第二幕〜まさかのお墓〜
「お……墓?」
唯は今にも消え入りそうな声でつぶやいた。
外灯のすぐ下には階段のようなものが見える。その上を目でたどってみると、四角い石がいくつか並んでいるのが見える。外灯の照らしている範囲が狭いのでどのくらい広い敷地なのかは正確には判断できないが、少なくともさっきから四つ以上の声が聞こえている、つまり四人以上がここで集まって話をしているわけである。だったら、そんなに狭い墓地であるはずがない。
よりにもよって何で墓地で話し合いなんかしているのだ、と思いつつも唯は好奇心に勝てず、墓地の階段の手すりに手をかけた。
ガッ。
「痛!」
唯は階段を上ろうとして足をぶつけた。どうやらずいぶん急な階段のようである。
(気をつけなきゃ…)
唯は手すりを頼りにゆっくりと階段を上っていく。
十段ほど上ったところで階段は終わり、辺り一面にはところ狭しと墓石が立ち並んでいる。さっきは下からだったためよくわからなかったが、裏山の墓地は相当広いようだ。右を見ても左を見ても、前を見ても墓石だらけである。
「………」
そんな光景に唯は足がすくんで動けなかった。
肝試しでもないのに、何が悲しくて一人で墓地にいるんだろう。唯は急に寂しい気持ちになった。そんな唯の気持ちを紛らわせるかのように、話し声が耳に入ってくる。今までに比べてかなり大きな声だ。それでも、唯が全神経を耳に集中してどうにか聞き取れる程度の声だ。彼らはこんな夜更けに何をひそひそと話していると言うのだ。唯はゆっくりと墓地の中を歩きながら、声のする方向を辿っていく。
話し声は墓地の隅っこから聞こえてきた。
ちょうどその前には普通の墓石より少し大きめの墓石があり、彼らの姿を隠していた。
「まさか…ね」
唯はそのまさかの出来事を想像してしまい、一瞬ひやりとしたが、口の中に溜まっていた唾を一気に飲み込むことで、そんな想像と恐怖を喉の奥に押し戻した。
そんなことあるわけない。そう思っていても唾はどんどん口の中に溜まっていく。唯はもう一度口の中に溜まった唾を一気に飲みこんだ。そして、大きな墓石の影からそっと、話し合いの様子を見ることにした。




