは諦め、右手で軽く左胸の下乳あたりに触れてみた。うわ、めちゃくちゃ柔らかい。


「えぇっ!? きゃあっ」


 突然悲鳴をあげて、魔理亜は胸を隠すようにして座りこんでしまった。


「ひ、酷いです。突然、なにするんですか!」


 半泣きで抗議してくる。


「だって胸を触れっていうから」


「ち、違いますっ。触って欲しかったのは、これです」


 今度は理解できた。魔理亜が指差したのは胸ではなく、胸元にあしらった十字架だったのだ。


「なんだ、そっちか」


 俺は無造作にその十字架に手を触れた。


「だ、大丈夫なんですか?」


「ロードだからな。十字架くらい、克服しているさ」


 自信満々で言い切る。これで言い逃れられると思ったのだが、魔理亜は今までになく強い口調で反論してきた。


「聖骸布を縫い合わせた十字ですよ!? 不浄な吸血鬼が触れて平気なはずがないです!」


 むきになって胸を押し付けてくる。たゆんたゆんと揺れる胸に手がめり込むような状況だ。柔らかい、すごく柔らかい。気付くと、魔理亜の顔に赤い液体が……。


「だ、大丈夫ですか!? は、鼻血が出てますよ?」


 興奮し過ぎて思わず鼻血を噴き出してしまったようだ。


「流石はセイガイフだな。この俺の超時空魔力結界を突き破るとは」


 鼻血を拭きながら、俺は適当な言葉で誤魔化した。


「いえ、聖骸布の十字に触れてこの程度で済むなんて、わたしこそあなたの力を見くびっていました。流石はロードですね」


 自慢の十字架が俺にダメージを与えた(ように見えた)ことで、魔理亜は満足したらしい。危なかったが、何とか魔理亜の追及を逃れることができたようだ。


「太陽の光はどうなんですか? やっぱり克服しているんですか?」


 続けて魔理亜が聞いてくる。とにかく、適当に嘘を吐き続けるしかない。


「当然大丈夫だ。昼間でも普通に動けるぞ。ロードだからな」


「なるほど……。それだけの魔力を維持するとなると、やっぱり、生き血とか沢山吸ってるんですか?」


「いや、ロードともなると、血を吸わなくても生きていけるんだ」


 言ってから、血を吸わなくていいなら既に吸血鬼じゃないことに気付いた。まずい、さすがにバレたか?


「……十字架も日光も大丈夫で、血を吸わなくても生きていける、っと」


 魔理亜は素直に信じてしまったようだ。どこからか可愛らしいメモ帳を取り出し、必死でメモを取っている。


「俺の力はわかっただろ? そろそろ契約の話に移らないか」


 いくら魔理亜が天然でも、これ以上勘繰られたら嘘を吐き続けるのは困難だ。


「あ、そうでした。ごめんなさい」


 魔理亜がぺこりと頭を下げる。こんなに素直で可愛い魔理亜を騙すのは正直かなり良心が咎めるが、好きにしていい、という魔理亜の言葉を聞いてしまっては劣情を抑えるのは困難だった。


「じゃあ、君は俺の助力を得る代わりに俺の奴隷として俺に奉仕する。但し、逃げ出した悪魔を封じるまでは君を殺したり犯すことはしない。それでいいんだな」


「……はい。それで、結構です」


 辛そうな顔を隠すように、魔理亜は少し俯いた。罪悪感が俺を苛む。実は嘘でした、と謝るなら今しかないが……。


「えっと、どうすればいいですか?」


 ためらいがちに聞いてくる魔理亜の言葉に、俺は機を逸してしまった。


「そうだな……」


 俺は改めて魔理亜の体を見回した。やはり魅力的だ。ぱっちり二重の童顔とマシュマロのように柔らかそうな体のギャップが凶悪だ。修道服のせいで肌の露出がほとんどないせいもあって、首筋がやけに色っぽく見える。吸い付きたい欲望に、俺は勝てなかった。


「じっとしていろ」


 俺の命令に魔理亜の体が強張る。俺はゆっくりと魔理亜に近付き、両肩に手を添えた。そして、緊張を押し殺しながら唇を魔理亜の首筋に触れる。


「あぅ……」


 魔理亜が短く呻く。その可愛い声に理性を失いそうになりながらも、俺はできるだけ優しく首筋を吸った。


「んっ……いやぁ」


 身悶えして俺から逃れようとする魔理亜の抱きしめて、俺は強く首筋に吸い付き、最後に軽く歯を立てた。口の中に血の味が広がる。


「い、痛いです」


 魔理亜の涙声を聞いて、俺は我に返った。慌てて魔理亜から離れる。魔理亜の白い首筋にははっきりと赤いキスマークがつき、そこから一筋の血が垂れていた。


「これで契約は成立だな。今日から君は俺の奴隷だ」


 もっともらしく宣言する。


「はい……」


 魔理亜が切な気な表情で頷いた。


「じゃあ、まずは、その十字架を外して貰おうか」


 魔理亜が暗くなり過ぎないように、俺は明るく言った。


「えぇっ!? だ、ダメです」


 魔理亜が両手で十字架を隠す。


「それが見えていると俺の力も半減するぞ? 外してポケットにでも入れておけばいいだろう」


「で、でも、修道服に縫い込んでいるから外せませんし」


 そんなことは見ればわかる。だからこそ外して欲しいのだ。


「大丈夫。こうすれば」


 俺は机の中からナイフを取り出した。


「な、なにするんですか!?」


「動くなよ」


 やはり俺の言葉で固まる魔理亜。命令に弱いらしい。俺はナイフを使って服から十字架を切り抜いた。当然、服の胸元に十字の穴があき、魅惑の谷間を覗かせる。


「いい眺めだ」


 俺の言葉に、魔理亜は慌てて胸元を隠した。


「隠すな。俺は胸の谷間が見えている方が、力が出るんだ」


 これは嘘じゃない。気分的な問題だが。


「くすん、わかりました」


「後はここかな」


 俺は立ちすくむ魔理亜のスカートの右側面を切り裂き、スリットを作った。白く艶かしい太ももが露になる。


「きゃ、きゃあ!?」


 いい声だ。癖になりそうだ。


「絶景かな、絶景かな。俺と行動するときはその格好で頼む」


「うぅ、ひどいです。こんな格好、恥ずかしいです」


「まあ、その代わり、悪魔とやらを封じるまで付き合ってやるからさ」


 悪魔なんて見つからないだろうが、こんな美少女とずっと一緒に居られるならそれも悪くない。最後までできないというのは生殺しだが、魔理亜のトロさならそのうち丸め込むチャンスもあるだろう。期待は高まるばかりだ。


「絶対、約束ですよ?」


 すがるように俺を見つめる。


「ああ、任せておけ」


「なら、あなたは今日から、わたしのご主人さまです」


 ご主人様……いい響きだ。こんな美少女にそう呼んで貰えるとは。


 俺の取り柄と言えば母譲りの剣術くらいだが、それでもさっきの暴漢を蹴散らす程度のことはできるつもりだ。せめてもの罪滅ぼしとして、俺はどんなモノが相手でも魔理亜を守ってやりたいと本気で思った。思ったんだが……。そんな俺の決意はあっさりと霧散してしまった。アイツが来たのだ。


「この淫乱コスプレ女、ちょっと胸が大きいからって、あたしのお兄を誘惑しないでよ!」


 鬼の形相で部屋に乱入してきたのは、巫女装束に着替えた紅だった。手にはご神刀を携えている。はっきり言ってこれは分が悪い。キレた紅が相手では魔理亜を守るのは難しい。


「な、淫乱でもコスプレでもありません! あなたの方がコスプレじゃないですか!」


 確かに、数年前から着ている紅の巫女服は丈が短くなっており、袴の部分がミニスカートに見える。コスプレのように見えても無理はない。


 この格好が一部マニアの間に大好評で、「現役女子中学生美少女巫女」などという煽り文句でその手の雑誌に取り上げられ、祭事の際には怪しげな参拝客が神社に溢れかえるというのであるから、世も末だ。


「あたしのはれっきとした巫女服よ。あんたの似非修道服みたいに、胸元をあけたりスリットの入ったエロコスじゃないわ」


「こ、これはご主人さまが」


「……ご主人、さま?」


 紅が冷たい目で俺を睨む。ヤバい、こっちに飛び火した。


「待て、紅、早まるな。これには深いわけが……」


「煩悩退散!」


 紅がご神刀を抜き放った。妹がこんな狭い部屋で真剣を振り回す……それ自体は悲しいことに珍しいことではない。俺と紅の実力差ならその程度は冗談ですむのだ。しかし、部屋に他に人がいるというシチュエーションは初めてだし、魔理亜を守りきる自信がない。


「魔理亜、ここは危険だ。お前だけでも逃げろ。明日また同じ時間に同じ場所で」


「で、でもご主人様が……」


「覚悟!」


 問答無用で紅が剣を振り下ろした。我が妹ながら見事な一撃だ。それでも辛うじて白刃を取ることに成功した。


「いいから早く逃げろ!」


 躊躇いながらも、魔理亜は逃げてくれた。奴隷根性があるのか、強い命令には逆らえないようだ。


「隙あり!」


 魔理亜が逃げたのを見て一瞬気の緩んだ俺の頭を、紅が鞘で撃ち据えた。


「……ふん、お兄の、ばかぁ」


 紅の声を聞きながら、俺の意識は闇に堕ちていった。


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